医療上の事故のない病院を目指す医療安全管理部

医療環境制御センター

医療安全管理は病院の責務

「医療は安全に行われて当たり前」「医療はうまく行って当たり前」皆さん、そのように思っている(期待している)と思います。しかし、現実はそうでないこともご存知だと思います。覚えている人も多いと思いますが、約20年前に大きな医療上の事故が相次いで起きました。心臓の手術を受ける患者さんと肺の手術を受ける患者さんの取り違え事故や、消毒薬を誤って静脈内注射された患者さんの死亡事故などです。これらの医療上の事故を契機に医療安全管理の重要性が認識され、現在、厚生労働省はすべての医療機関において医療安全の確保を義務付けています。

病院のシステム改善と医療安全への意識向上が重要

医療上の事故の原因は、多くの場合、病院のシステム(業務・作業手順、ルールなど)の不備にあることが分かっています。例えば、先に述べた患者取り違え事件では患者さんの確認方法や手術室への患者さんの搬送方法、麻酔開始時に主治医の立ち会いがなかったことなどが原因として挙げられました。一方、業務・作業手順やルールを守って医療を行うのは各々の職員であり、職員の医療安全に取り組む意識も医療上の事故防止には不可欠です。

当部は、病院のシステム改善と職員の医療安全への意識の向上の両面から医療上の事故防止を考えて活動しています。

報告されたすべての事例を医療安全の向上に活用

重大な医療上の事故1件の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリ・ハット(文字通り「ヒヤリ」としたり「ハッ」とする出来事)が存在するといわれています。したがって、医療上の事故の防止のためにはヒヤリ・ハットや軽微な事故事例の収集を行い、重大な医療上の事故の芽を摘む努力をしなくてはなりません。当院では、電子システムを用いてこれらの出来事を収集し、報告されたすべての事例に関して当部が調査と原因究明を行っています。この全例調査・原因究明は、他施設ではほとんど行われていないきめ細かな取り組みです。これによって、院内の医療安全管理上のシステムの問題点を確実に把握し、現場のスタッフとともに改善策を考え、早期に改善策を実行に移すことができるようになっています。

部門カンファレンスと医療環境制御センターニュースの発行

週に1回の部門カンファレンスで、多職種(医師、看護師、薬剤師、診療支援技師、事務職員)で構成される当部スタッフがすべての報告された事例を再検討して病院全体で共有すべき事例(警鐘事例)を選択し、病院長・副病院長が参加する会議(医療安全管理委員会)で報告して、さらに再発予防について検討を重ねています。その結果はリスクマネージャー(*)会議で院内全体に伝えられ、職員への周知を図っています。また、医療安全管理上、特に重要なことは、毎月発行する医療環境制御センターニュース(図)でも職員に知らせています。
*リスクマネージャー:院内の各部署における医療安全担当のスタッフ。リスクマネージャーは各部署を代表する臨床能力と倫理観を備え、部署内の利害や私情にとらわれない客観的対応をとることができる職員であり、各診療科の准教授や師長などがその任にあたっています。

図
図 医療環境制御センターニュース

院内安全パトロール

事例検討から立案された病院システムの改善策は、実際に実施されているかが検証される必要があります。当部は病院内の各部署を定期的にパトロールして、それを検証し、改善が不十分な場合には指導を行っています(写真)。パトロールでは現場スタッフが感じている医療安全上の懸念される点に関しても情報を収集し、事故防止に役立てています。

写真
写真 院内パトロール

当院の良好な医療安全管理レベル

患者さんにとって、当院の医療安全管理レベルがどの程度であるかが関心事だと思います。毎年、厚生労働省・福井県による医療安全管理に関する医療監視が行われますが、当院の医療安全管理は良好であると評価されています。また、大学病院などの特定機能病院の承認要件が見直され、医療安全確保の強化が求められていますが、すべての要件に対応しており、2017年からは年2回、一般市民や法律家、他大学の医療安全専門家による医療安全に関する監査も受けています。

心理的安全性の高い環境づくり

医療上の事故が起こる要因の1つとして心理的安全性の欠如があります。心理的安全性とは、他人の反応を怖がったり恥ずかしいと感じたりすることなく自分を隠さず全てをオープンにできる状態のことです。心理的安全性を高め、穏やかな雰囲気のある環境をつくり、医療上の事故がない病院を目指します。

職員の高い医療安全への意識

重大な医療上の事故は医師が関係することから、医師からのヒヤリ・ハットや軽微な事故事例の報告が特に重要です。一般的には医師からの報告が全報告の約7%を占めると医師の医療安全への意識が高いといわれますが、当院では約8%が医師からの報告であり、医師の医療安全への意識は高いといえます。

医療安全のために重要なことを学ぶことは医療上の事故防止のために欠かせませんが、医療安全に関する研修は医療法でおおむね年2回以上の受講が求められています。2016年度以降、当院職員の年2回以上の研修受講率は100%を達成しています。これも、当院職員の医療安全への意識の高さを示しているものと思います。

当部は患者さんの医療安全確保のために日々活動しています。当院の医療安全管理レベルは良好と評価され、職員の医療安全に対する意識は高いと思いますが、さらにそのレベルを上げて行くためには患者さん、患者・ご家族からのご指摘が重要です。お気付きのことがあれば、医師、看護師をはじめ病院職員にお話しください。

また、当院では患者誤認防止の取組み「指差し呼称」を推進しています。患者に関わる全ての業務の直前に患者さんにフルネームを名乗っていただいていますので、安心・安全な医療の実施のために、患者・ご家族の皆様に医療へのご参加をお願いします。

更新:2024.07.04