手術療法 がんに対する外科的治療
四国がんセンター
婦人科
愛媛県松山市南梅本町甲
がんに対する手術療法は、紀元前のヒポクラテスの時代から検討されており、19世紀半ばに全身麻酔が確立したころから急速な進歩を遂げ、がん治療の中心に躍り出ました。最近では、がんの進み具合を正しく評価するための病期診断、機能温存のための工夫、手術に化学療法や放射線療法を組み合わせた治療、内視鏡やロボットを利用した体への負担が少ない手術など、日々進歩をしています。
がん専門病院での手術
がん専門病院では「がんの手術」を行います。外傷や良性腫瘍(しゅよう)の手術との違いは、①がん病巣から十分離れた部位で切除する、②がん病巣周囲のリンパ節に病気(転移)が認められることがあるので、病巣とリンパ節を塊で一括して取り除く、③周囲の臓器にがんが浸潤(しんじゅん)していることがある場合は、その臓器も一緒に取り除く、④転移を防ぐため、がん病巣は直接触らない、などです。
がんの手術はその目的によって、大きく2つに分けられます。治癒を目指した根治(こんち)手術と、症状や病態の改善を目的とした緩和手術です。根治手術は、リンパ節や周辺の臓器を一緒に取り除くなど、完全にがんを除去することを目指します。一方、緩和手術はがんを完全には取り除けませんが、手術によってがんによる苦痛や症状を取り除く目的で行われます。
機能温存と低侵襲手術
最近では、健診の普及や診断技術の向上により、がんが早い段階で見つかる機会が増えてきました。早期のがんに手術療法を行うことは大変有効ですが、進行がんと同じ手術では、体に大きな負担を与えるだけで何らメリットがありません。つまり、がんを治すためがんを臓器ごと取り除くことは、その臓器の機能を失うことになります。そこで早期のがんで、がんと小範囲の組織のみを取り除き、臓器の機能を残すこと(機能温存)ができれば、体に対する負担も少ない治療といえます。
例えば、早期のリンパ節転移の可能性の極めて少ない大腸がん、胃がん、食道がんでは、大腸や胃、食道を取り除くことなく、内視鏡でがん病巣だけを取り除く方法が一般的になってきました。子宮頸(けい)がん、体がんでは子宮を残して、妊娠出産できる能力(妊よう性)を温存できる治療も検討され、これらは当院でも実施しています。
また、体に対する負担も少ないがん治療といえば、最近、小さい傷で行う腹腔鏡(ふくくうきょう)や胸腔鏡(きょうくうきょう)を用いたがん手術(低侵襲手術)が実施されています。傷が目立たないこと以上に、出血量や手術による癒着が少なく、入院期間も短期間で早期の社会復帰が可能になりました。スコープを用いて、狭くて直接は観察できない体の奥深くまでアプローチでき、病巣を拡大して観察できるため、より精度の高い手術が可能になります。最新では、ダビンチなどロボットを利用したより精度の高い手術の導入が、がん治療の現場で行われています。これらの新しい治療には、従来からのがん手術の専門的な知識や経験をもとに、さらなる知識と手術操作の習熟が求められます。
当院では、従来からのがん手術の内容や治療成績を損なうことなく、これら新しい手術を積極的に導入し、行っています。
手術を用いた集学的治療
手術はがん治療の大きな柱の1つですが、進行がんの治療には、手術療法だけでは限界があります。そこで手術と化学療法、放射線療法を組み合わせた、いわゆる集学的治療が行われています。
例えば、まず化学療法を行い、全身状態やがん病巣をコントロールしてから手術で取り除いたり、手術後に放射線療法や化学療法を追加したりして、がんの治癒を目指します。進行がんの治療には手術、放射線、化学療法など、がん専門病院の専門知識を総動員して、個々の患者さんの状況に合わせた治療を個別に実施しています。
更新:2024.10.10