緩和ケアチーム 西濃地域で、最期までその人らしい生活を実現するために 大垣市民病院の緩和ケア
大垣市民病院
岐阜県大垣市南頬町
背景と早期からの緩和ケア
当院は岐阜県内に6施設ある、地域がん診療連携拠点病院の1つとなっています。岐阜県がん診療連携拠点病院である岐阜大学医学部附属病院とともに、岐阜県内どこでも標準的ながん診療を受けられるよう均てん化を図り、各地域の足並を揃えて岐阜県全体のがん診療を充実する役割を担っています。手術・放射線・抗がん剤治療・通院治療など積極的な治療はもちろん、緩和ケアについても、地域の差なく患者さんと家族に提供できるような体制整備に努めています。
「緩和ケア」という言葉に対して、「末期がん」「あきらめ」などの印象を持たれる方もみられますが、緩和ケアは決してがんの末期の方にのみ提供されるものではありません。患者さんや家族が、その人らしく生活できるようサポートすることであり、苦痛や困難がある場合は、早期から提供されるものと考えられています。
また、「がん」だけでなく、心不全を始めとした非がん疾患でも緩和ケアは受けられます。
大垣市民病院における緩和ケア
当院では、地域がん診療連携拠点病院として積極的がん治療に対してはもちろん、緩和ケアについても早期から対応してきました。地域医療連携部の中に緩和ケアセンターを設置し、院内および地域の緩和ケアの充実に努めています。
緩和ケアセンターの業務内容を下記に掲げます。
- 緩和ケアチームラウンド
- チームメンバーによる、各職種のコンサルテーション対応
- がん看護外来
- がん地域連携パス導入時の関わり
- がんサロン「なごみ庵」(月・火・木曜の午後に開設)
- がん就労支援
- つむぎの路☆おおがき:ピアサポーターによる取り組み(毎月第3日曜開催)
- キャンサーフィットネス(隔月第3日曜開催)
- リンクナース会
リンクナースとともに情報共有・症例検討・ロールプレイなどを実施(毎月第4金曜開催) - スタッフ教育(緩和ケア研修会、看護師全体研修会、その他さまざまな研修企画など)
また、当院の緩和ケアをすすめる上で、大きな力となっているのは、地域の皆さまの存在です。西濃地域は、在宅医療・介護に関する取り組みが活発です。それにより、多くの患者さん・家族は、自宅療養を選択できるという環境があります。また、地域の皆さまと協働させていただきながら西濃在宅緩和ケア研究会などの研修会企画を通して、一緒に緩和ケアを考える機会をいただいています。
活動紹介と今後の取り組み
1.活動紹介(表)
1)緩和ケアチーム
がん対策基本法が施行された当初から、当院は緩和ケアチームを立ち上げ、活動しています。現在、チームは身体的苦痛緩和担当医師3人、精神的苦痛緩和担当医師1人、緩和ケア認定看護師3人、緩和薬物療法認定薬剤師3人、臨床心理士1人、管理栄養士2人、理学療法士3人、作業療法士2人などで構成されており、関連各部署と連携を図り、活動しています。当院の特徴は、緩和ケアチームと主科スタッフとの話し合いの場や、患者さんと家族の承諾がある場合には病室ラウンド時にも、チームのすべての職種が参加していることです。
2017年度 | 2018年度 | 2019年度(11月まで) | |
---|---|---|---|
緩和ケアチームラウンド | 102 | 155 | 76 |
緩和ケア個別コンサルテーション | 263 | 249 | 158 |
がん看護外来 | 216 | 232 | 155 |
がんサロン | 1,568 | 1,646 | 1,057 |
緩和ケアチームの全体ラウンドは火曜と金曜に行っています。それ以外は専従看護師や薬剤師・心理士などが個別フォローをしています。専従看護師に直接電話連絡できる体制を整え、電子カルテ上での登録システムもあります。依頼は、主治医からはもちろん、各部署の担当看護師や薬剤師など多職種からの依頼、苦痛のスクリーニングなどを通して緩和ケアチームが介入できる仕組みとなっています。さらに、リンクナースが各部署での声かけや、啓発活動を個々で工夫して行っています。
当院では早くから、緩和ケア認定看護師を専従配置しており、このため、ラウンド依頼を迷うケースやちょっとした困難などにも相談対応が可能となっています。また、理学療法士や作業療法士が必ずラウンドに参加するため、非薬物療法の幅が大きく広がりました。心理士は、患者さん・家族だけでなく、スタッフの気持ちに寄り添い支援しています。さらに、2019年度からラウンドに管理栄養士も加わり、患者さんの食への思いに沿って工夫ができる体制となりました。
当院の緩和ケアチーム活動がさらにより良いものとなるよう、種々の研修会にも参加しています。チームコアメンバーによる他病院の見学実習なども行い、チーム活動の運営、薬物療法などを学び、当院の緩和ケアのレベルアップに励んでいます。
2)がんサロン「なごみ庵」
当院では、患者さんや家族などどなたでも参加いただけるがんサロンを行っています。非常勤スタッフが月・火・木曜の午後、3病棟10階のフロアに常駐し、お話を伺います(医療者ではないスタッフが経験を通して、否定しない関わりを行っています)。
また、月曜には、がんサロンイベントが開催され、フラワーアレンジメント・三尺俳句教室・疾患別お話会・リンパ浮腫勉強会・タオル帽子作り教室・マインドフルネス・ちぎり絵など、さまざまな取り組みがあります(図)。俳句教室で詠まれた句は、年に1回病院内に掲示し、多くの方の癒しとなっています。俳句を詠み始め、ふと病気のことを句にしたとき、患者さんや家族は気持ちが軽くなるのを感じると言われます。事前に詠んで参加したり、作成した絵や帽子などをお互いに褒め合ったりするなど、社会とのつながりを常に感じられることにつながっていることも、これらのイベントに共通しています。
2.今後の取り組み
今後は、がん教育やピアサポーター養成事業、AYA世代への支援、就労支援など、皆さまが、その人らしく過ごすことができるよう、活動を行っていきます。
更新:2024.10.18