あざの治療(レーザー治療・内服治療)

大阪母子医療センター

形成外科

大阪府和泉市室堂町

ひとくちに「あざ」といってもさまざまなものがあります。赤あざ、青あざ、茶あざと色で分類して紹介します。

赤あざ

毛細血管奇形(単純性血管腫)

生まれつきある平坦な紅斑(こうはん)(赤み)で、新生児の0・3%の頻度(ひんど)で現れます。皮膚の毛細血管が増加していたり、拡張したりして赤く見えるため、最近では毛細血管奇形と呼ばれることが多くなっています。色の濃さや大きさ、形もさまざまなものがあり、全身のあらゆる場所に発生します。顔の真ん中の線上にあるものはサーモンパッチ、項部(うなじ)にあるものはウンナ母斑(ぼはん)と呼ばれ、5歳頃までに自然に薄くなることもありますが、これらを除いては自然に消えることはありません。加齢とともに、血管が拡張、増大し、特に顔面では肥厚してでこぼこになることがあります。

治療は、Vビームという色素レーザーを照射します。通常は外来で、無麻酔で照射できますが、照射時に輪ゴムで弾くような痛みを伴うため、クリームの麻酔を用いて照射することもあります。また、広範囲に病変が存在する場合やまぶたに病変がある場合(眼球保護のためシリコン製の保護用具を装着するため)は全身麻酔をかけて照射することもあります。

毛細血管奇形は症候群の1症状として認められることがあります。顔面の片側の額、まぶた、頬(ほお)に出現するものの中には、脳や目にも毛細血管の異常が存在することがあり、てんかんや発達障害、運動麻痺(まひ)、視力障害を伴い、スタージ・ウェーバー症候群と呼びます。この病気を疑った場合には小児神経科、眼科とともに治療にあたります。1本の上肢(じょうし)(腕)または下肢(かし)(脚(あし))のほぼ全体、またはそれ以上の範囲にわたり毛細血管奇形が存在するものでは、四肢(しし)(両手と両足)の大きさや形に左右差が生じ、さらに毛細血管奇形のほかに静脈奇形や動脈奇形を合併することがあり、クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群と呼びます。症状は成長、加齢とともに悪化することが知られており、症状に合わせて治療を検討する必要があります。

乳児血管腫(いちご状血管腫)

日本人では新生児の0・8〜1・7%に現れるといわれ、小児の皮膚腫瘍(しゅよう)(できもの)で最も頻度が高い疾患です。赤く隆起し、見た目が苺(いちご)に似るためいちご状血管腫とも呼ばれます(図1)。生まれたときは何もないか目立たなかったものが、数日から数週間後に平坦な紅斑(赤み)として現れ、生後3か月頃までは急速に増大します。生後半年から1歳頃でピークに達し、その後は徐々に縮み、7〜10歳頃で変化を終えます。何もしなくても自然に縮んでいきますが、未治療の場合、25〜65%で何らかの痕(あと)(皺(しわ)になった皮膚や赤みなど)が残るといわれています。そのため、毛細血管奇形と同様に色素レーザー治療を行います。レーザー治療は早期に赤みを引かせ、また増殖傾向の強い時期では増殖を抑制する効果があります。レーザーを照射すると、2〜3歳頃までには赤みはほとんどなくなります。しかし、レーザー光が届く深さに限界があるため、膨らみを治療することは難しく、自然に平らになるのを待つしかありません。

写真
図1 乳児血管腫:見た目が苺に似ている

また、最近では内服治療も可能となりました(図2、3)。もともと高血圧や不整脈の治療に使われていた薬で、乳児血管腫に効果があることが、2008年に米国で偶然発見されました。国内では2016年9月からヘマンジオルシロップ小児用0・375%®として発売され、保険治療が可能となりました。心臓に作用する薬のため、程度のひどいもの(視力や聴力、呼吸などに影響を及ぼす可能性があるものや、顔などの見えやすい場所で大きなもの)に限って内服治療をしています。内服開始時は、血圧が下がったり、脈が遅くなったりしていないかなどの副作用が出ていないかを、入院して観察する必要があります。

写真
図2 乳児血管腫
(内服治療前):生後2か月で顔の広範囲に赤み、一部隆起する血管腫を認める
写真
図3 乳児血管腫
(内服治療後):1歳で赤みはほぼ消退し、内服終了

青あざ

太田母斑

主にまぶた、こめかみ、頬、額、鼻に現れる灰青色の色素斑で、通常は片側性ですが、5〜8%は両側性に生じます(図4)。あざの範囲が広い場合は、眼球や口の中にあざを認めることがあります。国内では0・4〜1・1%の頻度で認められ、女性に多いといわれています。生後まもなく発症する早発型と、思春期やそれ以降に発症する遅発型に分けられます。早発型の半数は思春期に色素斑の拡大、増悪を認めます。

写真
図4 太田母斑:左頬を中心に広がっている青あざ

治療はレーザー照射で、Qスイッチ付きレーザー(ルビーまたはアレキサンドライト)を照射します。3〜4か月以上の間隔をあけてレーザー治療を繰り返せば、全例で色調の改善がみられ、5回以上治療すると80%以上の色調の改善が認められます。治療は外来でできますが、広範囲に病変がある場合や、まぶたに病変がある場合は全身麻酔をかけて行うこともあります。

異所性蒙古斑

生まれたときから臀部(でんぶ)(お尻)に存在する青色〜灰青色の色素班を蒙古斑(もうこはん)と呼び、日本人のほぼ100%に認めます。この蒙古斑が臀部以外の部位に発生するものを異所性蒙古斑と呼びます。蒙古斑は2歳頃までは青色調を増し、10歳頃までに大部分は消えていきます。一方、異所性蒙古斑も成長とともにある程度は薄くなりますが、蒙古斑に比べ消退傾向が乏しいとされています。特に、色調の濃いものや広範囲に及ぶもの、境界がはっきりしたものは残ってしまう可能性が高くなります。

治療は、太田(おおた)母斑と同様にQスイッチ付きレーザーを照射します。あざの残る可能性が高いと思われるものでは早期からのレーザー治療も考慮しますが、色調の薄いものでは、就学前を目安に自然に薄くなるのを待ち、十分に消退しないものは希望に応じてレーザー治療を行います。

茶あざ

扁平母斑

先天性、後天性に生じる扁平(へんぺい)な褐色斑で、皮膚表面から盛り上がりのないあざという意味で扁平母斑と呼ばれています。粘膜を除き、体のどこにでも生じます。

大きさは数ミリのものから体幹(胴)全体に及ぶものまで、さまざまあります。このような褐色斑が多発するものの中には、神経線維腫症1型やマッキューン・オルブライト症候群という神経の病気の1症状として現れることもありますが、この場合はカフェオレ斑と呼び区別しています。いずれにせよ自然に消えることはありません。治療はQスイッチ付きレーザーで行いますが、残念ながらレーザー治療で改善するものは半数ほどです。1〜2回試験照射を行い、効果があれば治療を続けます。

更新:2024.01.26