国民病でサイレントキラーの 高血圧を治療する

浜松医科大学医学部附属病院

腎臓内科

静岡県浜松市東区半田山

高血圧とは?

高血圧は国内に約4,300万人の患者がいるといわれる最大の国民病です。高血圧は自覚症状がないまま心臓や血管の病気(心血管疾患(しんけっかんしっかん))を増やし、死に向かわせるのでサイレントキラー(静かなる殺人者)といわれています。さらに、腎臓(じんぞう)の機能を悪化させ、透析(とうせき)や腎移植を必要とする末期腎不全(まっきじんふぜん)の危険性も増加させます。

そのため、高血圧を管理する目的は、血圧を下げて、心血管疾患や末期腎不全を抑制することです。家庭でも血圧をしっかり測定することが必要で、減塩を含めた生活習慣の改善と降圧薬(こうあつやく)の服用が大切です。

高血圧の診断

血圧とは、心臓から全身に送り出される血液が血管の壁を押すときの圧力のことです。収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)と拡張期血圧(かくちょうきけつあつ)の2つがあります。

収縮期血圧とは、心臓が収縮し、血管に最も強い圧力がかかっているときの圧力で、拡張期血圧とは、心臓が拡張しているときに血管にかかる圧力のことです(図1)。

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図1 血圧のしくみ(収縮期血圧と拡張期血圧)
(日本高血圧学会発行、一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子「高血圧の話」P3、ライフサイエンス出版より)

高血圧とは、診察室で140/90㎜Hg以上、家庭血圧で135/85㎜Hg以上になったときに診断されます。

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高血圧で困ること

血圧が上昇するほど、心血管疾患の発生は右肩上がりに増えていきます。高血圧は心血管疾患の死亡に関係する一番重要な危険因子です。高血圧は自覚症状もないまま、ジワジワと死に向かわせることからサイレントキラー(静かなる殺人者)といわれています。

さらに、高血圧は腎臓機能を悪化させ、透析や腎移植を必要とする末期腎不全の危険性も増加させます。このため、高血圧の管理は血圧の値を下げることにとどまらず、心臓や脳、腎臓を健康な状態に守るために必要です。

血圧の数値目標

高血圧管理のためには、自分自身の血圧を把握することが必要です。血圧は病院だけでなく、自宅での測定が大切です。というのも、病院での血圧(診察室血圧)が高いのに家庭血圧が高くない白衣高血圧(はくいこうけつあつ)や、逆に診察室血圧は高くないのに家庭血圧は高い仮面高血圧(かめんこうけつあつ)の患者さんがいるからです(図2)。

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図2 高血圧のタイプ

家庭での血圧を測るには5つのポイントがあります(図3)。正しい測定方法で、正確な血圧を測定しましょう。

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図3 家庭で血圧を測る5つのポイント

血圧の管理には家庭血圧の評価が大切です。家庭血圧の管理は、75歳未満で125/75㎜Hg未満、75歳以上で135/85㎜Hg未満をめざしますが、合併している病気の状態によって異なります。

高血圧の管理方法

高血圧は、生活習慣を改善することと血圧を下げる薬(降圧薬)を使用して治療をします。生活習慣の改善には、食事、減量、運動、アルコールを控えること、禁煙があります(図4)。

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図4 生活習慣修正による降圧の程度
(日本高血圧学会発行、高血圧治療ガイドライン2019「JSH2019」P64 図4-1、ライフサイエンス出版より)

「図4」にあるDASH食とは野菜・果物・低脂肪乳製品が豊富で、飽和脂肪酸とコレステロールが少ない食事のことです。

なかでも、食塩の摂取を1日6g未満にする減塩を中心にした食事の管理は大切です。減塩は血圧を下げますし、心血管疾患も抑制します。

生活習慣の改善のみで血圧管理ができないときは、高血圧の程度と合併症があるかないかを判断し、1つの降圧薬を少量、もしくは通常量から開始し、増量の必要を注意しながら見ていきます。

更新:2023.10.26

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