認知症について教えてください

老年内科 脳神経内科

認知症は予防できるの?

認知症は、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症など、さまざまな病気を含む総称です。半数程度を占めるアルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症は活発に研究が進められていますが、残念ながら現時点では正確な原因、治療法は確立されていません。また、ほとんどの認知症は完全に予防することもできません。

しかし疫学(*1)研究により、①適度な運動習慣、②中年期からの高血圧、糖尿病コントロール、③地中海式といわれる魚・野菜・豆が多い食事などは認知症発症リスクを軽減することが示されています。中でも高血圧症、糖尿病は脳卒中の危険因子であることが知られており、脳卒中が原因である血管性認知症には特に有効です。一方、アルツハイマー型認知症でも虚血(きょけつ)性変化(*2)が強いほど認知機能に影響を与えることが知られているので、動脈硬化(どうみゃくこうか)・脳卒中予防はアルツハイマー型認知症にも効果があると考えられています。

けれども、これらを十分心がけていても、アルツハイマー型認知症をはじめとした認知症を完全には予防することはできません。あまりに心配しすぎてストレスをためることも好ましいことではなく、社会とのふれあいを維持した、精神的にも豊かな生活を送ることが大切です。

*1 疫学:個人ではなく集団を対象として、病気の原因や流行状態、予防などを研究する学問
*2 虚血性変化:血液が不足することにより生じる変化

認知症はどのように診断するの?

テレビに出ている俳優の名前が出てこない、このようなことは誰しも経験があることですが、もしこの俳優が自分の弟であったら、これは異常かもしれません。このように「物忘れ」といってもいろいろな種類があります。また、物忘れだけが認知症の症状ではありません。「段取りが悪くなって得意だった料理ができなくなった」「社交的であった人が外に出たがらなくなった」「近所に散歩に出て迷ってしまった」など、記憶以外の機能が低下することも特徴です。

認知症の主な原因疾患はさまざまで、その治療法や対応方法も異なります(図1)。そのため、特に症状の初期には、記憶を含めた複数の認知機能を評価する検査、頭部画像検査(MRI検査、脳血流SPECT(スペクト)検査〈図2〉)、血液検査などを行います。

図
図1 認知症の主な原因疾患
「朝田 隆(筑波大学医学医療系臨床医学域)、都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応、平成24(2012)年度」(厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム、https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2012/123021/201218011B/201218011B0007.pdf)をもとに作成
図
図2 アルツハイマー型認知症患者さんの脳血流SPECT

当院は研究所を併設しており、認知症分野ではアルツハイマー型認知症で脳に蓄積するアミロイドβ(ベータ)タンパク(Aβ)を検出できるAβ-PET(ポジトロン断層撮影)を用いた臨床研究を行っています(PET検査については、がんの広がりを調べるためにブドウ糖代謝を利用した、FDG-PETが、がん治療の分野ですでに活用されています)。アルツハイマー型認知症患者さんの脳では、正常高齢者では認められない高度なAβが多量に蓄積されており、アルツハイマー型認知症の診断に有効であることが示されています(図3)。

図
図3 Aβ-PETによるアミロイドβタンパクの蓄積(赤色の部分)

現在は一般の保険診療の適用ではありませんが、今後は米国のように診断に活用されていくことが期待されています。

認知症と診断されたら?

病院で認知症と診断された瞬間から、すべてができなくなってしまうわけではありません。すべてを忘れてしまうわけではありません。患者さんが自分自身の物忘れを自覚していることも多く、苦手なところを補う工夫・習慣や周囲の手助けで、仕事や現在の生活をより長く続けることも可能です。

介護する家族にとっては、これまでできていたことができなくなることで、イライラや患者さんのプライドを傷つける言動がつい出てしまうことがあるでしょうが、病気の特性を理解して接することによって、望ましくない行動・心理症状(暴力暴言、徘徊(はいかい)、幻覚、妄想など。BPSD(ビーピーエスディー)と呼ばれます)の出現を防いだり、軽減につながります。

また、病気によっては病状をある程度改善させる薬剤もありますので、自分たちだけで悩まず、主治医に相談してみてください。

「活気がなくなった」「物忘れが出てきた」「これまでしていた家事ができなくなってきた」。一見すると認知症によく見られる症状ですが、もしかしたら、てんかん、甲状腺などのホルモン異常、以前の転倒が原因で脳に溜(た)まった血液(慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ))、脳を循環する液体(脳脊髄液(のうせきずいえき))の循環異常(正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう))、肝臓の異常、ビタミンの欠乏などにより生じているかもしれません。

このような病気は、「治療可能な認知症」と呼ばれ、アルツハイマー型認知症とは異なり、有効な治療を行えば、場合によっては完全に回復することが期待できます。どうせ認知症だからとあきらめず、きちんと診断をつけることが大変重要です。

更新:2022.03.29