超音波検査

大阪母子医療センター

放射線科

大阪府和泉市室堂町

超音波検査はどんな検査なの?

放射線科では、胎児や心臓以外のほぼすべての部位の超音波検査(エコー検査)を行っています(当センターでは、胎児や心臓の超音波検査は、それぞれ他部門で行われています)。ベッドサイドでも手軽に行えること、被(ひ)ばくがないなど小児にとってやさしい検査であること、何度も繰り返して検査ができることなどの理由に加え、小児では超音波検査のみで確定診断できる疾患が比較的多いことから、検査件数は年々増加し続けています(図1)。検査機器も日々進歩し、侵襲的(しんしゅうてき)な(体への負担が大きい)検査に代わるアプリケーションもどんどん開発されてきており、小児の画像検査の中心的役割を果たしていくと期待されている検査です。

グラフ
図1 当科の超音波検査数の推移

超音波検査ではどんなことが分かるの?

超音波とは、周波数が2万ヘルツ以上の、人には聞こえない音とされています。医療用の超音波は、その中でもメガヘルツ(100万ヘルツ)という単位の高い周波数のものが用いられています。超音波が体内を通り、組織の性質が異なる部分で反射することを利用して画像を作ります(図2)。反射の程度で画像の白黒の度合いが決まり、反射した超音波が戻ってくるまでの時間で反射面までの距離が分かり、これらのデータから断層画像を表示します。

写真
図2 超音波検査のしくみ

超音波が通った部分の断面の画像が得られますので、プローブ(図3)を当てた部位、方向によって任意の断面の画像をみることができます。断層画像という点ではCTやMR検査と同種の検査ですが、超音波検査は反射の程度で画像を作っていますので、その組織の性状を反映した画像が得られるという特徴があります。特に病変が充実性のものか、のう胞(ほう)性のものか(中身がしっかりつまっているものか、液体の入った袋状のものか)がわかりやすいとされています。画像はほぼリアルタイムに作成されますので、腸管などの動きや腫瘤(しゅりゅう)の圧迫に伴う変形などを観察できたり、炎症性疾患では痛みの有無や場所などを確認しながら同時に画像上で病変の評価を行えるという利点もあります。ただ、空気や骨は超音波を強く反射しますので、肺の中や、空気の多く入った腸管や骨の後ろ側の情報は得られないという弱点もあります。

また、音波のドップラー効果を使うことで、血液などの流れを、向きや速さとあわせて表示することもできます。さらに、組織内を音波が伝わっていく速さから組織の硬さを推測する方法も開発されています。これにより、今までは生検といって、実際の組織を採取して病理検査をしないとわからなかったような肝臓の線維化の程度などを、非侵襲的にある程度判断することができるようになりました(現状では病理検査にとって代わるものではなく、相補的な役割を果たしている段階です)。

小児の病気ではどんな超音波検査をするの?

最も多いのは腹部領域の検査です。腹痛や嘔吐(おうと)の原因を調べたり、血液や尿検査などで検査値の異常があれば、その理由になる異常がないかをみたりします。特に、「表1」に示すような疾患は超音波検査が有用で、超音波検査のみで確定診断ができる疾患も多くあります。また、前述の肝臓の硬さが分かるソフトを使って、胆道閉鎖症の術後などで肝臓の線維化の程度を推測したりもします。

・虫垂炎*
・腸重積
・壊死性腸炎
・肥厚性幽門狭窄症*
・腸回転異常(中腸軸捻転)*
・先天性消化管閉鎖
・腸管ポリープ
・腸炎
・メッケル憩室
・大網のう腫・腸間膜のう腫
(リンパ管奇形)
・脂肪肝*
・肝硬変*
・胆道閉鎖症
・胆道拡張症*
・膵炎
・胆石・総胆管結石*
・尿路結石
・卵巣捻転*
・卵巣のう腫*
・鼠径ヘルニア*
表1 超音波検査が有用な小児の腹部疾患
* 超音波のみで診断できる疾患

内分泌(ないぶんぴつ)(ホルモン)に関連する疾患では、思春期早発症や無月経などで子宮や卵巣の発達の程度を評価したり、クレチン症などでは甲状腺の大きさや血流の状態、存在部位(通常とは違う場所に存在することがある)などを評価をします。

脳については、新生児から乳児期では頭蓋の骨のすきまである大泉門(だいせんもん)が開いているので、そこから超音波を当てて内部の状態を観察することができます。水頭症(すいとうしょう)がないか(脳室が拡大していないか)、出血や腫瘍などの異常なものがないかなどをみます。脊髄も、新生児から乳児期早期では背骨の椎弓(ついきゅう)という部分の骨がしっかりできていないので、内部を観察することができます。腰背部の皮膚に小さなくぼみや、膨隆があったり、色素斑や毛が生えているなどの所見がある赤ちゃんでは、脊髄の異常を伴っていることもあるので、超音波検査でチェックすることで、早い時期に異常を発見することができます。中枢神経系(脳脊髄(のうせきずい))の画像検査はMR・CT検査で行うことが多いですが、赤ちゃんは体格が小さいためきれいな画像が撮れないことや、呼吸のモニターや体温調節など、注意しなければならない問題もあります。その点、超音波検査は分解能の高い精細な画像が得られること、ベッドサイドで短時間のうちに検査でき、安全に施行できることなど、赤ちゃんに適している点が非常に多い検査といえます。

頸部や全身の体表の異常として、腫瘤やリンパ節が触れるときに、大きさ、進展範囲や内部の性状、血流の多さなどを観察し、何の病気か、良性か悪性かなどの診断の参考とします。悪性(小児がん)かどうかは、最終的には病理診断によりますが、悪性とわかった場合には、ほかの画像検査とあわせて得た情報から治療方針を立てることになります。治療中の治療効果判定、治療後に再発がないかの検査、また、治療後に年数がたってから発生する二次がんやさまざまな内分泌異常についても、超音波で検索が行われます。遺伝子異常やいろいろな症候群などで、腫瘍ができやすい素因を持つ患者さんでは、腫瘍ができていないかの定期的なチェックに被ばくがなく、手軽に行える超音波検査を用いることが多いです。

このように、小児の画像診断で重要な役割を果たす検査として、当科では多くの超音波検査を行っています。ハード面として、患者さんがリラックスできるように、保護者の方も一緒に検査室に入ってもらい、アニメなどのビデオをみたり、おもちゃで遊びながら検査ができる部屋を準備しています(図3)。

今後もよりよい検査ができるように、ソフト、ハード面ともさらに充実させていく予定です。

写真
図3 超音波検査室

更新:2023.04.03