股関節疾患の最新治療

福井大学医学部附属病院

整形外科

福井県吉田郡永平寺町

股関節疾患の種類

股関節周囲に痛みが出る疾患には、発育性股関節形成不全(臼蓋(きゅうがい)形成不全)、変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症(だいたいこつとうえししょう)、一過性大腿骨頭萎縮症(いっかせいだいたいこつとういしゅくしょう)、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(だいたいこつとうなんこつかぜいじゃくせいこっせつ)、急速破壊型股関節症、化膿性股関節炎、関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の骨転移などがあります。また、腰椎(ようつい)疾患や女性器疾患、消化器疾患などでも股関節周囲に痛みが出ることがあります。

変形性関節症の治療

日本人に多くみられる二次性変形性股関節症は、先天性股関節脱臼(だっきゅう)、臼蓋形成不全が原因となることが多く、乳幼児期、学童期、思春期、青年期、壮年期それぞれに適切な治療を行うことが必要となります。変形性関節症の予防と治療は、患者さんの生涯を通じて一貫した治療を行うことが大切です。

薬などで痛みが改善されない場合、変形の進行が比較的軽い変形性股関節症に対しては、寛骨臼(かんこつきゅう)回転骨切り術などの骨切り術による関節温存手術を行いますが、末期変形性股関節症に対しては、人工股関節置換術(ちかんじゅつ)を行います。過去には、欧米人の大腿骨に合わせて開発された人工股関節を使用していたため、早い時期から人工関節のゆるみがみられました。

福井大学では、日本人の大腿骨形状に適合する人工股関節を独自に開発しました(図)。この人工股関節は、手術直後の固定性がきわめて優れているため、手術翌日から歩行器を使って歩くことができ、人工関節の近位部に特殊な表面加工が施されているので、早期から大腿骨との間で骨生着が起こり、生涯、ステムがゆるまないよう工夫されています。すでに400人以上の患者さんに使用しましたが、過去の人工関節では考えられないくらいの良好な中・長期成績が得られ、国内外から高い評価を得ています。

図
図 左:福井大学で開発した日本人の大腿骨形状に適合する人工股関節ステム
中:末期変形性股関節症のX線写真
右:人工股関節置換術後のX線写真

この人工股関節が開発されて、人工関節の寿命は30年を超えるようになりました。

大腿骨頭壊死症の治療

厚生労働省の指定難病である特発性大腿骨頭壊死症に対しては、壊死部の大きさ、痛みの程度、関節破壊の程度に応じて、保存治療や手術治療を行っています。手術治療では、壊死部が小さく健常の骨が残っている場合には、大腿骨頭回転骨切り術などの関節温存手術を行います。壊死部が大きく関節温存が困難な場合は、前述の人工関節などを使用して、人工骨頭置換術、人工股関節置換術を行い、再び痛みのない日常生活を取り戻すことができます。

多様な治療法の中から最適なものを選択しましょう

ここで述べた治療法は、1つの方法にすぎません。患者さんの病状だけでなく、個人の生活スタイルに合わせた、その人に最もふさわしい治療法を選択することで、日常生活の質を大いに改善することができると考えています。

更新:2023.02.25