健康でより良い生活を送るためにリハビリテーションでできること

済生会吹田病院

中央技術部

大阪府吹田市川園町

急性期リハビリテーションについて

当科では新生児から高齢者まで、さまざまな疾病に対する急性期リハビリテーションを実施しています。急性期リハビリテーションとは発症から2週間程度の期間を指します。

目的としては、身体機能の低下を防止することです。寝ている状態が続くと筋肉が衰え、関節が硬くなり骨も弱くなります。また体力や認知機能が低下し、精神状態が不安定になることもあります。これらを可能な限り予防するために関節を動かしたり、座ったり立ったり離床していきます。また、トイレや入浴、着替え、食事など日常生活にもアプローチしていきます。

自宅でより良い生活を送るために

日々、より良い日常生活を送るために必要なのは健康です。政府は健康日本21という健康施策を打ち出しました。これは、国民一人ひとりの健康を実現するための国民健康づくり運動という考え方です。

その具体的内容は、生活活動(仕事に関連する動作、家事、通学など)と運動(スポーツなど生活以外)を向上させることで、循環器疾患(心筋梗塞(しんきんこうそく)など)やがん、糖尿病のような生活習慣病の発症や、老化に伴う日常生活の質の低下を避けることができ、その予防にも効果が期待されます。

これらにより、健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)の延伸へとつながり、少しでも長く元気で質の高い生活を送ることが可能となります。

運動習慣における2013年の報告では、男女とも約3割が運動しており、60歳以上で割合が高く、最も低いのは男女ともに30歳代という結果となっています(図1)。

グラフ
図1 運動習慣のある者の割合(20歳以上、性・年齢階級別)(出典:厚生労働省ホームページをもとに作図)

また、日常的に簡易に運動できるのが歩行です。その目標値ですが2022年は20~64歳において、男性は9000歩/日、女性は8500歩/日としています。65歳以上は、男性は7000歩/日、女性は6000歩/日となっています。2013年の報告では、平均で男性は7099歩/日、女性は6249歩/日で、最も多い年代は男性では30歳代、女性は50歳代です。

リハビリ外来では身体活動の維持を目的に、ロコモティブシンドローム(骨や関節、筋肉などの衰えが原因で起きたり、歩いたりと日常生活に障害をきたす状態)の予防に取り組んでいます。

訪問リハビリテーションについて

当院から退院する患者さんは、全体の70%に当たります。つまり7割は自宅へ帰られています。その中で退院後、入院中にできていたことが自宅へ帰るとできなくなることがあり、実際に自宅で生活ができるよう、当院は訪問リハビリテーションも実施しています。

アスレチックリハビリテーションについて

日常生活レベル以上の機能を必要とするスポーツ復帰の要望にも応えるべく、理学療法士とアスレチックトレーナーとが共同してアスレチックリハビリテーションも行っています。

転倒しない体づくりについて

加齢に伴い運動能力が低下し、転んでしまうことがあるかもしれません。転んでしまうと骨折や外傷に至る可能性が生じてきます。それにより以前のような生活ができなくなるばかりでなく、寿命を縮めることにもなり、近年転倒予防の重要性が謳われています。

65歳以上の高齢者の3人に1人が1年間に1回以上転倒し、その内の5~10%に骨折を伴うとの報告があります。転倒の要因としては、筋力やバランスの低下など加齢変化によるものや、不整脈、パーキンソン症候群や白内障などさまざまな病気によるもの、そして薬による影響などが考えられます(表)。また、段差や履物、電気コードなど環境もあげられます。

項目 オッズ比
筋力低下 4.4
転倒歴 3.0
歩行障害 2.9
バランス障害 2.9
補助器具の使用 2.6
視覚障害 2.5
関節炎 2.4
日常生活動作の障害 2.3
うつ病 2.2
認知機能障害 1.8
80歳以上 1.7
表 地域在住高齢者の転倒リスク
高齢者の転倒する確率(数値の高い方が転倒の危険性あり)
Guideline for the prevention of falls in older persons.American Geriatrics Society,British Geriatrics Society,and American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Falls Prevention.J Am Geriatr Soc 2001;49:664-72.(日本転倒予防学会研修資料より)

個々において身体機能のレベルはさまざまであり、リハビリテーション科では骨粗(こつそ)しょう症(しょう)患者さんに対して骨量に良い効果が考えられる体操指導や転倒評価を行い、転倒に対する予防体操の指導もしています(図2)。

グラフ
図2 転倒予防のバランス訓練効果
Provinceら(1995)をもとに身体教育医学研究所作図(日本転倒予防学会研修資料より)

呼吸・心臓リハビリテーションで息切れの少ない生活を

日頃の運動習慣がなくなると動悸(どうき)や息切れなどの症状が現れます。このような症状を避けるがあまり、臥床(がしょう)(*)したり、じっと座っていたりすると、さらに体力や筋力が低下します。そうすると息切れがひどくなり、どんどんと日常生活に支障をきたす悪循環に陥ってきます(図3)。

グラフ
図3 日常生活活動と生命予後との関連
(Garcia-Aymerich J et al.2006)

呼吸や心臓リハビリテーションを行うことにより呼吸困難感の軽減や持久力、日常生活動作の向上などさまざまな効果が報告されています。当科では呼吸・心臓リハビリテーションを入院、外来ともに積極的に実施しています。

*臥床/床について寝ること

更新:2024.10.18