最適な固定法で行う人口股関節置換術(THA)

愛知医科大学病院

人工関節センター

愛知県長久手市岩作雁又

長持ちする人工股関節手術を目指す

当院では1974年から変形性股関節症などの手術に人工股関節(じんこうこかんせつ)を使用しており、より良い治療を行うために手術方法の改良を重ねて、長期耐用、具体的な数字でいえば30年以上、長持ちする人工股関節手術を目指しています。

特に、正しいセメントテクニックを用いた人工股関節置換術(ちかんじゅつ)(THA)や、骨の回復を可能にする人工股関節再置換術(院内骨バンク提供の他家同種骨移植術を併用)に定評があります(写真1)。さらに、ここ10年間は寛骨臼側(かんこつきゅうがわ)において骨になじむ金属のソケットを用いたハイブリッドという方法も行っており(写真2)、症例に適した固定方法の選択が可能となっています。このハイブリッドの場合、金属の中には軟骨の代わりになる取り外しが可能なポリエチレンが装着されており、もし人工股関節に不具合が生じたとしても、ステム先端のボールやソケットに取り付けているポリエチレンライナー(人工軟骨)を入れ換えれば問題を解決できることがあります。入れ換え手術(再置換術)に柔軟に対応することができ、手術を行いやすいのが利点です。

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写真1 セメントTHA(IBG法併用):寛骨臼と大腿骨側ともにセメントを使用し人工関節を固定。両側亜脱臼性股関節症で右側は高位脱臼を認める。両側とも寛骨臼側の骨が欠損しており、IBG(Impaction Bone Grafting)法により骨を移植し再建しています
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写真2 ハイブリッドTHA:両側亜脱臼性股関節症(末期)の患者(左)。寛骨臼側はセメントを使用しないで人工関節を固定し、大腿骨側はセメントで固定するハイブリッドという方法です(右)

人工股関節置換術のMIS(最小侵襲手術)

比較的股関節の変形が軽度な場合は、DSA(Direct superior approach)という方法を用いたMIS(最小侵襲(しんしゅう)手術)を行っており、術後のリハビリテーションが速やかに進み入院期間が短縮されることや、術後の脱臼(だっきゅう)リスクが小さくなることが期待されています。

DSAは、できるだけ筋肉を温存し、かつ必要十分な小さい皮膚切開で手術を行うことができます。手術中に、筋肉を切離後修復する方法で手術をした方が良いと判断した場合には、その時点で大きめに皮膚切開して行う従来法へ変更することが可能でもあり、常に安全で確実な手術を行うことを最優先しています。

院内骨バンクとは

当院の倫理委員会による承認を受け、2015年5月から院内骨バンクを開設し運用しています。

変形性股関節症に対する初回の人工股関節全置換術や、大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折に対する人工骨頭(こっとう)挿入術を受けられる方を対象にドナーを募って骨を提供していただいています。主に人工股関節再置換術を行う場合、骨の欠損した部分を再建する際に使用します(写真3)。

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写真3 人工股関節再置換術:人工股関節のゆるみ(左)が生じた場合、大腿骨側の骨の欠損部にIBG法にて他家同種骨を移植し、寛骨臼側の骨の欠損はKTプレートを併用して再建しています(右)

3Dプリンターモデルを用いた術前計画

術前に撮影されたCT画像から、3Dプリンターを用いて実際の骨のモデルを作製します。

骨の変形が強い場合や骨の欠損が大きい場合には、そのモデルを使用し術前シミュレーションを行うことが可能となり、安全で確実な手術を行うために非常に有効な方法となっています(写真4)。

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写真4 3Dプリンターモデルによる術前計画:術前にシミュレーションを行い、骨の欠損範囲を実際あっに確認することが可能です

更新:2024.10.18

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