統合失調症

肥前精神医療センター

精神科

佐賀県神埼郡吉野ヶ里町三津

統合失調症

どんな病気?

幻聴、妄想といった症状が見られる病気であり、およそ100人に1人が発症し、日本全体においては現在も約80万人の患者さんがいると言われています。病気が進行すると徐々に認知機能(記憶力、理解力など)の低下、感情が乏しくなり意欲が低下するなど、うつ病に似た症状が出てくることがあります。過去には有効な治療法が見つからず患者さんの人生を苦しめる病気でしたが、1950年代頃から薬による治療が非常に発展してきており、現在では糖尿病や高血圧と同じように薬でコンロトールできる疾患となってきました。早期発見・早期治療が大切です。

症状

幻聴、妄想(陽性症状)感情・意欲低下(陰性症状)

男性は20代前半から半ば、女性は20代後半に発症しやすいと言われています。40代以降の発症は女性に多く、10歳代で発症するケースもあります。

前駆期:
急に自宅・部屋に引きこもりがちになる、物音に敏感になる、といった変化が、発症前の予兆として現れることが半数です。この段階では他の病気(うつ病、発達障害、強迫症など)との区別が難しいです。
陽性症状:
「自分の悪口が聴こえる」といった幻聴、「周りの人が自分に嫌がらせをしている」といった被害妄想が代表的です。こうした症状は"様子がおかしい"と家族や知人など周りの人に気づかれやすく、まとめて<陽性症状>と呼ばれます。全ての患者さんで同じ症状が出るわけではなく、「自分は神様だ」といった誇大妄想、「体が操られる」「自分の考えが外に漏れている」といった訴えなど、患者さんによって症状の現れ方はさまざまです。
陰性症状:
ある程度病気が進行してくると、感情の起伏が乏しくなる、意欲がなくなりボーっとしている、などの状態が目立ってきます。周りの人に気づかれにくく、まとめて<陰性症状>と呼ばれます。
図

検査・診断

問診、面接、行動観察などをもとに診断

統合失調症をはっきりと診断できる特別な検査方法はありません。患者さん本人が話す内容と、患者さんをよく知る家族・知人からのお話を十分に聞かせてもらい、他の病気の可能性がないか区別をしながら診断します。このため、最初に病院に来られた時点で必ず診断できるわけではありません。通院を続けるうちに別の病気であることが分かったり、逆に別の病気を疑って治療していくうちに統合失調症と診断されることもあります。近年では、MRI、脳波などの画像診断も診断に役立つことが分かってきています。

治療と経過

薬物療法(種類について)
再発予防のために大事なこと

薬物療法:
抗精神病薬という種類の薬が使われます。
飲み薬が最も一般的ですが、舌下錠(飲み込まず舌で溶かす)、シップのように貼り付けて使うもの(貼付剤)、月に1度だけ注射するもの(持効注射剤)、などさまざまなタイプの薬があります。古くから使われている薬よりも新しく使われ始めた薬のほうが副作用は少ないため、初めに処方されることが多いです。原則1つの抗精神病薬で治療できる方がよいのですが、改善が思わしくなければ2つの抗精神病薬を処方することもあります。薬の種類に限らず、副作用チェックのための定期的な採血や尿検査・心電図などの検査は受けておきましょう。
再発予防:
薬を使えば万事解決というわけではありません。この病気は再発することがあるため、再発予防のためには"患者さん自身と、患者さんの家族が一緒に病気を理解する"ことが大切です。患者さんの家庭においてはしばしば病気の症状に振り回され、お互いに「何で家族なのに分かってくれないのだろう」「ありえないことを言って、迷惑をかけないで欲しい」という形ですれ違いや溝ができてしまい、お互いに苦しむことになりがちです。病気の症状をよく理解することでお互いに冷静に話し合い、行動することができるようになるでしょう。病気の理解を深めるための取り組みを「疾病教育」と言います。これは医師による説明だけではなく、心理士によるカウンセリング、患者さんや患者さんの家族での集まり、訪問看護師によるケア、保健師による相談窓口など、患者さんを支える全ての医療・福祉スタッフとの関わり、リハビリテーションのなかで深まっていくものです。

症状の重い患者さん、再発を繰り返してしまう患者さんに対してはACT(包括型地域生活支援プログラム)というサービスが利用されることがあります。多職種の専門家チームによる24時間365日体制で訪問対応を行うものです。

当院の治療の特色

治療抵抗性(難治性)の治療を幅広く受け入れています

薬を使ってもなかなか効果が得られない場合や、副作用などが原因で薬が使えなかった場合、「治療抵抗性統合失調症」と診断されます。当院においては、他のクリニック・他の病院で「治療抵抗性」と診断された患者さんを、県内外を問わず広く受け入れています。

そうした患者さんに対しては、以下のような治療法があります。

クロザピン:
抗精神病薬の一つで、治療抵抗性の方でも効果が期待できます。ただし注意するべき副作用として「白血球の減少」があり、こまめな血液検査が必要となります。処方できる医療機関が限られており、初めて使う際には数か月~半年間の入院が必要となります。
電気けいれん療法(ECT):
頭に電気を流すことで精神症状を改善する治療法です。全身麻酔を行うため、実施できる医療機関が限られています。初めて実施する場合、3カ月程度の入院が必要となります。クロザピンの治療と並行して実施することもあります。

よくある質問

家族・知人がこの病気かもしれませんが、病院受診を拒否しており困っています

無理に受診させようとせず、まず本人に寄り添いましょう。

家族や友人だけで抱え込まず、市町村や保健所などの保健機関にも相談しましょう。

この病気は早期発見・早期治療が望ましいものの、病識(病気の自覚)を持つことが難しいため、患者さん本人がなかなか病院を受診しようとしないことがあります。

病院への受診を促す際のポイントとしては、①患者さん本人の心情に寄り添うこと②一人で抱え込まず誰かに相談することの2つです。

①患者さん本人に寄り添う:
病院受診を勧めるとき、「あなたの様子がおかしい、いつもと違う」「周りに迷惑をかけている」「私たちを心配させないで」と、説得する側の意見を押し付けてしまわないように気を付けましょう。幻聴や妄想も、それを感じている患者さん本人にとっては現実の感覚、確信のため「そんなことあるはずがない」と否定してしまうと、より猜疑心、孤独感を深めてしまう恐れがあります。
何よりも患者さんの不安、恐怖などの気持ちを尊重し、「最近、睡眠時間が減っているのでは」「食事が減って痩せているから心配」といった風に、相手を思いやる言葉遣いを心掛けましょう。
②抱え込まない、相談する:
患者さんの家族や近しい友人ほど「周りに迷惑をかけられない。自分たちで何とかしなければ」と抱え込みがちです。
一人で抱え込まず、相談することが大切です。周囲に相談できる人がいない場合、最寄りの保健所、精神保健福祉センターなど、相談窓口をご利用ください。

処方されたお薬は、一生飲み続けなければいけないのですか

続けた方がよいですが、治療終了も可能です。

薬を服用し症状が改善した患者さんのうち、治療を中止すると数年以内に半分以上が再発すると言われています。再発予防のためにも薬を飲み続けることが望ましいです。ただし十分な期間、十分に症状が改善・安定していれば、治療を終了することも可能です。その十分に安定した期間とは、統合失調症の症状が初めて出現した患者さんの場合は約1年間、再発を繰り返している患者さんの場合は約5年間が、おおよその目安ですが、一律に決まったものではありません。いずれにしても、患者さん自身やご家族の判断で減量や中止するのではなく、主治医と相談して決めていきましょう。

薬の副作用が心配です

最近は副作用を抑えた薬が主流です。副作用を抑える併用薬などもあります。

副作用として多いのが…便秘、のどが渇く、だるくなる、眠くなる…などです。薬を続けるうちに…体が思うように動かせない、体がムズムズする、口や手足の筋肉がピクピクする…といった副作用が出てくることもあります。副作用が重い場合には薬の減量・中止が望ましいのですが、精神症状が再発してしまう可能性もあるため判断が難しいところです。主治医とよく相談しましょう。

最近では、こうした副作用を極力抑えた薬が主流となってきていますが、昔から使われていた古い薬では副作用が出やすい傾向にあります。昔から通院されている患者さんで副作用にお困りの方は、新しい薬への切り替えについて主治医に相談してみましょう。
一部の副作用については、副作用を抑える薬を併用することでの対処も可能です。

症状をCHECK
※症状は人によりさまざまです

  • □ 妄想
  • □ 幻聴、幻覚
  • □ まとまりのない話し方
  • □ まとまりのない行動
  • □ テレパシーのように自分の考えが伝わる感じがする
  • □ 意欲の低下
  • □ 引きこもりがちになる
  • □ 会話が続かない
  • □ 同じ姿勢のまま動かない

症例 PICK UP!

「自分の個人情報が盗まれ、拡散している」と訴え、家族とともに受診し、薬物療法を開始したケース

35歳男性、会社員/統合失調症

症状

コロナ渦でリモートワークが続く中、ある日「自分の個人情報がSNSで拡散されている」「ニュースサイトで自分のことが勝手に記事にされている」と言い出した。やがて「電波が直接頭の中に入ってきて、自分の悪口を言ってくる」と言うようになり、夜中もブツブツと独り言が続き、食事をほとんど食べずお風呂にも入らなくなった。会社から同居の両親に「最近、仕事の報告が全く来ていない」と連絡があり、心配した両親に連れられて病院を受診した。

治療

本人は「薬を飲みたくない」との意向が強かったため、貼り薬タイプを処方。2週間ほど続けたところ「不安や恐怖感が消えて気持ちが楽になりました。けれど悪口は続いているし、妄想なのか現実なのかいまだはっきりしません」との意見。薬自体の効果は実感できたとのことで、飲み薬タイプに変更して通院を続けることになった。

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経過

通院を始めて3カ月経った時点で、症状は大きく改善し、病気の自覚も出てきた。本人は安心しつつも「副作用で若干、だるさと眠気があります。リモートワークが終わって会社への出勤が再開するときに心配です」との意見であったため、今後は再発に注意しながらだるさと眠気がなくなるように薬の種類を変更・調整していく方針となった。治療を続け、仕事に無事に復帰し、「同じ病気をもつ人たちのために、自分の経験を活かしたいです」と笑顔で話している。

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更新:2026.08.14