危険な敗血症を集中治療する
福井大学医学部附属病院
集中治療部
福井県吉田郡永平寺町

敗血症とは
「敗血症(はいけつしょう)」とは、感染症もしくは感染の疑いがある患者さんが臓器障害(ぞうきしょうがい)を合併した病気の状態をいいます。
全世界では数秒に1人が敗血症で命を落としています。敗血症はあらゆる年齢層がかかる重症で、死亡率も高い病気です。そこで世界的にこの敗血症で命を落とす患者さんの数を減らすキャンペーンを続けています。
当院では、2016年ICUに入室した患者さんのうち約40人(6%程度)が敗血症でした。
敗血症の中でも特に重症で、血圧などが非常に低くなる状態を敗血症性ショックといい、その治療においては早期診断・治療および、それに引き続く集中治療が重要になります。
敗血症の治療
敗血症は感染症の1つの状態なので、抗菌薬(こうきんやく)(抗生物質)による治療が基本ですが、血圧が下がるほど重症となり、そうなると抗菌薬だけでは救命できません。病気の種類によっては早急に手術が必要となります。適切な量の点滴を投与することも重要で、時には大量の点滴も必要となります。血圧を上げるさまざまな薬も微調整が必要です。また、合併することの多い呼吸不全に対しては人工呼吸療法(じんこうこきゅうりょうほう)を、そして腎臓の働きが非常に悪くなったときには血液浄化療法(けつえきじょうかりょうほう)などと、あらゆる治療を行う必要があります。
ひと口に人工呼吸といっても患者さんの状態によって、いろいろな補助のかけ方に違いがあります。血液浄化法というのは、一般の方には「透析」という表現のほうが分かりやすいかもしれませんが、もちろんここでいう「透析」と通院で行う「透析」とは違いがあり、各種臓器に負担がかからないようゆっくりと長時間かけて、体の中の老廃物(ろうはいぶつ)や水分を除去します。
以前の集中治療室では、人工呼吸中の患者さんは仰向けで深く眠った状態で管理されていましたが、現在はそのようなことはありません。動かずに長時間ベッドの上で寝ていることで、人工呼吸を外すのに時間がかかったり、その後の精神状態に悪影響を及ぼすことが分かってきました。人工呼吸中であっても、その管による苦痛を軽くした上で目を覚ましてもらい、早期にリハビリを勧めることで人工呼吸から早く抜けだすことが可能になります。場合によってはうつ伏せに寝てもらったり、立ち上がってもらったりしています。
また、苦痛を減らし、眠りのリズムをつけることで集中治療室から一般病棟に移った後の精神状態を良い方向に保てるといわれており、そのように工夫しています。
これらの治療は、特定の科の医師のみで行うものではありません。複数の科の医師と看護師、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士など、さまざまな職種でチームを作り、話し合いを重ねながら、より多くの患者さんの命が助かり、また、命が助かるだけではなく、その後、元の日常生活に可能な限り早く戻れるように工夫をし、治療を行っています。
更新:2023.02.25