高次脳機能障害
肥前精神医療センター
精神科
佐賀県神埼郡吉野ヶ里町三津

どんな病気?
脳が種々の原因によって損傷を受けて、後天的にさまざまな認知機能(注意・記憶・遂行機能)や情動・行動に障害が生じた状態を指します。主な原因には、脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血などの脳血管障害や、交通事故や転落などによる脳外傷、脳炎・髄膜(ずいまく)炎などがあり、これらの後遺症として現れます。深い意識障害から回復してからは一見元通りの状態に戻ったように見えることもあるので、"見えない障害"と呼ばれることもあります。
症状
代表的な症状は注意・記憶・遂行機能・社会的行動の障害
代表的な症状は、「注意障害」、「記憶障害」、「遂行機能障害」、「社会的行動障害」の4つです。注意障害では、注意力が散漫になってミスが多くなったりします。記憶障害では、新しいことが覚えられなくなったり、最近の出来事を思いだせなくなったりします。遂行機能障害では、理解・判断や計画に基づいた行動がうまく行えなくなったりします。社会的行動障害では、コミュニケーションがうまくいかなかったり、怒りっぽくなったり、衝動的な行動をとったりします(図1)。

検査・診断
行動観察や種々の検査で評価損傷部位を画像検査で確認
大脳の働きは部位によって異なっており、それぞれが異なった機能を持っています。どこの部位が損傷するかによって失われる機能が異なります。診断・評価にあたっては、日常生活の聞き取りや直接の行動観察を通じて、注意・記憶・遂行機能・社会的機能がうまく働いているかを判断します。注意・記憶・遂行機能にはそれぞれ特有の神経心理学的検査(課題に対して回答する検査)も行います。実際の脳の状態をみる画像検査(CT,MRI,脳血流検査など)も必要です(図2)。

交通事故などによる脳外傷や脳梗塞などの脳血管障害が高次脳機能障害の原因として多い
治療と経過
発症1年以内のリハビリが重要それ以降は症状が固定することも
一度損傷を受けた脳細胞は復活しませんが、それ以外の正常な脳細胞を活性化するためにリハビリテーションを行うことが重要です。高次脳機能障害にもさまざまな症状があり、それらを正確に評価してその内容に合わせたリハビリテーションを行うことで症状の回復を目指します。リハビリテーションは脳損傷による意識障害が改善した早期の段階から開始することが重要で、発症後1年くらいまでは著しい改善が見られることもよくあります。それ以降の改善は少なく、症状が固定していきます。
よくある質問
どこへいったら診断・評価してもらえるの?
高次脳機能障害を正確に診断・評価できる医療機関は限られています。各地に支援拠点機関が指定されていますので、そこに相談すると適切な医療機関を紹介してくれます。当院は佐賀県の地域支援医療機関に指定されています。
薬は効果がないのですか?
注意・記憶・遂行機能を改善させる薬は開発されていません。注意欠陥/多動性障害の治療薬を高次脳機能障害に対して用いることは一般的ではありません。しかし、社会的行動障害の中のいくつかの症状に対しては薬による治療が有効なこともあります。
症状をCHECK
※症状は人によりさまざまです
- □ ぼんやりしていてミスが多い(注意)
- □ 作業を長く続けられない(注意)
- □ 周囲の刺激に気が散って落ち着かない(注意)
- □ 新しい出来事を覚えられない(記憶)
- □ 物の置き場所を忘れる(記憶)
- □ 同じことを繰り返し質問する(記憶)
- □ 作業するときの段取りが悪い(遂行機能)
- □ 自分で計画を立てて実行することができない(遂行機能)
- □ 人に指示してもらわないと何もできない(遂行機能)
- □ 自己中心的になる(社会的行動)
- □ 興奮する、暴力をふるう(社会的行動)
- □ 元気がない、意欲がない(社会的行動)
更新:2026.08.14
