感染から病院と地域医療を守る感染対策チーム

浜松医科大学医学部附属病院

感染対策室

静岡県浜松市東区半田山

「病院の感染対策」

病院における感染対策は、2006年の医療法改正から、「病院等の管理者は、院内感染対策のための体制を確保しなければならない」と定められました。当院でも感染対策チーム(以下ICT:Infection Control Team)を組織しています。

当院は、感染対策向上加算(感染防止対策を評価する施設基準)を取得し、患者さんへ安心、安全な医療の提供に努めるだけでなく、地域の医療環境も守るために、院内外で活動を行っています。

多職種で臨む院内感染対策

来院した患者さんが、治療や療養の過程で、本来の目的とは別に感染症に罹(かか)ってしまうことがあります。かつて「院内感染」といわれていたもので、現在は「医療関連感染」と呼ばれています。

医療関連感染は、多くの患者さんの入院や治療を制限しなければならなくなる場合もあるため、病院の感染対策は非常に重要です。

医療関連感染を起こさないために、当院ではICTを中心に院内感染対策に取り組んでいます。当院のICTは、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職員といった多職種で構成されています

多職種での連携により、職種の垣根を超えた迅速で幅広い対応を可能とし、院内感染対策を推進しています。

院内感染対策の取り組み

病院では「医療関連感染を起こさない」ことが望ましい姿ですが、ゼロにすることは難しいのが現実です。

私たちICTは、院内環境の管理、感染症の検査と発生数、感染症の治療が適切に実施されているかを定期的に確認し、現場への指導や支援活動を行っています。また、病院職員、病院実習学生への感染対策教育や啓発活動など、幅広い活動を展開して、院内感染対策レベルの向上を図っています。

現在、病院における感染症の治療や感染対策において課題となっているのが、薬剤耐性菌(退治する薬が効きにくくなった細菌)の問題です。

当院では、抗菌薬の適切な使用を推進するために、私たちが抗菌薬の選択や治療に積極的に介入しています。また、感染制御システムを活用して、耐性菌の発生場所や頻度を迅速に把握し、微生物検査室で同じタイプの耐性菌が広がっていないか遺伝子レベルまで検査を行っています。

さらに当院では、最新の紫外線照射装置(写真2)を導入し、院内環境に残った薬剤耐性菌に対して高レベルな消毒を実施し、環境汚染の防止と、院内環境の安全の確保に努めています。

写真
写真2 紫外線照射装置

高度な医療を安全に提供し続けるために、ICTは院内でさまざまな取り組みをしています。

浜松地区の感染対策の推進役として

多くの患者さんが、病院や施設を流動的に移動している現状から、感染対策は1つの病院だけの問題ではなくなっています。

現在の感染対策は、地域の病院や施設と協働した対策が必要不可欠であり、当院はこれまでも、浜松地区の感染対策の推進役として多くの病院や医療施設と連携し、地域全体で感染対策に取り組んできました。

2022年度から、外来感染対策向上加算(診療所・クリニックに向けた、外来診療における感染防止対策を評価する施設基準)が新設され、地域の医師会に所属する診療所やクリニックとの連携も開始しました。

また、コロナ禍を経験したことにより、行政(保健所)と連携して、精神科病院、社会福祉施設への感染対策指導、支援活動をこれまで以上に積極的に行うようになりました。

私たちは、これらの感染対策への取り組みの推進役として、浜松地区の医療機関と連携し、地域の感染対策に貢献します。

更新:2023.10.26