女性に多い膠原病/全身性エリテマトーデスの診療最前線

山梨大学医学部附属病院

リウマチ膠原病内科

山梨県中央市下河東

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデス(SLE)は、膠原病(こうげんびょう)の1つであり、女性に多い疾患です。特に20〜40歳代の発症が多く、妊娠可能な年齢の女性に多いという特徴があります。

SLEでは、発熱や全身倦怠感のほか、関節の腫(は)れや痛み、皮膚症状、脱毛など、多彩な症状が全身に現れます。腎臓(じんぞう)や神経系など、臓器に重篤な障害を及ぼすこともあります。

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近年では、SLEに対する新しい治療薬が登場し、治療法は進歩しています。症状や重症度に応じて治療薬を選択し、病気の症状がほとんどない状態をめざします。病気と上手に付き合うために、適度な運動やバランスのよい食事など、日常の自己管理も大切です。

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状

膠原病とは、皮膚や関節、血管、内臓など、さまざまな場所に炎症・変性を起こす病気の総称で、単一の病気を示す病名ではありません。免疫の異常が関与していることが多く、SLEのほかに、関節に痛みや腫れが出る関節リウマチなどがあります。SLEは、圧倒的に女性に多く、男女比は1:9とされています。すべての年齢で発症しますが、特に20〜40歳代の妊娠可能な年齢の女性に多い病気です。

SLEの症状は非常に多彩です。「全身性」という名の通り、発熱や皮膚の発疹、脱毛、関節の痛み、リンパ節の腫れなどのほか、腎臓や神経、肺、心臓、胃腸、血液に至る、さまざまな臓器に障害が現れることがあります(図1)。しかし、これらの症状が一人の患者さんにすべて現れるわけではありません。個人により症状の出方や程度には幅があり、日常生活に支障をきたさない軽症な方から、生命を脅かす重篤な内臓障害を起こす方までいます。

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図1 SLEの主な症状

SLEの診断方法

SLEの診断は、症状に対する問診と診察に検査を組み合わせて行います(図2)。症状が非常に多彩なため、診断が難しいこともありますが、最も大切なことは、詳細な問診と診察により症状を把握することです。これに加えて、血液検査や尿検査を行い、免疫の異常を示す結果の有無や、臓器障害の程度を調べます。症状に応じて、超音波検査やX線撮影、CT検査を行うこともあります。

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図2 診断と治療のながれ

皮膚や腎臓の病変が疑われる場合には、体の組織の一部を針やメスで採取(生検)して、組織の状態を調べることもあります。特に、ループス腎炎と呼ばれる腎臓の病変は、SLE患者さんの半数以上にみられるとされており、尿検査や腎生検が必要になります。これらの結果を総合的に判断し、SLEによく似た症状を起こす病気を除外したうえで、確定診断を行います。

SLEに対する治療

治療の概要

SLEの治療では、症状や臓器障害の程度、年齢、併存するほかの病気などを考慮して、治療の方法を決定します。薬物療法が基本になりますが、使用する薬剤の種類や量などは、個々の患者さんで異なります。治療を開始したら、症状や検査結果をみながら、効果の療を開始したら、症状や検査結果をみながら、効果の有無を判断し、薬剤の種類や量を変更しながら、病気の症状がほとんどない状態(寛解(かんかい))をめざしていきます(図3)。

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図3 治療の目標

薬物療法(図2)

副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)や免疫抑制薬、免疫調整薬(ヒドロキシクロロキン)を組み合わせて治療を行います。これらは炎症や免疫異常を抑える効果があり、重症度に応じて薬剤の用量と種類を選択します。

初期は複数の薬剤を使用して、病気の状態を沈静化させることをめざしますが、長期の薬剤使用により副作用が出ることもあるため、状態が安定化したら徐々に薬剤を減らしていきます。かつてはステロイドだけに頼った治療を行うことが多かったのですが、より良い治療効果を得るためや副作用の観点から、免疫抑制薬やヒドロキシクロロキンを積極的に使用し、早期のステロイド減量を図ります。

近年では、SLEの免疫異常を引き起こす物質(サイトカイン)を標的にした分子標的薬が開発され、治療は年々進歩しています。

妊娠と出産

治療法は向上してきましたが、妊娠・出産がSLEの状態に影響することはまれではありません。

しかし症状が安定し、一定の条件を満たせば、妊娠・出産は可能です。母体や胎児にリスクがないわけではありませんが、しっかり治療をしながら妊娠計画を立てることが重要ですので、妊娠を考える際は、担当医や家族とよく相談していきましょう。

更新:2024.04.26