食道がんと闘う 手術だけではない、病状にあわせたさまざまな治療法について

四国がんセンター

消化器外科

愛媛県松山市南梅本町甲

食道がんの外科手術は大手術です

食道は、口から胃袋までをつないでいる長さ25cm位のホース状の臓器です。ここに進行した食道がんができると、食べ物が飲み込みにくくなったり、痛みが出たりします。食道にがんができたと聞くと、「手術で切除するのかな?」と考えると思いますが、ちょっと待ってください。

食道がんの外科手術では、首、胸、お腹(なか)に傷が入り、食道のほぼ全部を切除する必要があります(図1)。そして胃を首まで持ち上げて、首の食道と胃をつなぐという大手術です。体に負担を与えますから、その患者さんにとって本当に外科手術が必要かどうかを見極めることが大切です。

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図1 食道がんの手術方法

早期の食道がんを外科手術以外の方法で治す

検診などで見つかることが多い早期の食道がんでは外科手術を受けても、外科手術以外の方法で治療しても5年後に生きている確率はほとんど変わらないことが分かってきました。早期の食道がんに対する外科手術以外の方法は2つあります。

1つ目は、胃カメラの先端から小さなメスを出して患部をそぎ取る治療です(ESDといいます、図2)。そぎ取った患部は口から取り出すため、体に傷が入ることはなく、胃や食道の長さは変わらないので生活の質はほとんど変わりません。

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図2 ESDの方法

2つ目は、放射線と抗がん剤を同時に使って食道がんを根治(こんち)させる方法があります。1か月半ほど治療にかかりますが、ほとんどの患者さんの食道がんが消失します。もしも、治療後にがんが再発しても外科手術(サルベージ手術といいます)で切除できる場合があります。サルベージ手術は、通常の外科手術と違って難しい手術なのですが、十分な経験がある病院で受ければ、安全に病変を切除することができます。

進行した食道がんが外科手術で治るかどうかを見極めます

自覚症状などで見つかることが多い進行した食道がんには、「根治が可能ながん」と「根治が難しいがん」があります。この2つのがんを見極めるのは容易ではありません。

このような場合、当院では、すぐに手術することはなく、まず抗がん剤治療を2回ほど繰り返して、検査でがんが大きくなったか、小さくなったかを調べます(術前化学療法といいます、図3)。もしも、がんが小さくなったときや大きさが変わらないときは、「根治が可能ながん」と判断して手術で悪いところを切除します。逆にがんが大きくなって近くの臓器に広がったり、他の臓器に転移が出ていたりすれば「根治が難しいがん」と診断して、手術はせずに放射線や抗がん剤を使って病気をコントロールします。「根治が難しいがん」は、これらの治療で完全に治すのは難しいですが、これ以上病気を進行させないようにして、生活の質も保つように治療していきます。

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図3 術前化学療法

外科手術になっても傷の小さな体にやさしい方法があります

最終的に外科手術を受けることになっても、胸を大きく切開してがんを切除することは少なくなりました。大きく胸を切って手術する方法(開胸手術といいます、図4)と違って、胸に1cm程度の小さな傷を5個位開けて、長いピンセットやメスを入れて患部を切除します(胸腔鏡手術といいます、図4)。傷の痛みが少なく、肺炎などの合併症を減らして術後の回復も早いといわれています。

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図4 開胸手術と胸腔鏡手術の創部

胸腔鏡手術は最新の治療であり、十分な経験がある病院で受ければ、小さな傷で患部を安全に切除できます。もしも外科手術になったとしても、安心して手術を受けてください。

更新:2024.01.25