大腸がん(結腸がん・直腸がん)の症状、治療とは?

滋賀県立総合病院

外科 消化器内科

滋賀県守山市守山

どんな症状で受診したらいいの?

検診が大切です。

国内で1年間に153,000人(滋賀県では約2,000人)が大腸がんと診断されており、最も多いがんです。大腸がんは比較的早期に発見できれば、治癒する可能性が高いがんですが、一方で進行した段階になると治る可能性は低くなります。

大腸がんに伴う症状には、便が細い、下血(げけつ)(お尻から出血する)や血便(便に血が混じる)、便秘や下痢、腹痛、貧血、腹部膨満感などがありますが、早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行してはじめて症状が出ることが多いです。症状が出る前の早期の段階で治療するには、検診を受けて早期発見することが重要です。

大腸がんの検診ではまず便潜血検査を行いますが、便に混じる目に見えないわずかな出血を検知する検査で、がん検診のなかで最も死亡率が下がるといわれています。ぜひ積極的に検診を受け、早期発見、早期治療につなげてください。

大腸がんの切除方法は?

内視鏡治療と外科治療があります。

内視鏡治療は消化器内科で行う治療で、大腸カメラの内視鏡を使って大腸の内側からがんを切除するものです。適応は、がんが表面の浅い層にとどまるもので、リンパ節転移の可能性がほとんどない症例です。

一方の外科治療は、外科(消化器外科)で行う治療で、開腹手術や腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)といった手術のことです。適応は、内視鏡治療ができないもので、より広がっているがんが対象です。リンパ節転移の可能性があり広範囲に切除する必要があるため、がん腫瘍(しゅよう)の口側肛門側の計20cmの腸管と領域リンパ節を切除します(図1、2)。

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図1 大腸の仕組み(ピンクの部分が大腸です)
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図2 結腸切除(D3郭清)

腹腔鏡手術は二酸化炭素でお腹(なか)を膨らませ、小さな傷から長い医療器具を挿入して行う治療です。傷が小さいことから患者さんの体への負担は小さくなる一方で、高度な技術が必要です。

当院では、内視鏡外科学会のビデオ審査に合格した技術認定医(大腸)が2人在籍しており、大腸がん手術のうち8割を腹腔鏡手術で行っています。がん手術の根治(こんち)性(*1)、安全性、低侵襲(ていしんしゅう)性(*2)を第一に手術を行っています。

*1 根治:完全に治すこと。治癒
*2 低侵襲:体に負担の少ない

大腸がんの薬物治療(化学療法)は?

化学療法は抗がん剤治療ともいいます。化学療法には、手術後の再発を予防するための補助化学療法と、手術でがんが取り切れない場合に行われる、延命を目的とする化学療法があります。

補助化学療法は、主に手術でリンパ節に転移があった患者さんに対して行うものです。飲み薬のみで行う場合と、飲み薬と点滴を併用する場合があり、通常6か月間の治療です。

延命目的の化学療法は、5FU、オキサリプラチン、イリノテカンを組み合わせた点滴による治療が基本ですが、最近では分子標的薬、がんの免疫治療剤などの新たな治療が可能になっています。

大腸がんの化学療法のほとんどは、日常生活を行いながら外来で行うことが可能です。それには副作用の対策が肝要ですが、当院は滋賀県で唯一の都道府県がん診療連携拠点病院です。総合病院という特長を生かし、院内各科と連携して副作用対策を行っています。

また、がん薬物療法認定薬剤師が2人、がん専門薬剤師が1人、がん化学療法看護認定看護師が2人在籍しており、化学療法を行う患者さんへチーム医療でサポートしています。

大腸がんの予防法は?

大腸がんの発生は生活習慣とかかわりがあります。

赤肉(牛、豚、羊など)や加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)の摂取、喫煙、肥満、脂肪の過剰摂取により、大腸がんの発生する危険性が高まるといわれています。また、過度の飲酒も危険が高まります。少量では影響が少ないものの、大腸がんのリスクは1日46g以上(ビール約900ml、ワイン約400ml)で2倍、1日92g以上で3倍に増加するといわれています。

大腸がんの発生を確実に抑える有効な予防法はありません。バランスのよい食事、適度な運動、規則正しい生活が、大腸がんに限らず生活習慣病を予防することにつながります。

【参考文献】
1)厚生労働省ホームページ「全国がん登録罹患数・率報告(2017年)」
2)滋賀県立総合病院ホームページ「滋賀県の院内がん登録集計(2018年診断症例)」
3)大腸癌研究会編「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版」
4)各種がん〔103〕「大腸がん」国立がん研究センターがん対策情報センター

大腸がんは早期の段階では、自覚症状はほとんどありません。また、進行したがんでも症状がないこともあります。早期発見できれば、治癒することも多いです。積極的に検診を受けて、早期発見、早期治療していきましょう。

更新:2023.08.24