統合失調症の集学的治療

藤田医科大学病院

精神科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

統合失調症とは

統合失調症は、約100人に1人が発症する一般的な精神疾患です。多くの患者さんは10~20歳代で発症しますが、女性は閉経期前後で発症することもあります。

誰もいないのに声が聞こえる、誰かに支配されている、他人から被害を受けている、場に合った感情の表出ができない、意欲が出ない、集中力が保てない、などの症状が出現します。治療によってこれらの症状が改善しても、治療を中断すると高い確率で再発することが知られています。そのため、統合失調症は継続的治療が必要です。

治療は、診療ガイドラインや最新の信頼のできる研究結果に基づいて行うことが推奨されています。統合失調症の治療法は、薬物治療(主に抗精神病薬)と非薬物治療(主にパルス波治療機による修正型電気けいれん療法)に大別されます。

統合失調症の薬物治療

薬物治療の大黒柱は抗精神病薬です。抗精神病薬は、激しい症状を改善するだけでなく、再発予防効果もあります。一般的な症状を改善した薬を、再発予防のために、症状が治まった後も継続します。そのため、最初から患者さんの将来を見据えて主治医と一緒に安全性の高い薬を選ぶことが大切です。

各抗精神病薬には特徴的な副作用(手が震える、体が動きにくい、ソワソワする、眠い、太る、口が乾く、月経が来ない、勃起しないなど)があります(図1)

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図1:抗精神病薬の副作用

薬の形(剤型)

薬の形には錠剤、液剤、舌下錠(ぜっかじょう)、貼付剤、持効性注射薬などがあります(図2)。患者さんの嗜好や生活に合った剤型を選ぶことができます。

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図2:抗精神病薬の薬の形

例えば、錠剤、液剤、舌下錠、貼付剤は毎日服用する(貼り変える)ことが必要ですが、持効性注射薬は薬の種類によりますが、2~4週間分の薬を一度におしりか肩に注入する治療方法です。薬の飲み忘れを心配する必要がなくなります。このような剤型の違いについても、患者さんのご希望を主治医に伝えてください。

クロザピン

複数の抗精神病薬で治療したのに、十分な効果が得られなかった患者さん(治療抵抗性統合失調症と呼ばれます)にはクロザピンという薬があります。クロザピンは治療抵抗性統合失調症患者さんに有効であることが科学的に証明されている唯一の薬です。

一方でクロザピンは心臓や血液細胞などへの命にかかわる副作用が知られており、厳格なルールに則った使用が義務付けられています。

パルス波治療機による修正型電気けいれん療法

パルス波治療機(写真)による修正型電気けいれん療法は、通電により脳内にけいれん発作を起こし精神症状の改善を図ります。実際に患者さんがけいれんしないように、手術室で全身麻酔をかけ、患者さんの健康状態をしっかり観察しながら行います。

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写真:パルス波治療機

この治療方法は、薬物治療の効果が待てないような緊急性のある患者さん、薬物治療に効果不十分な患者さんに対して科学的に有効性が証明されている治療方法です。

統合失調症と診断されたら

長期的な薬物治療が必要になることが多いので、安全性の高い薬を選ぶことが大切です。ご自身の健康状態に注目し、「おかしいな?」と感じたら主治医に相談してください。また、さまざまな薬の形がありますので、患者さんの生活スタイルにあった薬の使用方法を見つけてください。もし、治療を受けているにもかかわらず症状の改善がない患者さんは、まず、規則的に服薬できているかを確認してください。服薬忘れがあるようなら、持効性注射薬に切り替え、それでも症状の改善がない場合は、修正型電気けいれん療法やクロザピンの使用も検討されるのが良いと思います。

私たちは、国内の統合失調症診療ガイドラインの作成にかかわっており、また、ガイドラインに使用されるような研究を日々行っています。当院では、前述した治療を行っています。お困りのことがありましたら、いつでもご相談ください。

更新:2024.10.07