肝がんの治療について教えてください

消化器内科 外科 放射線治療科

肝がんとは?

肝がんには肝臓から発生する「原発性肝がん」と、胃や大腸など遠くの臓器に生じたがんが転移してできる「転移性肝がん」がありますが、一般的に肝がんというときは「原発性肝がん」のことを指します。この原発性肝がんの大部分は「肝細胞がん」と呼ばれるもので、肝がんと言われたときは肝細胞がんのことを指すのが一般的です。そのほかに「肝内胆管がん」もありますが、ここでは肝細胞がんを中心に説明します。

かつて、肝がんはC型慢性肝炎、B型慢性肝炎などのウイルス性肝炎が原因となって発症するものが多くを占めていましたが、最近では生活習慣病の増加などにより、非アルコール性脂肪肝炎(NASH(ナッシュ)ともいいます)から発生する肝がんも増えてきています。

肝がんにはどんな治療があるの?

肝がんになる方はもともとの肝臓の機能が悪い方が多いため、肝がんの進行度(図1)だけでなく、残されている肝臓の機能がどの程度あるのかを考えながら治療方針を決定します。完全に治癒することをめざすことができる病状の方は外科手術による完全切除か、体表から肝臓に特殊な針を刺して電磁波で腫瘍(しゅよう)を焼き切る治療(ラジオ波焼灼術(はしょうしゃくじゅつ))を行うことが多くなっています。

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図1 肝臓の仕組みと肝細胞がんの病期分類

それに対して、腫瘍が大きかったり数が多いために外科手術や、ラジオ波焼灼術での治療ができない状況の患者さんは、腫瘍に栄養を送っている動脈をカテーテルを使って詰める肝動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ)(図2)を行うか、抗がん剤による薬物療法を選択することが多くなっています。以前は、肝がんに対して有効な抗がん剤による薬物療法はあまりありませんでしたが、近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬という新しい薬剤が開発され、肝がんに対しても抗がん剤による薬物療法を行う局面が増えてきています。また、特殊な場合においては放射線治療などを行うこともあります。

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図2 肝動脈塞栓術

このように肝がんの治療は残された肝臓の機能、病気の進行度、年齢、体力など総合的に判断し治療を行いますが、治療法が新たに開発されるにつれ複雑にはなってきています。

カリフォルニアから来た娘症候群(The Daughter from California Syndrome)という状態があります。これは、これまで音信のなかった家族や遠方に住む親類が唐突に現れ、セカンドオピニオンを求めたり、決めた方針を覆し延命治療を求めたりして方針が二転三転し、治療を受ける患者さんや最初から病状を理解してサポートしていた方の意見が覆される状態のことです。

肝がんの治療では最初から家族で病状説明を聞き、意見をまとめ方針を一致させて、複雑な治療法の中からより良い治療を選択することが非常に大事です。

肝がんを早期発見するためには?

肝がんはC型慢性肝炎、B型慢性肝炎など、慢性的な肝臓の病気を持った人から発生することが多いです。ウイルス性の慢性肝炎の方はがんを早期に発見するために、定期的に腹部エコーや腫瘍マーカーでチェックする必要があります。定期的にチェックしている場合は早期に発見できることが多く、治癒することも可能です。

「ウイルス性肝炎は治すことができますか?」で述べていますが、C型慢性肝炎は新しい抗ウイルス薬により、肝炎を治癒させることで肝がんの発生リスクを大きく減らすことができますので、C型慢性肝炎の方は積極的に治療すべきだと考えます。B型肝炎は治癒させることは現在では難しいですが、抗ウイルス薬を継続することで発がんリスクを抑えることができますので、同様に治療を考えたほうが良いと思います。

予防方法が進歩しているウイルス性慢性肝炎に対して、早期発見などが難しいのが非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの発がんです。NASHは肥満や糖尿病が関与する通常の脂肪肝に加えて、何らかの要因により肝炎が悪化し、肝硬変や肝がんへと進展する病態です。肝臓に脂肪が溜(た)まりますが、健診のドックなどで指摘される脂肪肝とは異なる病態です。

治療法も確立されておらず、発がん率はウイルス性肝炎よりは低いものの、ウイルス性の発がん数が減少しつつあるのに対して、NASHからの肝がんは今後相対的に増加していくと予想されています。肥満、糖尿病で脂肪肝の方は通常の脂肪肝なのかNASHなのか、定期的に腹部エコーや肝機能の推移をみていく必要があると思います。もちろん体重がオーバーしている方は禁酒、運動などの節制が必要になります。

更新:2022.03.29