化学療法の副作用と対策 チーム医療で副作用対策に取り組んでいます

四国がんセンター

薬剤部

愛媛県松山市南梅本町甲

抗がん剤の正常な細胞への副作用

化学療法とは、抗がん剤を使用してがんを治療することです。従来から使用されている抗がん剤は、がんが速いスピードで分裂・増殖していく性質を利用してがん細胞の死滅を促す薬です。したがって、毛根や口腔(こうくう)・消化管粘膜や骨髄(こつずい)の細胞など、分裂速度の速い正常な細胞にも影響が現れやすく、脱毛や口内炎・下痢や貧血などの副作用となって現れます。副作用の起こり方や程度などは、使用する抗がん剤の種類や量、使用期間によって異なってきます。副作用には、悪心(おしん)(吐き気)、口内炎、脱毛など自覚症状により自分で分かるものと、腎機能障害や骨髄抑制による白血球減少、血小板減少など検査で分かるものがあります(図1)。

グラフ
図1 抗がん剤治療の副作用と発現時期(抗がん剤投与4週後くらいまで)

また、比較的新しい抗がん剤として、がん細胞中の増殖や転移に関係しているがん特有の分子を標的として作用し、効果を発揮する分子標的薬が登場しました。従来の抗がん剤で起こるような副作用は少ないですが、正常な細胞も標的となる分子を少し持っているため副作用がゼロにはなりません。標的とするがん特有の分子は薬剤により異なるため、副作用も薬剤ごとに異なり、時に重症な副作用が起こることもあります。

主な副作用と対策

【悪心(吐き気)・嘔吐】

抗がん剤により、脳の中の嘔吐(おうと)に関係している神経が刺激されて悪心や嘔吐の症状が現れます。悪心や嘔吐を治療する薬は、最近十数年で次々に開発され、かなりコントロールできるようになりました。薬以外にも、悪心が起こったら冷水でうがいをするなどの方法も効果的です。

【口内炎】

口の中の粘膜に抗がん剤が作用して口内炎ができて痛みます。症状を和らげるため、痛み止めや炎症を抑えるうがい薬などで対処することもあります。また、歯みがきをする際には柔らかい歯ブラシを使用し、きつくこすらないように注意しましょう。

【感染症】

「図1」にあるように、抗がん剤治療数日後から2週間後にかけて白血球が少なくなってきます。白血球は、細菌やウイルスなどの感染から体を守ってくれる働きをしているので、白血球が少なくなると感染しやすくなります。状態によっては、白血球の一種である好中球を増やす薬を使って治療します。日常生活では、手洗いやうがい、外出時にはマスクを着用するなどして感染予防をしましょう。

【下痢】

抗がん剤により、腸などの神経を刺激して腸管の運動が活発になって起こる場合と、消化管の粘膜が傷ついて起こる場合があります。下痢止めや整腸剤などの薬で治療したり、回復するまで一時的に抗がん剤治療を休む場合もあります。

【便秘】

抗がん剤が腸の運動に関係している神経に作用して、腸管の運動が妨げられて便秘が起こることがあります。水分を十分に取り、腸の運動を活発にする薬や便を軟らかくする薬などを使って対処します。

【アレルギー反応】

抗がん剤は、私たちの体にとって異物となるのでアレルギー反応が起こることがあります。アレルギー反応の症状は、息苦しい、汗が出る、発疹が出る、顔がほてるなどです。これらを予防するために、抗がん剤の治療の前にアレルギー反応を抑える薬を使用することがあります。

【しびれ】

抗がん剤の中には、手や足の神経を傷つけ、しびれや痛み、感覚が鈍くなるといった症状の出る薬剤があります。抗がん剤の使用量や回数が増えると、症状が出やすくなります。症状が強い場合は、症状を軽くする薬を使ったり、抗がん剤の量を減らしたり休んだりして対処しますが、回復しにくい症状です。

【脱毛】

抗がん剤の中には毛髪を作る細胞を傷つけて、頭髪やまゆげなどの脱毛を起こす薬剤があります。脱毛は、抗がん剤治療開始後2〜3週で起こり始め、治療終了後3〜6か月くらいで再び生えてきます。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用と対策

近年、「免疫チェックポイント阻害薬」という、がん免疫療法の新しい道を切り開いた薬が登場しました。

がん細胞など、異物から体を守る方法に白血球による免疫のシステムがあります。しかし、がん細胞も生き残るため、免疫がうまく働かなくなる物質を作るなどして免疫にブレーキをかけます。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫のブレーキを外すことで免疫の機能を高め、がん細胞を間接的に減らします。ただし、免疫の機能が高くなりすぎると、自分の正常な細胞も攻撃することで、今までの抗がん剤ではなかったような副作用が発現します(図2)。副作用が出た場合には、薬の使用を延期したり、ステロイド薬など免疫を抑える薬を上手に使って対処します。

イラスト
図2 免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ、ヤーボイなど)による免疫関連副作用

チーム医療による副作用対策

当院では、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、栄養士、医療社会福祉士など、いろいろな職種が連携してそれぞれの立場から患者さん中心の医療に携わる〝チーム医療〞を実践しています。抗がん剤によるさまざまな副作用に対しても、患者さん個々にあった対策をチーム医療で行っています。

副作用の中には「図1」にあるように自覚症状で発見できるものがあります。このような副作用に対しては、抗がん剤治療の前に、患者さんに自覚症状を説明し、理解してもらうことで患者さんと共にできるだけ早く発見し、ひどくならないよう対処しています。また、副作用の予防や、日常生活での工夫などについての説明も行っています。

更新:2024.01.25