糖尿病・内分泌内科 日本の糖尿病診療の先頭を走る
中部ろうさい病院
糖尿病・内分泌内科
愛知県名古屋市港区港明
患者さんに伴走して
よく知られていることですが、糖尿病の治療で一番重要なことは、生活習慣を整えることです。
2型糖尿病では発症の原因の半分は遺伝的素因といわれますが、生活習慣も半分は影響しますし、治療開始後は食事と運動療法が治療の基本となります。患者さんに無理なく治療を続けてもらうため、あるいは地域の医院の先生方からの紹介患者さんに充分満足して戻ってもらうために、各種取り組みを行っています。
- 管理栄養士・看護師含め「多職種チーム」で個々の患者さんのさまざまな相談にのること。
- 糖尿病治療で重要な「HbA1c値の目標を達成」し、患者さんに満足してもらうこと。
- 個々に異なる患者さんの病状、体質、生活環境、仕事との兼ね合いに配慮して、患者さんと相談しながら治療を進めていく「個別化医療の実践」をすること。
- 国内で可能な「最先端の糖尿病診療技術」を絶えず活用し最善を尽くすこと。
これらの取り組みにおいては、私たち病院のスタッフと患者さんの共同作業となります。薬を増やして血糖を下げるだけでは効果は一時的となりますので、個々の患者さんの生活習慣を修正することも重要です。
患者さんの日常に寄り添って
現在、ほとんどの患者さんがスマートフォン(スマホ)を持っています。また診察時に患者さんに日常生活の聞き取りをしても、1か月前に何をしていたのか憶えていないのが普通です。そこで当院では2019年秋より無料の個人健康記録(PHR: personal health record)アプリ シンクヘルス®を診療に活用しています。
これは世界各国で現在52万人(日本で約12万人)に使用されているスマホアプリです。患者さんがスマホに同アプリをダウンロードして、患者さん自身の日常での多くのデータを収集し、スマホからクラウドに記録させます。日々測定した体重、血圧、血糖値あるいは食事内容や時間、さらには自動入力の歩数などがクラウド上に記録できます(図1)。
患者さん自身がそれを見て生活習慣を振り返ったり、自動応答のチャットボットを参考にしたりできます。Bluetooth(ブルートゥース)およびNFC(近距離無線通信規格の種類)、連携可能な血圧・体重・血糖測定機器が市販されており、測定結果の自動取り込みも可能です。
また、病院の医療情報システムとネットで連携することにより、医療機関からデータを参照することが可能となり、患者さんの日々の生活が「見える化」される結果、薬剤の調整のみならず効果的できめ細かい療養指導が可能となります。この機能は医院の先生方でも容易に活用可能ですので、共通のプラットフォーム(*)として病診連携に活用を計画しています。
*プラットフォーム:さまざまな技術の基盤
全国に先駆けてオンライン診療導入
また当科では、2018年よりMICIN社オンライン診療アプリcuron®を導入して、少数の患者さんを対象とし試験的に実施してきました(図2)。コロナ禍の感染予防対策として、厚生労働省のオンライン診療推進を受けて徐々に拡大しています。これは総務省のオンライン診療実証事業の一環でもあり、2018と2019年度に結果報告をしました。
糖尿病で安定している患者さんのみを対象とした実証研究ではありましたが、このときのアンケートでは90%の患者さんがオンライン診療に満足していると回答され、対面と比較しても満足度は変わらない結果となっています。医療の質に関しても、個人健康記録アプリの併用と、3か月ごとの対面診療と組み合わせることで担保できると考えています。
国内では当院のような総合病院において、このようなシステムの導入例はなく、先駆的取り組みとして評価されています。また、当院が以前から実施している治療と就労の両立支援の一環や、オンライン診療アプリのオプション機能として職場との連携も行っています(図2)。
糖尿病・内分泌内科の特徴
当科は、中部地方で最も早く糖尿病専門外来(1971〈昭和46〉年)を設置し、1987(昭和62)年にセンター化し、以後この地域の糖尿病診療のコア施設として糖尿病専門医を輩出してきました。
この伝統を踏まえ、現在でもICTを活用したチーム医療の推進や、新たに開発された薬および携帯端末の導入など、わが国では先進的な治療を積極的に取り入れている施設であり、個々の患者さんに最善の治療を提供できるよう取り組んでいます。
更新:2022.03.23