より長期的に手厚い治療を提供できるHCU
浜松医科大学医学部附属病院
HCU
静岡県浜松市東区半田山
HCUとは?
HCUの名前の由来は「High Care Unit」の頭文字からきています。日本語では「高度治療室」といわれています。ICU (集中治療室) と一般病床の中間にあたる、高機能病床です。ICUでは入院患者2人に対して看護職員1人(2対1)、HCUでは4対1、一般病棟は7対1になっています。
当院では今まで、12床のICUが稼働していました。これに加えて、2022年5月から8床のHCUを新設しました。より多くの重症の患者さんに、より良い高度な医療が行きわたるようになりました。
HCUとICUの違い
ICUでは、生命の危機に直面した重症患者が入室します。24時間体制で人工呼吸器やECMO(エクモ)(体外式模型人工肺)、透析(とうせき)などを用いて、高度な治療を行います。
一方HCUは、ICUにいる患者さんと比べると重症度は低いけれど、急に状態が悪くなる危険があったり、一般病棟ではケアが難しかったりする患者さんが入室します。HCUへ入る患者さんは大きく次の3パターンを想定しています(図)。
- 術後管理のため手術室、カテーテル治療室から入る
- 救急外来から直接入る
- ICUから移動してくる
肺がん、交通事故、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)、どんな病気の患者さんでも、重症になるリスクが高いと判断されれば、利用することができます。「重症になるリスクが高い」の選択基準は、施設によって異なるため、HCUの特徴がわかりづらくなっている側面もあります。
診る病気を限定しないことや看護師が一目で監視できる点はICUと同じですが、HCUの特徴として、経済的な負担が軽減された状態で、一般的な病床よりも高度な治療を受けられる期間が21日までであることも挙げられます(ICUでは14日までです)。
例えば、ICUで14日間治療して、まだ不安定な状態が続く場合は、HCUで7日間治療し、一般病棟へ転室するという流れが可能になります。より長期的に手厚い治療を行えることで、一度は命の危機に瀕した状況になってしまっても、救命だけでなく、家族と過ごす日常生活に戻り、社会復帰することを目標にできます。
空気感染対策も備えています
近年、世界中で猛威を振るう「新型コロナウイルス(COVID-19〈以下、コロナ〉)」ですが、感染経路は大きく分けて2つあります。①接触感染、②空気感染です。
①は手袋や帽子、ガウンで対応し側面もあります。しかし、②に関しては、ウイルスが空気中を飛び回ることで、人から人へ感染するため、部屋の空気が外に出ないように、部屋の中を陰圧(気圧を低くした状態)に保つ特殊な空調設備が必要です。
新設した8床のうち4床では、人工呼吸器を必要とするような重症コロナ患者さんの受け入れも見据えて、部屋を陰圧に保つことができます。また、これら4床には、通常の病棟と空間を隔てるための前室も備えています。そこでは、医療者が感染防護のために着替えるほか、患者さんがいる部屋から出たゴミを処理します。
空気感染対策は、近年注目されてきましたが、結核(けっかく)や麻疹(はしか)などで古くから提唱されてきた概念です。コロナ終息後も、有効に活用できることは間違いありません。
高度な集中治療、特に感染対策を要する場合には、多くの人と物、空間が必要です。これらを満たしている高機能病床が、新設されたHCUです。
特定看護師としてのかかわり
HCUの看護師は、ICU・病棟・救急外来との「絆」となり、患者さんが1日でも早く回復できるような質の高いケアの提供に取り組んでいます。HCUには、大きな手術の後、心筋梗塞や不整脈(ふせいみゃく)治療後、急性心不全(きゅうせいしんふぜん)、急性呼吸不全(きゅうせいこきゅうふぜん)、脳卒中など、重症化リスクの高い患者さんが入室します。特定看護師が多く配置されており、患者さんの些細(ささい)な変化を見逃さず、患者さんの症状に合わせた適切な処置を実践できることが期待されています。
高度で専門的な知識と判断力を持ち、チーム医療のキーパーソンとして、多職種と連携していきます。そして、患者さんが安心して治療を受けることができ、苦痛が最小限となるように、最大限のサポートを行っていきます。
更新:2024.11.07