脂肪肝専門外来の開設

山梨大学医学部附属病院

消化器内科

山梨県中央市下河東

脂肪肝とは?

近年、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝疾患による肝臓がんの発生は減少傾向にありますが、代わりに脂肪肝が原因の肝臓がんが増加しています。脂肪肝が原因の肝臓がんは、定期的な検査を受けておらず発見が遅れるケースもあり、肝臓がんとなるリスクのある脂肪肝の発見が重要になっています。

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肝臓がんや肝硬変になる危険な脂肪肝は、肝臓に硬さが生じています。血液検査や画像検査で肝臓の硬さを調べることが、肝臓がんや肝硬変予防につながるため、脂肪肝と診断された場合は、自分の肝臓の硬さを検査することが大切です。

脂肪肝の原因

脂肪肝は、食べすぎやお酒の飲みすぎ、肥満、糖尿病などの生活習慣に伴うものや、ホルモンの異常、ステロイドなどの薬物が原因で、肝臓に脂肪が溜(た)まった状態のことをいいます。健康診断の超音波検査で、腎臓(じんぞう)と比べて肝臓が白く映る、肝臓の血管が見えにくくなる、肝臓の奥が見えないことから診断されることが多いです。

近年では、C型肝炎やB型肝炎に良い薬が開発されたことにより、ウイルス性肝炎による肝臓がんの発生は減少傾向にありますが、過食、運動不足が目立つ現代では、脂肪肝を原因とした肝臓がんが多くなっています。ただし脂肪肝のほとんどは肝臓がんや肝硬変に進行しないことが知られており、肝臓がんのリスクとなる脂肪肝を発見することが重要となります。

危ない脂肪肝は肝臓が硬い

では、どのような脂肪肝が肝臓がんや肝硬変のリスクとなるのでしょうか?肝臓は、食べすぎや飲みすぎで脂肪が溜まり、脂肪肝となります(図1)。ここで脂肪肝患者さんの25%が、肝臓に炎症が生じます。炎症が生じると、徐々に肝臓は硬くなり始め、年月を経て肝硬変となり、肝臓がんが発生するといわれています。

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図1 危ない脂肪肝の経過

お酒を多く飲まない患者さんで、このように脂肪肝に炎症が生じ、肝臓が硬くなる疾患を、NASH(ナッシュ:非アルコール性脂肪肝炎)と呼んでいます。NASHの特徴は、肝臓に炎症や硬さがあることですが、肝臓の炎症は血液検査や超音波などの画像検査ではわかりません。そこで重要となるのは、肝臓の硬さになります。肝臓の硬さは血液検査やエコー、MRIなどの画像検査で調べることができるため、NASHの発見にはとても重要です。

脂肪肝外来の役割

2018年8月に開設した脂肪肝外来では、患者さんの肝臓の硬さに注目しています。以前の肝臓の硬さの検査は、肝臓に針を刺して組織の一部を取り出し病理検査に出す、肝生検という痛みを伴う検査しかありませんでした。しかし最近では、超音波やMRIなどによる硬さの検査でも、肝生検と同様の検査結果が出ることが知られています。

超音波の原理を用いたフィブロスキャンは、5分程度の検査で、痛みがなく肝臓の硬さと脂肪量を測定することが可能です。MRIでは、MRエラストグラフィという検査があります(図2、写真)。これは体の外から振動を伝え、その様子をMRIで撮影する検査で、20分程度で、より正確な肝臓の硬さと脂肪量がわかります。

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図2 MRエラストグラフィ
体外の板を振動させMRIを撮影することで、肝臓の硬さが正確に数値として算出されます
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写真 MRエラストグラフィの撮影

脂肪肝外来ではフィブロスキャンやMRIを用いて、患者さんの肝臓が危ない脂肪肝かどうか判定していきます。同時に栄養士による日々の食事、運動、飲酒状況の聞き取り、体組成計(体成分分析装置)による筋肉量の検査、また採血ではほかに治療すべき合併症がないかを検討し、総合的に脂肪肝の改善をサポートしています。

かかりつけ医との関係も重視し、もし薬の変更が望ましいと判断した場合には、かかりつけ医に連絡をとります。健康診断結果でわかる肝臓の硬さの検査、フィブフォー(FIB-4index)が1.3以上の場合は、肝臓が硬い可能性がありますので、一度かかりつけの医師にご相談ください(図3)。

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図3 フィブフォー(FIB-4 index)の計算式

更新:2024.04.26