新型コロナウイルス-藤田医科大学の対応

藤田医科大学病院

感染症科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

愛知県における新型コロナウイルスの経緯と現状

新型コロナウイルスは2019年12月に中国で初めて報告され、1月中旬には日本国内で初の新規感染者が見つかりました。その後、2月上旬に香港から横浜に帰港したクルーズ船ダイアモンドプリンセス号で乗員乗客712人の集団感染が発生し、当院はこの感染者の受け入れに深くかかわることとなりました。

一方で名古屋市を中心とした愛知県では、全国に先駆ける形で2月からデイケア施設やスポーツジムなどでクラスターと呼ばれる集団感染事例が複数発生し、4月のピーク時には感染経路が不明な事例も含め、1日20人以上の新規感染者が判明した時期がありました。これを受けて4月10日には愛知県が独自に緊急事態を宣言し、その約2週間後には新規感染者が大幅に減少し、現在に至っています。この間、感染者の入院がやや逼迫(ひっぱく)した時期もありましたが、現在のところ関東の一部で見られたような厳しい状況にはなっていません。

クルーズ船乗員乗客受け入れ事業

藤田医科大学では政府からの要請により、ダイアモンドプリンセス号の船内で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した無症状病原体保有者の乗員・乗客およびその同伴者計128人を2月19日から3月9日まで、開院前だった岡崎医療センターで受け入れました(写真1、2)。

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写真1:藤田医科大学岡崎医療センターで受入れの準備をするスタッフたち
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写真2:クルーズ船の乗客を乗せたバス到着の様子

この事業は岡崎医療センターの守瀬院長をリーダーに救急総合内科、呼吸器内科、感染症科、そして看護部を始めとする多くの病院スタッフが力を合わせ実現したものです。新型コロナウイルス自体が新しく見つかったウイルスなので、まだ分からないことが多くあります。そのような中で、感染予防の基本を守りつつ最新の情報を取り入れ、これをスタッフ全員で励行することで、二次感染などを起こすことなく事業を完了することができました。また、滞在された方の多くが外国人でしたが、自動翻訳機などのツールを使いながらコミュニケーションを取り、食事なども極力要望に応えるよう努めました。おかげさまで快適に過ごすことができたとの声を多くいただきました。

岡崎医療センターはその後消毒・清掃作業を経て、4月7日に正式に開院しました。この受け入れ事業で得られた経験は、藤田医科大学病院群の新型コロナウイルス対策に生かされています。

藤田医科大学病院での新型コロナウイルス対策

藤田医科大学病院では、安心して入院、通院していただき、病院の強みである先端医療を引き続き受けていただけるよう多くの対策を取っています。

基本となる考え方は、新型コロナウイルスを極力院内に入れないこと、そして万が一入ってしまった場合でも早期に検知し院内で広がらないようにすることの2つです。前者としては、すべての来院患者さんに検温(写真3)と問診を実施し、懸念がある場合には一般エリアではなく、発熱トリアージエリアで診察を受けていただくことで院内の動線を分けています。また医師を含む職員全員にも毎朝体温と体調を報告することが義務付けられています。さらに、肺炎で入院された患者さんについては一旦個室に入っていただき、感染症科による診察、必要があればPCR検査などを行ってから一般病室に移っていただくようにしています。

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写真3:藤田医科大学病院入口での検温の様子

後者としては、入院患者さんの体調を看護部で統一的に把握し、複数の方が同じ病棟で体調を崩されたような場合には、すぐに必要な検査や対応が取れるシステムを作りました。また職員にマスク着用と手指衛生を徹底することで、気づかないうちに感染が起きることを予防しています。

一方、新型コロナウイルスに感染された患者さんの入院治療を受け入れることも大学病院としての使命と考えて取り組んでいます。当院ではクルーズ船受け入れ事業の経験を生かし、新型コロナウイルス感染症については専用病棟に専門チームを配置することで、一般の診療とは完全に分離してケアが行える体制を確立しています。感染者を積極的に受け入れることで病院としての対応能力を磨き、もし感染の第二波、第三波が訪れた場合にも十分に受け入れ要請に応えることができるよう備えています。

更新:2022.03.08