低身長、体重増加不良

大阪母子医療センター

消化器・内分泌科

大阪府和泉市室堂町

低身長とは

背が低い、背が高いというのは誰かと比較して決まるものです。たくさんの人が集まって、背の順に並べば、必ず誰かが前の方にいくことになるので、背が低いからといって、何か原因となる病気があるとは限りません。一般的には同じ年齢の子どもと比べて100人中前から2番目以下の身長である、あるいは身長の伸びが非常に少ない状態が2年以上続いているなど、一定の基準を満たしている場合に医学的な低身長症、もしくは成長障害と考えます。

低身長症の検査

まず診察で何か体格以外に異常はないか確認し、必要に応じて血液検査で内臓の病気の有無を評価したり、手のレントゲンを撮って体の成熟度を評価したりします。成長ホルモンは食事を摂ったり、運動したり、寝たりすると激しく変動するので、その分泌力を評価するには特別な分泌刺激試験を行う必要があります。当センターでは、年間に延べ約500回の成長ホルモン分泌刺激試験を行っています。

成長ホルモンによる低身長症の治療

どんなに背が低くても、医学的な理由(適応といいます)がなければ成長ホルモンによる治療を行うことはできません。前述のように、背が低いかどうかというのは集団の中で比較によって決まるものであり、心臓や腎臓などの病気とは違うのです。現在、国内で成長ホルモンによる治療が認められている病気としては、成長ホルモン分泌不全症、胎児期から体が小さい状態が続くSGA性低身長(SGAとはsmall for gestational ageの略で出生時の体重が週数の割には小さいという意味です)、ターナー症候群、プラダー・ウィリー症候群、腎不全、軟骨形成不全症の6つです。

当センターでは、毎年70〜80人くらいの患者さんが成長ホルモンの治療を始めており、現在430人余りの患者さんが成長ホルモン治療を継続中で、これは国内でもトップクラスの人数です。成長ホルモンは、毎日自宅で自己注射を行う必要があるので、患者さんや家族にとって大変なこともあります。当センターでは、外来の看護師がきめ細かく注射の指導を行い、治療開始後もさまざまな相談に乗っていますので、皆さん頑張って治療を継続されています。

体重増加不良、やせ

身長は標準範囲内にあっても、体重が増えにくい「やせ」状態の子どももいます。少しやせぎみであっても、それなりに体重が増えているようであれば大丈夫なことも多いです。しかし、ずっと横ばい状態が続く場合や、体重が減ってきている場合は要注意です。赤ちゃんの場合は、哺乳力不足が原因のことが多く、家族からミルクや離乳食の摂取状況を詳しく聞いて、栄養剤を処方したり、食事形態の工夫をしたりします。自宅での栄養改善が難しい場合は、入院していただき、点滴や経管栄養を行うケースもあります。子どもが急にやせてきたり、食べなくなったりした場合は何らかの病気が原因となっている可能性が高いため、詳しく検査をする必要があります。甲状線機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)のようなホルモンの異常や、クローン病のような慢性の腸の病気、あるいは心理的な問題による摂食障害など、さまざまな病気がないか調べるとともに、栄養状態の改善を図ります。

体格の小さい子どもさんの育て方のヒント

特別な病気はなくて、生まれつき小さい体格だったり、食べることにあまり興味がない性格だったりすることもよくあります。体格は見た目で分かるだけに、周囲の人から「ちゃんと食べさせているの?」などと言われてつらい思いをするお母さんたちがたくさんいます。

少しでも食べさせようと、1日中だらだら食べさせたり、おやつやジュースを過剰に与えたりすることはやめましょう。親心から、つい「食べないから大きくならないのよ」などと言いがちですが、これでは子どもを責めることになってしまいます。少しでもたくさん食べた方がいいことは事実ですが、食べることを無理強いすると食事が楽しくなくなってしまいます。

「お腹が空いた!」と言って食べ始めたのに、少し食べたらすぐお腹いっぱいになってしまうということはありませんか?体が小さいと胃も小さいので、一度にたくさん食べられないのは当たり前なのです。そんな場合は、食事の回数を増やしてみてはどうでしょうか。夕方、園や学校などから帰ってきたときに、おやつの代わりに軽食にしてみてください。具体的には炭水化物と蛋白質(たんぱくしつ)の組み合わせがお勧めです。おにぎりと残り物のおかず、納豆ご飯、食パンやロールパンなどシンプルなパンにしましょう。目玉焼きや、ハム・チーズなどを載せたものなどが手軽に作れて便利です。少し夕食の食べる量が減っても、夕方の補食と合わせた量が増えていればいいのです。夕食が早い家庭は寝る前に補食を食べさせてみてください。

一方で「うちの子はよく食べているのに体重が増えない」という訴えもよくありますが、体重が増えていないということは、食べているように見えてもその子の生活や成長にとって十分な栄養は摂れていないということです。子どもたちは小柄であってもすごく活発に動いていますから、必要なカロリーはとても多く、特に主食(炭水化物)をしっかり摂ることが重要です。

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更新:2024.01.26