臓器移植

藤田医科大学病院

臓器移植科

愛知県豊明市沓掛町町田楽ヶ窪

当院は日本の移植医療の中心的施設です!

当院は膵臓(すいぞう)、腎臓(じんぞう)移植の認定施設であり、ともに国内有数の症例数を誇ります。特に膵臓移植は国内の18認定施設のうち、全国1位の症例数です。当院は移植医療の専門科である当科に加えて、移植医療に特化した臓器移植センター病棟を備えています。入室された患者さんには移植医療において経験豊富なスタッフがきめ細やかなケアを行っており、質の高い医療を提供しています。

腎臓移植について

腎臓移植は何らかの病気により腎臓の機能が低下した慢性腎不全に対する治療法です。慢性腎不全の治療にはほかにも血液透析や腹膜透析がありますが、腎臓移植は生活の制限(食事の制限や治療に伴う時間の制約など)がなく、医療経済的に安価であることが利点です。

腎臓移植は臓器を提供される方(ドナー)により2つに分かれます。1つは健康な近親者から腎臓をいただく生体腎移植、もう1つはお亡くなりになった方からいただく献腎(けんじん)移植です。当院ではどちらの移植も可能です。生体腎移植を希望の場合は、ドナーとなることを希望される方とともに受診してください。献腎移植を希望の方は、受診後に日本臓器移植ネットワークの登録を行い、移植に向けて待機をしていただきます。献腎移植の登録から移植までの平均待機期間は約15年と非常に長いため、早期の移植を希望される場合は生体腎移植をお勧めします。

腎臓は腰骨の近くに移植します(図1)。移植手術後約1か月の入院が必要です。移植後は免疫抑制薬の内服が必要となりますが、日常生活の制限はほとんどありません。国内の腎移植成績は良好で、生体腎移植の5年生着率(移植後5年時に移植した腎臓が機能している割合)は94.3%です。移植を希望される患者さんは当科に相談してください。

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図1:腎移植。ドナーの腎臓の血管と尿が流れる管(尿管)をそれぞれつなぎます

負担の少ない生体腎ドナー手術

当科では、生体腎移植のドナーの方々の体への負担を少なくするよう内視鏡システムを使用して手術を行っています(写真1)。まず側腹部に1cm程度の傷を3か所置き、トロッカーと呼ばれる筒を挿入します。トロッカーの孔(あな)から内視鏡、手術器具を挿入し手術を行います。内視鏡システムを使用することで手術創(そう)を小さくすることができます。腎臓は拳(こぶし)程度の大きさがありますので、腎臓を体外に取り出すために最終的には7~9cmの創(きず)が必要となりますが、当院では正面からは見えにくい側腹部に置いています(写真2)。手術後5日目に退院できます。

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写真1:内視鏡手術は画面を見ながら行います。トロッカーの孔(あな)から手術器具を挿入します
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写真2:生体腎ドナー手術後の創部。手術の傷はわき腹に作るため、正面からは見えません

当院で行っているこの術式の利点は、筋肉を切らずに腎採取を行うため術後の疼痛(とうつう)が軽減されることと、傷が正面から見えないために美容的に優れていることです。

膵臓移植について

膵臓移植は、主に1型糖尿病や膵全摘出後でインスリン分泌がほとんどない患者さんを対象とした医療です。移植した膵臓が血糖値に合わせてインスリンを分泌するため、インスリン製剤を使用しなくても血糖値の安定が期待できます。慢性腎不全を伴っている患者さんは、膵臓と腎臓の同時移植を行います。

膵臓移植もドナーにより生体移植、脳死下(もしくは心停止下)移植の2つに分かれます。当院ではどちらの移植手術も可能ですが、生体移植は保険適用ではないため自費診療となります。国内の膵臓移植の大半は脳死下移植ですが、その場合は献腎移植と同様に日本臓器移植ネットワークへの登録が必要となります。登録から移植までの平均待機期間は約3.5年です(移植手術を希望する施設により差があり、当院での平均待機期間は2.7年です)。

膵臓移植も腎臓移植と同様に腰骨の近くに移植します(図2)。膵臓と腎臓の同時移植の場合は、左右の腰骨の近くにそれぞれ移植します。移植後は腎臓移植と同様に免疫抑制薬の内服が必要となりますが、日常生活の制限はほとんどありません。国内の脳死下膵臓移植の5年生着率(移植後5年時に移植した膵臓が機能している割合)は79.0%です。移植を希望される患者さんは当科外来に相談してください。

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図2:脳死下膵臓移植。ドナーの膵臓と十二指腸の一部を移植します。血管、腸とつなぎます

画期的な移植医療――膵島移植

膵島移植は膵臓移植と同様に、インスリン分泌が枯渇している患者さんを対象とします。ドナーからいただいた膵臓の中の膵島組織(インスリンを分泌する細胞が含まれています)を分離して、門脈という血管から点滴投与し移植します。膵島移植は全身麻酔も必要なく低侵襲です。国内でも受けられた患者さんがいますが、インスリン製剤を使用せずに生活されています。2020 年4月より保険収載され、当院でも行えるよう準備をしています。

更新:2022.03.08