超音波内視鏡を用いた診断と治療について教えてください
愛知医科大学病院
肝胆膵内科
愛知県長久手市岩作雁又
超音波内視鏡はどのような機器ですか?
超音波内視鏡(ちょうおんぱないしきょう)検査は、内視鏡カメラの先端に超音波振動子を取り付けたもので、消化管(胃・十二指腸)の中から観察を行います。体表から観察する超音波検査と比べ、より高い周波数(しゅうはすう)での観察が可能です。消化管から観察するため、体表から観察する際に、妨げとなる消化管内の空気や脂肪の影響を受けずに、膵臓(すいぞう)や胆道(たんどう)、胆嚢(たんのう)の病変などの観察を行えます。同時に超音波内視鏡下に組織を採取し、診断することも可能です。最近では、検査のみならず、超音波内視鏡を用いたさまざまな診断や治療が行われています。
超音波内視鏡を使って膵臓がんの診断ができるのですか?
超音波内視鏡で病変を観察しながら、胃や十二指腸を介して細い針を刺し、細胞の診断を行う超音波内視鏡下穿刺吸引術(ちょうおんぱないしきょうかせんしきゅういんじゅつ)があります。鎮静下(ちんせいか)(眠る注射薬を使用)で行うため、患者さんの負担が比較的少ない検査方法です(写真1、2)。また、細胞を採取して病理学的に診断することは、確定診断に非常に有用であり、膵臓がんの診断には欠かせない検査法の1つとなっています。
当院では、採取した細胞を直ちに細胞検査士と一緒に評価を行い、適正な採取が確認できた時点で終了することで、検査に伴う患者さんの負担を最小限にするよう努めています。
超音波内視鏡を使った最先端治療があるのですか?
超音波内視鏡はさまざまな治療に用いられます。その1つとして、超音波内視鏡下ドレナージ法という治療があります。膵臓がんや胆道がんなどでは、しばしば胆管が狭くなり、胆汁(たんじゅう)の流れが悪くなることがあり、胆汁が流れる道をつくるために、胆管へのチューブや編み込み式のステント留置が必要となることがあります。通常は胆管の出口である十二指腸乳頭(じゅうにしちょうにゅうとう)からステントを留置しますが、さまざまな理由により、困難な場合があります。このような場合の選択肢として、超音波内視鏡下に十二指腸や胃内から胆管に針を刺し、そこから胆管にステントを留置し、胆汁が流れるようにする方法があります(超音波内視鏡下胆道(ちょうおんぱないしきょうかたんどう)ドレナージ、写真3)。
また、急性膵炎を起こすと、合併症として、膵臓の周囲に液体が溜(た)まって袋状になることがあり、感染を併発すると重症になることがあります。このような場合も、同様に超音波内視鏡下ドレナージが有効となります(超音波内視鏡下膵仮性嚢胞(ちょうおんぱないしきょうかすいかせいのうほう)ドレナージ、写真4)。超音波内視鏡下ドレナージはたいへん難しい技術で、全国的にも行える施設が限られていますが、当院ではいずれの処置も対応可能です。
当院では、最新の内視鏡機器や技術を積極的に導入することで、より安全で確実な治療を提供できるように心掛けています。
当院における超音波内視鏡検査について
近年、胆膵領域における超音波内視鏡検査の進歩は著しく、安全で有用な検査や治療が行われています。当科では、膵臓がん、胆管がん、胆嚢がんなどの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)に対して超音波内視鏡を用いた確定診断を行っています。
また、膵臓がんなどの悪性腫瘍により十二指腸が狭くなったケースや、十二指腸乳頭へのアプローチが困難な症例に対して超音波内視鏡を用いて胆汁が流れるようにする処置を行っています。また、急性膵炎後に膵臓周辺に液体が溜まって袋状になり感染が合併したケースでは、超音波内視鏡下膵仮性嚢胞ドレナージ術を行っています。
更新:2024.08.22