脳腫瘍の治療最前線

浜松医科大学医学部附属病院

脳神経外科

静岡県浜松市東区半田山

脳神経外科とは

脳神経外科は、主に脳の病気を担当する科です。例えば、脳にできものができる脳腫瘍(のうしゅよう)や、脳の血管が詰まる、切れるなどの脳血管障害(のうけっかんしょうがい)、頭をけがする頭部外傷(とうぶがいしょう)、震え、しびれ、痛みなどの機能性脳疾患(きのうせいのうしっかん)などを診ます。

当科には、ほかの病院では治療が難しい患者さんが、県内のみならず県外からも多く紹介され、相談に来ています。

脳腫瘍とは

頭部、特に脳にできるできもの、腫瘍を総称して「脳腫瘍」と呼びます。

脳腫瘍は、がんではない良性腫瘍と、悪性脳腫瘍があります。良性腫瘍はまず、外科的に可能な限り全部取るようにします。腫瘍と大事な神経や血管がくっついている場合は、それらを傷つけないように、無理せず腫瘍の一部を残すこともあります。術後は、外来で定期的なMRI検査を行います。また、大きくなってきた場合には、もう一度手術をしたり、もしくは放射線治療を追加したりすることがあります。

悪性脳腫瘍の場合は、手術により、障害が出ない安全なところまで取り除きます。ただ、悪性腫瘍は、脳に染み渡るように広がる場合が多いので、手術後に放射線をあてる放射線治療や抗がん剤を使用する化学療法を行います。

手術では、腫瘍ができたところに大切な機能がある場合は、手術中に一時、麻酔を覚まし(痛みはありません)、手足を動かしたり言葉を発したりしながら摘出をする「覚醒下手術(かくせいかしゅじゅつ)」を行うことがあります。これは術後の合併症を避けるための手術となります。

悪性脳腫瘍においては、放射線治療科、小児科など、他科と連携しながら治療に取り組んでいます。

脳腫瘍の治療
内視鏡手術

治療は、脳腫瘍の種類によって違っています。大きく分けると、手術での摘出、薬を使用する化学療法、放射線治療の3つです。

なかでも脳神経外科手術は、いろいろな器具や方法があります。基本的には、頭蓋骨を外して、脳の膜を切って手術します。

さらに、より安全性と確実性を上げるために、当科ではナビゲーション装置を使用します。これは、自家用車のカーナビとよく似た機能を持っています。

脳は複雑な形状をしており、いたるところに重要な構造物と機能がちりばめられています。そのため、脳の解剖を熟知したうえで、手術をすることが必要です。

最近は、ロボット型のナビゲーションシステムもあり、とても正確に腫瘍の深部の組織を取ることも可能となっています。

脳腫瘍の内視鏡手術とは

外科領域では、1980年ごろから内視鏡を用いた手術が行われてきました。近年、脳神経外科領域でも内視鏡(神経内視鏡。写真1、図)が使用されるようになり、神経内視鏡手術は、脳神経外科手術における重要な手術手技となっています。対象になる病気は、脳の深いところにある腫瘍、脳出血(のうしゅっけつ)などがあります。

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写真1 ビデオスコープ(軟性鏡)
(オリンパスマーケティング株式会社)
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図 硬性鏡
(© KARL STORZ SE & Co. KG, Germany)

下垂体部腫瘍(かすいたいぶしゅよう)については、2010年より顕微鏡を用いず、内視鏡だけで腫瘍を摘出する神経内視鏡単独手術を開始し、鼻からの神経内視鏡手術を行っています。さらに2013年からは、よく見えるハイビジョンシステムと、磁場式ナビゲーションを併用するようになりました。小児から80歳代前半まで、症例を手術しています。

ハイビジョンシステムでは、色コントラストがとてもきれいに表現され、腫瘍と正常下垂体との境界を鮮明に見ることができます。また、磁場式ナビゲーションは解剖、腫瘍の位置などが術中にすぐわかります。

最近では、さらにきれいな映像で、色もいい4Kシステムも使用しています。「4K」や「ハイビジョン」というと、テレビの世界では美しい風景などをきれいに見せるために使われますが、医学の世界でも、細かいところをよくみるために4Kの技術が使われています(写真2)。

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写真2 術中イメージングシステム
(オリンパスマーケティング株式会社)

深いところの脳腫瘍については、神経内視鏡を使うことで、正確で確実な腫瘍の摘出が可能であり、迅速な診断と治療に貢献しています。神経内視鏡単独手術で脳腫瘍を摘出する場合もあります。

この手術方法により、従来は大きく頭蓋骨を外す必要があった手術が、小さな開頭での手術も可能となり、患者さんの回復も極めて早くなりました。大きな腫瘍の場合、開頭顕微鏡手術と神経内視鏡手術を併用する場合もあります。

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写真3 神経内視鏡手術の術中風景
矢印:内視鏡と固定用の架台アーム装置を一体化したシステム
矢頭:55 インチ4K モニター

最新のトピックス

がんゲノム医療におけるがん遺伝子パネル検査が、外来でできるようになりました。がん遺伝子の異常などをパネルで見つけ、その遺伝子異常によく効く薬剤の候補を、提案することができます。また、最新の治験などがあれば、患者さんへ紹介するようにしています。

更新:2023.10.26