子宮頸がん
概要
子宮頸がんとは、子宮の入り口部分(子宮頸部)にできるがんです。(これに対し、子宮の奥の部分(子宮体部)にできるがんを「子宮体がん」といいます。)
子宮がんの内、子宮頸がんが占める割合は約70%で、そのピークは30~40歳代と若年化しています。最近では30歳代での妊娠・分娩が増加していて、これは子宮頸がんにかかりやすい年齢と一致しています。
子宮頸がんは、前がん状態である異形成を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行します。子宮頸がんは婦人科検診などで発見されやすく、早期に発見し適切な治療を行えば、治癒率も高く予後の良いがんです。
治療
子宮頸部の表面の皮(上皮)に発生したがんは、上皮内にとどまっている早期の子宮頸がんの場合(上皮内がん)、転移することはなく、その部位を切除すれば治癒します。このような場合は、病変部を薄く削る処置(LEEP切除)とレーザーを使って周辺の上皮細胞を焼く処置(レーザー蒸散)を組み合わせた治療を行い、できる限り子宮頸部を温存することで、その後の妊娠も可能になります。
上皮内がんはその後、上皮の下にある筋肉に浸潤していきます。筋肉の中の血管やリンパ管にがん細胞が入ると、がんが転移する恐れがあり、その場合の手術は、転移の部位や程度によって変わってきます。
- 浸潤の深さが3mm以内のがん(Ia1期)
- ほとんど転移することがない早期がんで、子宮頸部を円錐形(えんすいけい)に切除する子宮頸部円錐切除術での治療が可能です。子宮の温存も可能です。
- 浸潤の深さが3.1~5mmのがん
- 子宮周囲のリンパ節(骨盤リンパ節)に約7%の症例で転移を認められ、リンパ節の摘出が必要になります。
- 浸潤の深さが5.1mmを超えるがん
- 子宮頸部の横の組織(基靭帯(きじんたい))へ広がる可能性があり、基靭帯を含めて切除する広汎子宮全摘術(こうはんしきゅうぜんてきじゅつ)という手術が行われます。子宮全体を摘出するため、妊娠はできなくなります。
広汎子宮頸部切除術
広汎子宮頸部切除とは、子宮体部を温存し、子宮頸部だけを摘する手術です(図)。子宮体部を温存するため今後妊娠を希望する場合に行いますが、安全に行うために術前にMRI検査やCT検査などを行い、①腫瘍の大きさが2cmより小さいこと②リンパ節に転移がないこと③子宮頸部と体部の切断面に腫瘍がないことなどの条件をすべて満たす必要があります。
広汎子宮全摘術
今後妊娠を希望しない場合には、通常、広汎子宮全摘術を行います。このこの術式では、膀胱(ぼうこう)を支配する神経が切断されることによる排尿困難が発生する問題点があり、神経を可能な限り温存する手術を行います。
更新:2022.08.22