正しく知って、うまく付き合う糖尿病ってどんな病気?
山梨大学医学部附属病院
糖尿病・ 内分泌内科
山梨県中央市下河東

糖尿病とは?
糖尿病は、インスリンが作られない、または十分に効かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓(すいぞう)で作られ、血液中を流れて血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。

血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気につながります。また、血糖値が著しく高いと、それだけで意識を失ったり命を落としたりすることがあります。血糖値がかなり高くなければ症状が現れないため、血液検査などで血糖値を確認しないと、糖尿病の発見が大きく遅れることがあります。
なぜ、糖尿病になるのでしょうか?
糖尿病の代表的なタイプとして、1型と2型があります(図1)。1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓の細胞(ベータ細胞)が突然壊れてしまい、インスリンがほとんど分泌されなくなることで、血糖値が高くなります。

原因は不明な点もありますが、本来体を守るために働くはずの免疫が、何らかの要因で誤ってベータ細胞を標的にして破壊してしまう「免疫異常」が一因といわれています。子どもや比較的若い方に発症することが多く、ほとんどの場合、生活習慣は関係がありません。
2型糖尿病は、体質的な要因に加え、食べすぎや運動不足などの生活習慣の影響でインスリンが作られにくくなったり、インスリンが作られても効きにくくなったりして、血糖値が高くなります。1型糖尿病より太っている患者さんが多いことが特徴です(図1)。
1型は糖尿病全体の5%程度、残りの大多数は2型糖尿病です。今や、中高年の3人に1人が2型糖尿病、またはその予備軍といわれています。
なぜ、血糖値が高いといけないのでしょうか?
血糖値が高い状態が長く続くと、気づかないうちに全身の血管がじわじわと痛んでいきます。血管が痛むと血管から栄養を受けている部分の働きが障害され、体のあちこちの働きが低下します。これを糖尿病の「合併症」といいます。
代表的な合併症は、「神経」(慢性的な手足のしびれ、たちくらみなど)、「眼」(視力低下・失明)、「腎臓」(人工透析)、「太い血管」(脳・心筋梗塞(しんきんこうそく))であり、最近では認知症やがんの危険にもつながると考えられています(図2)。

症状がなくても、健康診断などで糖尿病を早期発見し、合併症を防ぐために血糖値を良好な状態に保つ必要があるのです。
どのように糖尿病と付き合っていくのでしょうか?
糖尿病の多くは、原因を取り除いて完治させることが困難です。したがって、糖尿病を「治す」のではなく、血糖値を良好な状態に保ち合併症を進行させないよう、糖尿病とうまく「付き合う」ことが大切です。
糖尿病とうまく付き合う基本は、食事、運動、薬の3本柱です。生活習慣の改善を進めながら、めざすべき血糖値の目標に達しないときには、薬を使用します(図3)。特に、太っている方は減量することで大きく血糖値を下げられることがあります。うまく付き合うことができれば、糖尿病は決して怖い病気ではありません!

糖尿病の多くは自覚症状がないため、病院への通院をやめてしまう方がいます。そして、血糖値が著しく高くなり、合併症が大幅に進んだ状態で体調を崩して、受診する方が後を絶ちません。時には、回復が不可能で生命の危険を伴う深刻な合併症が出現し、患者さんの人生が大きく変わってしまうこともあります。決して自分の判断で通院をやめないことが、結果として糖尿病とうまく付き合うことにつながります。
更新:2024.04.26