糖尿病性足病変とフットケア
済生会吹田病院
心臓血管外科
大阪府吹田市川園町
糖尿病性足病変は神経障害、末梢血管障害、感染が複合して生じる
1.神経障害
神経障害には自律神経障害、運動神経障害、知覚神経障害があります。
自律神経障害によって皮膚の血流が傷害されてむくみを生じ、汗腺の機能の低下で皮膚が乾燥して亀裂が起こりやすく、傷が治りにくくなります。また、骨の吸収が増えてもろくなり、足が変形しやすくなります。運動神経が障害されると足趾(そくし)(足の指)が変形し、指の背面や踏み返しの部位に胼胝(べんち)(たこ)や潰瘍(かいよう)を生じやすくなります。温痛覚が低下すると、外的刺激に対して鈍感になり、足底に胼胝ができたり、靴ずれなどの摩擦刺激で水疱ができたり、カイロなどで低温やけどを起こしたりする危険性があります。
2.末梢血管障害
末梢血管障害は動脈の内腔(ないくう)が狭くなり、血管が詰まることによる血流低下と動脈壁内(中膜)の石灰化による弾力性低下を生じます。また、通常と比べて膝(ひざ)以下の動脈が障害される傾向にあり、血管内治療やバイパス術がより困難になっています。
3.感染
糖尿病は感染に対する防御能力が低下して、微細な皮膚の損傷から皮下軟部組織に炎症が波及しやすいので注意が必要です。
神経障害や血流障害が原因で足に潰瘍や傷ができても痛みがなく、視力障害もあるので発見が遅れ、放置することで感染が深部にまで達し、骨が溶けたり、膿(うみ)が溜(た)まって足趾の切断や、敗血症(はいけつしょう)になって下腿(かたい)や大腿(だいたい)切断が必要になったりする場合があります。
フットケアー自分で行うケアと医療者が行うケア
セルフフットケア
- 靴が足に合っているか、中に異物や血液などの付着がないかを確認する。
- ぶつけて傷ができたり、冷えによる血流悪化を防ぐために靴下を履く。
- 乾燥して亀裂を生じないように足に保湿剤を塗る。
- 白癬症(はくせんしょう)に対して抗真菌剤(クリームや外用液)を塗る。
- 浴槽に入る前やシャワーの前に、温度計や手で温度(約40℃)を確認する。
- 貼ったり靴に入れたりするカイロは使用しない。
- 暖房具をつけたまま寝ない。
- 目が見えにくいのに爪を切ると、知覚障害のために皮膚を切ったり、深爪をして出血したり、化膿して壊疽(えそ)に陥ったりする危険性があるので、自分では切らない。
- 胼胝や鶏眼(けいがん)(うおのめ)用の貼付式サリチル酸製剤は、歩行でずれて健常部も浸軟させ、新たな潰瘍を形成する危険性があるので使用しない。
外来で行うフットケア
- 胼胝や鶏眼の処置。
- 爪切り、爪白癬を含む肥厚爪の処置。
- 潰瘍の有無の確認と処置。
- 履き物と作成した装具のチェック。
更新:2022.03.08