自己心膜を用いた大動脈弁形成術ー人工物を使わず、自分の体のものだけで大動脈弁を治せる

平塚市民病院

心臓血管外科

神奈川県平塚市南原

人工弁治療の問題点

大動脈弁の病気に対して、多くの施設では人工弁による治療しか選択肢がありません。特に、大動脈弁が狭くなる病気(大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう))では、人工弁を入れるのが唯一の治療です。しかし、金属で作られた機械弁では、血を固まりにくくする薬を毎日飲む必要があり、食物の制限があります。また、人工弁は、人によって、アレルギー、感染、体格に見合った弁が入らないなどの問題点もあります。

自己心膜弁を用いた新しい手術

当院では、人工弁などの異物を使わない手術を積極的に行っています。東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科の尾崎重之教授が開発し、現在海外の有名施設でも行われ、世界的に高い評価を得ている新しい手術です。自己心膜(ご自身の心臓を包んでいる心膜)を用いて、大動脈弁を再建します(図1)。人工弁などの異物は入れません。

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図1 人工弁と自己心膜弁

手術の方法は次のようなイメージです(図2)。

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図2 自己心膜弁を用いた手術の方法

人工弁を使わない利点

この手術には以下のような利点があります(図3)。

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図3 自己心膜弁の大動脈弁再建手術のメリット

人工弁を使わないことが有利な点

  • 薬が必要ない
  • 心臓の病気を気にせず、歯医者にかかれる
  • 食べ物の制限を気にしなくてすむ
  • アレルギーの心配がない
  • 人工物の感染の心配がない
  • 生来の弁の広さが再現できる
  • 人工弁の金属の枠がないため、自然な弁の動きを保てる
  • 心臓の出口(弁輪)の小さい人でも可能
  • 妊活できる
  • 人工弁の費用がかからない(人工弁1個は70〜100万円)
  • 胃カメラや大腸カメラで、心臓の手術を受けてない人と同じように、日帰りでポリープの内視鏡手術が受けられる
抗凝固(こうぎょうこ)治療の必要な人工弁(機械弁)を使わなければ、日常生活でこのような心配をしなくてすみます
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現在、開始から10年を経て良好な成績が報告されています。血液透析や小児の患者さんに対してもquality of life (QOL:生活の質) の高い手術として評価されています。

更新:2024.10.21