その体重減少、バセドウ病かも!?

山梨大学医学部附属病院

糖尿病・ 内分泌内科

山梨県中央市下河東

バセドウ病とは?

バセドウ病は、甲状腺で作られる「甲状腺ホルモン」が過剰になる病気です。甲状腺ホルモンは体温を調節したり、脳や心臓、胃腸の働きを活性化しており、その量は「TSH」という物質の量に応じて、一定の範囲に調節されています。

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しかしバセドウ病では、TSHの働きに似た抗体(抗TSH受容体抗体)が体の中で作られ、甲状腺ホルモンが過剰に作られます。そのため、暑がり、汗をたくさんかく、疲れやすい、手足のふるえ、ドキドキ、体重減少などの症状が出現します。眼が突出したり、物が二重に見えたりすることもあります。診断は、血液検査と画像検査を組み合わせて総合的に行います。治療は、薬物療法、手術療法、アイソトープ治療があります。

バセドウ病の症状

バセドウ病の主な症状を「図1」に示しました。バセドウ病の症状を大きく分けると、甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)、甲状腺中毒症、眼症(がんしょう)の3つに分類されます。それぞれについて説明していきます。

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図1 バセドウ病の症状

甲状腺腫とは、甲状腺が腫(は)れている状態です。バセドウ病の患者さんは、甲状腺が全体的に腫れることが多いです。

甲状腺中毒症の症状には、脈拍が速くなる、汗をたくさんかく、疲れやすい、ドキドキ、手足のふるえ、息切れ、体重減少、下痢などがあります。

しかし、高齢の方は、これらの症状が出ず、食欲が低下したり、不整脈や心不全などの合併症から診断されるケースがあります。子どもでは、落ち着きがない、学業成績の低下、運動能力の低下、身長促進から診断されるケースがあります。

バセドウ病の眼症では、眼が突出する(眼球突出)、まぶたが腫れる(眼瞼腫脹(がんけんしゅちょう))、眼が大きくなる(眼瞼後退)、物が二重にみえる(複視(ふくし))、寄り眼ができない(輻輳困難(ふくそうこんなん))といった症状が出ることがあります。

バセドウ病の診断

健康診断や病院で通常行う血液検査では、甲状腺関連の項目を測定しないことのほうが多いです。早期診断のためには、前述のような症状が出たらバセドウ病を疑って、早めに病院へ相談することが重要です。

血液検査

甲状腺ホルモン(FT3やFT4)が上昇し、下垂体(かすいたい)という臓器から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低下します。前述の抗TSH受容体抗体、または刺激抗体が陽性となります。

甲状腺超音波検査

甲状腺が大きくなり、甲状腺内の血流が増加します(図2、3)。

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図2 標準的なバセドウ病超音波(エコー)画像;甲状腺内の低エコー領域(黒いところ)は、異常増殖した血管と小濾胞によるものです
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図3 標準的なバセドウ病超音波(エコー)画像 ドプラー

(図2、3 出典:長崎甲状腺クリニックホームページ「甲状腺超音波(エコー)検査」、https://www.nagasaki-clinic.com/basedow_examination/#us、閲覧日2022年6月2日)

シンチグラフィ

放射性ヨードのカプセルを飲み、一定時間経過したところで、甲状腺にどのくらい放射能が取り込まれたかを調べる検査です。甲状腺にびまん性取り込みと甲状腺摂取率高値を認めます(図4)。

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図4 シンチグラフィ:びまん性取り込みのイメージ画像

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療には、薬物療法、手術療法、アイソトープ治療の3つの選択肢があります。それぞれについて説明していきます。

薬物療法
甲状腺ホルモンが作られることを抑える、抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)という薬を内服します。そのほかに、ヨウ化カリウムという薬を併用すると、速やかに甲状腺ホルモンが低下することがあるため、使用する場合もあります。

抗甲状腺薬はバセドウ病には欠かせない薬ですが、さまざまな副作用があり、注意が必要です。主な副作用に、蕁麻疹(じんましん)、肝機能障害、筋肉痛、関節痛、発熱、無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)等があります。

この中で無顆粒球症は重大な副作用で、白血球(好中球)という免疫機能を担う細胞が低下し、免疫力が落ちてしまう病気です。さまざまな感染症に罹(かか)るリスク落ちてしまう病気です。さまざまな感染症に罹かかるリスクが高くなるため、入院での治療が必要です。無顆粒球症は、抗甲状腺薬を開始後3か月以内に発症することが多いといわれており、この間は2週間おきに血液検査で白血球の数値を調べることが推奨されています。

手術療法
当院では、甲状腺全摘出術を行っています。
アイソトープ治療
放射性ヨウ素を内服し甲状腺を破壊することにより、甲状腺ホルモンを低下させます。

手術療法やアイソトープ治療では甲状腺ホルモンが低下するため、甲状腺ホルモンの補充が生涯必要になります。

患者さんの状態に合わせて治療法を決定しますが、一般的に、まずは薬物療法を開始し、なかなか薬を中止できない方や薬の副作用が出てしまった方は、手術療法やアイソトープ治療を選択することが多いです。

3つの治療法の長所と短所を「表」に示しました。

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表 3つの治療法の長所と短所

生活習慣で気をつけることは、甲状腺ホルモンが高いときは、激しい運動を控えること、ストレスをためないこと(難しいですが)、しっかり休息をとること、禁煙をすることです。喫煙でバセドウ病が治りにくくなったり、眼症が増悪したりするといわれています。

更新:2024.04.26