食物アレルギー

大阪母子医療センター

呼吸器・アレルギー科

大阪府和泉市室堂町

さまざまな症状を引き起こす食物アレルギー

食物アレルギーは、1歳で約10人に1人にみられる頻度(ひんど)の高い病気です。

原因となる食品は数多くありますが、鶏卵、牛乳、小麦が3大アレルゲンといわれます(図1)。

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図1 食物アレルギーの原因
(平成23年度 即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果より)

年齢が高くなるにつれて、果物や魚類、甲殻類などの新たな食物アレルギーが発症する場合もあります。果物のアレルギーは花粉症に合併する割合が高く、口腔(こうくう)アレルギー症候群や花粉–果物アレルギーといわれます。

症状は大きく分けると、2時間以内に出る即時反応と2時間以上してから出る非即時反応に分けられます。多くは即時反応で、実際には30分以内に出ることが多いです。さまざまな症状を引き起こしますが、9割に皮膚症状がみられます(図2)。

グラフ
図2 即時型食物アレルギーの症状
(平成23年度 即時型食物アレルギー全国モニタリング調査結果より)

症状が皮膚だけにとどまらず、呼吸器、消化器など全身に急激な強い症状をきたすものを、アナフィラキシーと特別ないい方をします。アナフィラキシーの中でも意識がもうろうとし、血圧低下を伴うものはアナフィラキシーショックといい、生命の危険に直結する非常に重篤な症状です。その他の食物アレルギーのタイプとして、アトピー性皮膚炎の原因となる食物アレルギーや消化器症状のみで主に新生児、乳児にみられる消化管アレルギーなどがあります。

食物アレルギーの診断

何かを食べて症状が出た場合のすべてが食物アレルギーとは限りません。また、食物アレルギーであっても疑わしい原因食品が複数ある場合では、原因を確定する必要があります。食物アレルギーの診断は詳細に状況を聞き取ることが基本になりますが、確定するために通常は血液検査が行われます。ただし、検査で数値が高くても、実際に食べてみると問題ない例はたくさんあります。血液検査は万能なものではなく、正確な診断はできないことを理解する必要があります。

血液検査で数値が高く、状況からも原因食品として間違いない場合では検査値のみで診断される場合もありますが、確実な診断のためには、実際に疑われる食品を食べて、症状が出るかを確認する食物負荷テストが必要です。負荷テストは症状を確認しながら食品の摂取を進めていきますが、非常に重い症状が出ることもありますので、病院で速やかに対応できる体制を整えて行う必要があります。

食物アレルギー診療の進め方

食物アレルギーと診断された場合、その後の検査は3歳ぐらいまでは半年ごとに、3歳以降は1年〜数年ごとに行うのが一般的です。血液検査の数値が下がってきている場合では、より積極的に除去食(アレルギーの原因となる食材を使わないで作る食事)の解除を試みますが、数値が下がらないからといって絶対に食べられないわけではありません。特に4歳以降では、数値がかなり高くても食べられる場合が少なくありません。完全な解除は無理でも部分的な解除ができる場合もあります。長期にわたって漠然と原因食材を除去している場合は負荷テストで除去食継続の必要性を確認しましょう。

食物アレルギーの治療の目標は必要最低限の除去食を行い、自然に改善するのを待つことになります。3歳までは免疫の調節機能や消化酵素の働きが発達するので、自然に治ることも多いです。除去している間は、必要な栄養素をほかの食品で補充することが重要です。特に牛乳アレルギーでミルクを除去している乳児ではカルシウムが不足するので、アレルギー用ミルクや魚などで補充しましょう。

家族にアレルギーの人がいるとか、本人がアトピー性皮膚炎だということだけで離乳食を始める時期を遅らせることは勧めません。なかでも卵はアレルギーの頻度が高い食品で、いつから食べさせるか悩むかもしれませんが、離乳食の基本どおり離乳中期ぐらいから固ゆで卵黄を少量から食べさせるとよいでしょう。最近では、少しでも食べている方が食物アレルギーになりにくいといういくつかの研究報告もあります。できるだけ食べさせる手段を考えていくことは大切です。

原因食材が乳製品で、牛乳やヨーグルトはだめでも食パンに含まれる乳成分やバターなら大丈夫な場合があります。卵では卵白はだめでも卵黄だけや、料理のつなぎに使用する程度の卵白の量なら食べられる場合もあります。小麦そのものはだめでも麦茶や調味料に含まれるものは、通常は大丈夫です。

しかし、あまりに無理をしすぎると、強い症状を引き起こす危険も伴います。主治医とよく相談しながら進めてください。

また、乳化剤は乳製品とは全く関係ありません、鶏卵と魚卵も関係はありません。誤った情報を基に不要な除去をしないようにしましょう。

誤食などで、症状が出たときの対応についても理解しておくことが必要です。

ここでは詳細は省略しますが、集団生活の現場用に分かりやすいマニュアルがインターネットで公開されていますので参考にしてください。

●東京都健康安全研究センター「食物アレルギー緊急対応マニュアル」2017年3月改定版
http://www.tokyo-eiken.go.jp/files/kj_kankyo/allergy/to_public/kinkyu-manual/7f76eea5e9ad849c49f85c28056a14b21.pdf

積極的な治療への取り組み

最近では、食物アレルギーが自然治癒しない場合は、食物負荷テストで原因食材を食べても問題ない量を見極めた上で計画的に増量していく経口(けいこう)免疫療法が試みられています。外来で緩徐に(数か月〜1年程度をかけて)増量していく方法や、入院して急速に増量する方法があります。しかし、まだ安全といえる治療法とはいえず、安易に行うことは危険ですので、必ず食物アレルギーに精通した医師の指導、管理下で行ってください。

食物アレルギーは日々の食生活にかかわる大きな問題です。必要最小限の除去となるよう、常に少しでも食べられる可能性を探りながら、また日々の安全、栄養に配慮しつつ上手につきあっていきましょう。

更新:2024.01.26