子宮頸がんの手術と放射線治療どちらを受けるか、迷っています

滋賀県立総合病院

産婦人科 放射線治療科

滋賀県守山市守山

子宮頸がんって、どんな病気?

子宮頸(しきゅうけい)がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分からできます。

国内で1年間に約11,000人が子宮頸がんと診断されます。診断される人は20歳代後半から増加して、40歳代でピークを迎え、若年者に多いのが特徴です。子宮頸がんの多くにヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しています。

早期であれば、比較的治療しやすいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。初期では症状がないため、早期発見のためには定期検診が必要です。20歳以上は2年に1回、子宮頸がん検診を受けましょう。ほとんどの市町村では、検診費用の多くを公費で負担しており、一部の自己負担で受けることができます。

また、性交渉開始前にHPVワクチンを接種することで7~8割予防できることが分かっています。しかしワクチン接種を受けたとしても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。

治療の決め方は?

子宮頸がんの進行の程度は、早期から進行するにつれてI期〜IV期の病期(ステージ)に分けられ、治療方法は、がんの進み具合や全身状態などから検討します。

子宮頸がんの治療には、手術療法、放射線治療、薬物療法があり、それらを単独で行ったり、組み合わせて行ったりすることがあります。

「図1」は、子宮頸がんに対する当院の治療方針です。図にある治療法は標準的なもので、基礎疾患などの有無や妊娠・子宮温存の希望、がん細胞の種類によって、別の治療法を選択することもあります。

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図1 当院での子宮頸がんの標準的な治療方針

手術方法は病期によって異なり、代表的なものに円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)(図2)や単純子宮全摘出術(図3)、広汎子宮全摘出術(図4)などが挙げられます。当院では、腫瘍(しゅよう)サイズの小さい子宮頸がんには、腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)も行っています。

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図2 円錐切除術の切除範囲
子宮の多くを残して、子宮頸部の一部を円錐状に切除します
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図3 単純子宮全摘出術の切除範囲
基靱帯など子宮頸部の周りの組織は取らず、子宮だけを切除します
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図4 広汎子宮全摘出術の切除範囲
子宮と一緒に、基靱帯や膣なども広範囲に切除します

放射線治療は骨盤の外から照射する外照射と、直接子宮頸部のがんに照射する腔内照射を組み合わせることで、より高い根治(こんち)(*1)性もめざせます。腔内照射装置を配備している施設は県下では当院だけであり、積極的に腔内照射を行っています。また、進行した子宮頸がんには、抗がん剤とともに放射線治療を行うこと(同時化学放射線療法)が多いです。

子宮頸がんの場合、根治的な治療として、手術療法か、同時化学放射線療法、または両方の治療を行うことが多いです。当院では、患者さんにとってより根治性が高い治療を個別に検討し、提案しています。

*1 根治:完全に治すこと。治癒

治療による副作用は?

子宮頸がんの手術方法によって合併症が異なります。特に、IB期以上で行う広汎子宮全摘出術では、がんを完全に取りきるために、「図4」のように子宮頸部の周りの組織を広く切除し、骨盤内のリンパ節も一緒に切除(リンパ節郭清(せつかくせい))します。根治性が高い手術である一方、リンパ浮腫(ふしゅ)、排尿のトラブルなどの合併症が一定の割合で起こります。また、閉経する前に卵巣を摘出すると、ほてりやだるさ、頭痛、肩こりなどの更年期症状が出ることがあります。

がんの進行や年齢、がん細胞の種類など、一定の条件を満たしていれば、卵巣を残すことも可能です。卵巣を摘出した場合でも、ホルモン補充療法で症状が改善することがあります。

放射線治療の副作用には、急性期反応(治療を始めて数週間以内に発症)と、晩期合併症(治療後数か月〜数年経って発症)があります。

急性期反応には、だるさ、吐き気、照射されたところの皮膚炎、膀胱炎などの症状があり、治療終了後には通常自然に治っていきます。

晩期合併症には、消化管からの出血や閉塞(へいそく)(*2)、穿孔(せんこう)(*3)、直腸腟(ちょくちょうちつ)ろう(*4)や、尿路の障害として出血、感染、膀胱尿管腟(ぼうこうにょうかんちつ)ろう(*5)などがありますが、必ずしも起こるものではありません。

*2 閉塞:心臓に血液を運ぶ血管(冠動脈)が詰まること
*3 穿孔:消化管の壁に穴が開くこと
*4 直腸腟ろう:直腸と腟がつながって腟から便やガスが漏れる状態
*5 膀胱尿管腟ろう:膀胱や尿管と腟がつながって腟から尿が漏れる状態

がん治療は、はじめの治療が肝心です。当院では、患者さんの病期、年齢、体の状態、妊娠の希望、がん細胞の種類、治療による副作用を総合的に評価し、患者さん一人ひとりに合わせた治療を選択しています。

更新:2024.01.25