さまざまなハイリスク妊娠に立ち向かう!

札幌医科大学附属病院

産科周産期科

北海道札幌市中央区

ハイリスク妊娠とは?

妊娠年齢が上がるにつれて、もともと持病のある女性が妊娠することが増えています。また、さまざまな病気の治療が進歩するにつれて、これまでは妊娠をあきらめていた女性にも妊娠する可能性が広がっています。その一方で、妊娠することによって、もともとの持病が悪化することもあり、妊婦さんと赤ちゃんの両方にとって、いつどのような形でお産をするのがベストなのかを見極める必要があります。

妊娠高血圧症候群ってなに?

妊娠高血圧症候群(以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていました)とは、血圧が上がることで脳出血などのリスクが高くなったり、お母さんが子癇(しかん)といって、てんかん発作を起こしたりする疾患です。また、赤ちゃんの成長が止まってしまうこともあり、母子ともに危険な病気です。

お母さんの年齢が上がるとリスクが上がるといわれており、食事や体重を含めて注意する必要があります。また、妊娠高血圧症候群となったお母さんは妊娠中だけでなく、将来的な高血圧発症のリスクも高いため、産後に内科に引きつぐことも私たちの大切な役目です。

子宮頸(しきゅうけいがん)と妊娠について教えてください

子宮頸がんは30歳代の女性に多いがんの1つで、国内ではがん検診の受診率が低いことから、妊娠中に初めて診断されることがあります。また妊娠中でなくても、今後妊娠を希望する場合には、子宮を残して治療をしなければなりません。

がんを残さずに、かつ子宮の出口をなるべく残すトラケレクトミー(図)という、とても繊細な手術が必要となり、妊娠後も切迫流早産に気をつけて管理する必要があります。お母さんと赤ちゃん、2つの命を預かっているという思いを、いつも以上に強く感じます。

図
図 トラケレクトミーのイメージ

染色体異常に対する取り組みは?

お母さんの年齢が上がると、一部の染色体異常を持った赤ちゃんの割合が増えることが知られています。代表的なものはダウン症候群です。

リスクの高いお母さんや超音波で異常を指摘された赤ちゃんに対しては、十分なカウンセリングのあとで新型出生前検査(NIPT)や羊水・絨毛(じゅうもう)検査などを行って、家族の気持ちを尊重した対応を提供しています。

何かしらの病気が見つかったりして妊娠継続が難しい場合であっても、個室での管理や希望に応じて和痛分娩(*)を行うことで、少しでも家族の心が傷つかないように配慮しています。時に前回悲しい思いをした妊婦さんが次の赤ちゃんを妊娠して来てくれることもあり、私たちにとっても大きな励みとなっています。

*和痛分娩:麻酔薬を使って陣痛の痛みを和らげながら、自然に出産する方法

母と子を守るNICU・MFICUとは?

これまで紹介したような病気を含め、私たちの病院にはリスクを持った妊婦さんが多く通院しています。早産だったり、病気を持って生まれてくる赤ちゃんには、新生児集中治療室(NICU、写真1)での管理が欠かせません。

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写真1 NICU

また、大学病院の特色を生かして、小児科や麻酔科をはじめとした他の科との連携を取ることはもちろん、医師や助産師も産科の知識だけではなく、妊婦さんの全身状態を見ることができるように日々学習を続けています。近い将来、母体胎児集中治療室(MFICU)を立ち上げ、より多くのお母さんと赤ちゃんを救うために準備を進めています。

ドクターヘリの役割とは?

北海道内には、リスクの高い妊婦さんや赤ちゃんに対応できる病院が少ない地域があります。すぐに対応しなければならない場合、ドクターヘリが活躍することがあります。

私たちの病院にはヘリポートがあり、道内各地からその地域では対応の難しい妊婦さんや赤ちゃんを運んでもらい、治療を行っています。広い北海道で多くの妊婦さん・赤ちゃんに高度な医療を提供するために、ドクターヘリが果たしている役割はとても大きいです。もちろん、普段から地域の病院とこまめに状況を共有しておくことも大事です(写真2)。

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写真2 ドクターヘリ

更新:2024.09.23