良質な薬をいち早く―未来の医療のために

浜松医科大学医学部附属病院

臨床研究センター

静岡県浜松市東区半田山

治験ってなに?

私たちが普段使っている多くの薬は、10年以上の歳月をかけて、効き目はあるか、安全に使えるかを動物やヒトを対象に試験し、その結果を厚生労働省(国)が審査し、承認したうえで使われています。この、ヒトで行う試験のことを、「治験(ちけん)」といいます。国が判断する大切なデータを作る試験であり、「治験」は薬の開発にとって必要不可欠なものです。

薬ができるまで

病気になったり、けがをしたりすると、薬を用いて治療します。飲み薬、注射、貼り薬と、病院ではたくさんの薬が使われていますが、より良い薬を作るための努力が続いています。

新しい薬を作るのは大変な作業で、患者さんの手元に届くまでには、10年以上の期間が必要です。

薬を作る会社(製薬企業)は、「薬の候補」となる物質を探し、「薬の候補」が見つかると、作用機序(さようきじょ)(どのような作用があるか)や安全性を確認するために、動物で試験を行います。この試験で問題がなければ、次にヒトを対象にした試験「治験」を行います。

「治験」では、まず少数の健康な人を対象に安全性を調べます(これを第Ⅰ相試験(だいいっそうしけん)といいます)。次に、もう少し多い人数の患者さんを対象に、効果的な投与方法や投与量、有効性や安全性を調べます(第Ⅱ相試験)。

最後に、多くの患者さんを対象に有効性や安全性を調べ、薬として病気の治療に使えるかを確認します(第Ⅲ相試験)。当院では、主に第Ⅲ相試験を行っています。

これらの結果をもとに、国が薬としての有効性や安全性を審査します。その結果、承認を受けると薬として使うことができます(図)。

フローチャート
図 薬ができるまで

医師から「治験」の話をされたら

「治験」は怖くないですか?

有効性や安全性がわかっていない「薬の候補」を使うのは、怖いと感じるかもしれません。「治験」は、科学的に適正かつ安全に実施されるために、国や病院の治験審査委員会で厳しい審査を受けたうえで行われます。

また、病院スタッフは患者さんの安全を最優先にして対応します。不安や心配なことがあれば、医師または病院スタッフに相談してください。

医師に言えないことはどうすれば良い?

臨床研究コーディネーター(病院ではCRCとも呼ばれます)を知っていますか?

臨床研究コーディネーターは、「治験」に参加する患者さん、医師、製薬企業の間をつなぐスタッフです。医師に聞けないことやわからないこと、心配なことがあれば、臨床研究コーディネーターに相談してください。

「治験」に参加する メリット・デメリットは?

「治験」に参加すると、最新の治療によって、あなたの病気が改善するかもしれません。また、将来の医療に貢献することができます。

一方で、予想した「薬の候補」の効果が表れないことや、予期しない副作用が起こることがあります。このような場合にも、医師は患者さんにとって最善の治療を行います。

「治験」に必ず参加しないといけませんか?

「治験」に参加するかどうかは、患者さん自身の考えで決めることができます。医師は決して参加を強制しません。これを自由意思といいます。

また、一度参加を決めた場合も、途中でやめることは自由です。参加を断ったり、途中でやめたりした場合に、不利益が生じることはありません。

「治験」はたくさんの方の協力が必要になります。あなたの一歩が新しい薬の誕生につながります。

更新:2023.10.26