がん細胞を見逃さない病理診断

山梨大学医学部附属病院

病理部

山梨県中央市下河東

細胞からできている私たちの体

私たちの体は、およそ37兆個の細胞からできています。その一つひとつは、顕微鏡を使わないと見えない大きさです。そのような細胞が、それぞれに決められた仕事をしてくれるおかげで、健康に生活していくことができています。

ところが、さまざまな要因で、秩序を無視し自由に増え続け、最終的には私たちの命を奪ってしまう細胞、すなわち「がん細胞」ができてしまいます。

細胞には、私たちのように顔があります。もちろん、細胞に目や鼻はありませんが、細胞の顔つきの変化(形の変化)を顕微鏡で捉え、「良い細胞(良性細胞)」と「悪い細胞(がん細胞)」を区別しています。そうすることで、たくさんの細胞の中から、少数のがん細胞を見逃すことなく見つけ出すことができています。

細胞診断のスペシャリスト

「がん」を診断する方法に、病理細胞診断と病理組織診断の2種類があります。病理組織診断は、実際のがん細胞を直接採取することで最終的な診断を行いますが、がん細胞を見逃さないという目的では、病理細胞診断が担う役割が大きいです。病理細胞診断は、体に溜(た)まった水や喀痰(かくたん)(排出された痰)を採取したり、子宮腟部(しきゅうちつぶ)を擦ったりすることで得られ、患者さんに対して痛みの少ない検査です。

前述のとおり、細胞には顔つきがあり、良悪の区別をつけることで診断をしています(写真)。その診断において、細胞検査士という細胞診断のスペシャリストが活躍しています。1枚のスライドガラス上から、がん細胞を見つけ出し、病理医とともに診断をしています。患者さんの体から採取されたわずかながん細胞を見逃さず、健康と命を守るため、がんの早期発見に貢献すべく、研鑽に励んでいます。

写真
写真 実際の細胞像
左:正常扁平上皮細胞、右:扁平上皮がん

精度の高い「がん」診断

当院は、地域の中枢病院としての役割を担っています。それは病理診断においても変わりません。検診などで悪性を疑われた患者さんの精査を行うことが多く、「がん」を疑う場合は確定診断することが求められます。患者さんの治療やその後の人生に大きくかかわる部分であり、誤診や過剰診断がないように、ダブルチェック(2人以上で診断し、誤りがないかの確認)を行い、診断精度を高めています。

また、病理部は国際品質規格(ISO15189)による臨床検査室認定を受けています。そのため、すべての患者さんの検体が決められた手順に従い、等しく取り扱われることで、信頼性の高い病理診断が行われています。

さらに、近年、ゲノム医療という患者さん一人ひとりに特別な医療(分子標的薬などの治療効果の高い医療)を提供するうえで、病理組織の検体精度、診断精度が求められています。病理部では、そのようなレベルの高い施設であるために、日々努力しています。

更新:2024.04.26