子どものてんかん診療ー症状や検査などから治療の可能性を探る

愛知医科大学病院

てんかんセンター(小児)

愛知県長久手市岩作雁又

てんかんは子どもに多い

てんかんは子どもに多い病気です。子どもの約200人に1人がてんかんを起こします。てんかんは突然に起こる病気ですので、周りの人もびっくりすることが多いです。そして、てんかんに関する誤った情報はとても多いので、それを目にしてとても不安になる方が少なくありません。

当院てんかんセンター(小児)では、てんかんの子どもやその保護者の方に正しい情報をお伝えし、皆さんと話し合いながら診療を進めます。

子どものてんかんについて知る

①子どものてんかんは治りやすい病気です

子どものてんかんの約3分の2は自然に治ります。このような治りやすいてんかんでは、薬などの治療を行わなくても、ある年齢になると発作が起こらなくなってしまいます。発作のために日常生活に支障がある場合でも、多くは薬で発作を抑えることができます。

②てんかんが遺伝することは稀(まれ)です

てんかんの子どもで、親や兄弟姉妹もてんかんを持っているのは例外的なことです。てんかんのかなりの部分は遺伝子の異常と考えられていますが、突然変異であることが多く、遺伝するものではありません。

③てんかん発作によって知能が低くなることは稀です

てんかん発作そのものが原因となって知能が低くなるなどの障害が起こることは、特殊なてんかんを除けばありません。てんかんの子どもは発作のとき以外は、元気なお子さんです。

子どもたちがより良い生活を送るために

当センター(小児)では、受診したお子さんが本当にてんかんであるかを慎重に見極めます。てんかんでない症状をてんかんと間違ってしまうことは少なくありません。てんかんの可能性が高いと判断した場合には、脳波・MRIなどの検査を行って診断を進めます。その診断によって、将来的にてんかん発作が治まるのかどうかなどの見通しが立つことも少なくなく、それに基づいて、治療の必要性などを皆さんと話し合います。

なかには大変治療が難しいお子さんも受診します。そのようなお子さんには、最新の知識を最大限に活用し、少しでも良い日常生活を送ることができるように努めます。そのために、病棟などで長時間にわたってビデオ脳波同時記録(写真1)を行い、発作のときの脳波を調べたりします。SPECTやPETなどの脳の機能を調べる画像を撮ったり(写真2)、特殊な条件でMRIを撮ったりして、てんかんの原因となる脳の病変(写真3)を調べることもあります。また、遺伝子を調べててんかんの原因を探ることもあります。

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写真1 ビデオ脳波同時記録:脳波と同時に患者さんの様子を記録し、発作時の脳波を詳しく調べます
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写真2 PET:脳におけるブドウ糖の代謝を調べることで、てんかんの原因となる病変を調べる検査です
左/正常
右/矢印部分のブドウ糖の代謝が低下しており、てんかんの原因となる病変があると推測されます
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写真3 MRI検査で分かるてんかんの原因となる病変の例
左/滑脳症(かつのうしょう)、脳回(のうかい)(脳のしわ)が十分に形成されていません
中/多小脳回、矢印の部分の構造が乱れています
右/結節性硬化症(けっせつせいこうかしょう)、矢印のように多くの病変(結節)があります

治療は、一般的な内服薬以外にも、ACTHというホルモンによる治療(写真4)やケトン食という食事による治療などにも対応します。また、脳神経外科と協力して外科的な治療や、迷走神経刺激という特殊治療を考慮することもあります。

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写真4 治療による脳波の変化:点頭てんかんに対しACTH療法(ホルモンによる治療)を行ったときの脳波です
上/治療前、ヒプスアリスミアと呼ばれる著しい異常がみられます
下/治療後、脳波異常が消失しました

当センター(小児)では、治りやすいてんかんから難しいてんかんまで診療しています。お気軽に受診してください。

更新:2024.01.26