豊富な肝臓・胆道・膵臓の手術実績 肝臓・胆管・膵臓の腫瘍

大垣市民病院

外科 消化器外科

岐阜県大垣市南頬町

県下では他の追従を許さない経験数

当院の肝臓・胆道・膵臓手術(胆石は除く)の経験数は『週刊朝日』の調査によれば、全国で50位前後です。東海地区はこの領域の手術が特に盛んですが、その地域では第4~5位です。もちろん岐阜県では他の追従を許さない単独1位で、2018年には合計152件の肝臓切除と膵臓切除を実施しました(図1)。

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図1 肝臓胆道膵臓手術数の最近の推移

肝臓の手術の対象となる病気には、主に原発性肝がんと転移性肝がん、肝内胆管がんがあります。B型やC型肝炎の内科的治療成績がよくなり、これらの病気からの肝臓がん発生が著しく減少しました。反対に、国内では脂肪肝が急増し、突然進行がんで発見されることも多くなってきました。このような患者さんは内科的治療のみでは良くなることはなく、大きな腫瘍(しゅよう)を切除して残りの小さな病変を薬で治療するという複合的なアプローチが必要です(図2)。大きな腫瘍の場合は出血もしやすく、経験と高度な技術が必要となります。

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図2 大きな肝臓がん(わずかに白い部分)を切除し(破線)、小さな病変に内科的治療を加える(白い病変、矢印)

最近、多くなりつつあるのは転移性肝臓がんの治療で、大腸や胃から肝臓へ転移した腫瘍の手術になります。当院の胃がんや大腸がんの手術経験数は、『週間朝日』の調査結果では10~15位とされています。これらの病気が進行した場合、肝臓への転移は珍しくなく、根治(こんち)を目的とした外科切除が必要となる患者さんも多くいます。特に大腸がんに対する抗がん剤治療は、この約20 年間でめざましい進歩をとげ、以前は余命半年といわれていた患者さんの予後も、平均3年半となりました。

私たちは消化器内科医師と協力しあいながら、抗がん剤と外科切除のブレンド的アプローチを多用しています(conversion surgery)。つまり発見時は切除の不可能な進行がんでも、抗がん剤で小さくし切除可能なタイミングを見計らって肝切除を実施しています(図3)。その結果、8年くらいの長期生存の患者さんもみられるようになりました。ただし、このような場合は複雑な肝切除になることが多く、やはり経験と高度な技術が必要となります。特に抗がん剤で「ダメージを受けている患者さんと肝臓」に対する手術なので、通常よりも注意が必要となります。根治性を高めるために血管を切除し、再建するという複雑な手術も積極的に行っています(図4)。

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図3 多発肝転移に対して抗がん剤使用し、縮小させてから切除する(破線)。
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図4 右肝静脈を再建する肝切除

膵臓の手術も消化器系の手術では複雑な操作が必要とされます。最近では膵がんの患者さんが増加し、国内における罹患率が4位となりました。根治性の可能性のある唯一の治療法は手術であり、がんの取り残しのないようにするため、大きな手術が必要になることが多いです。当初は切除の難しい膵がんでも、転移性肝臓がんと同様に積極的に抗がん剤を使用し、縮小させてから手術をすることが増えてきました。

当院では、年間60~65件の膵臓切除を実施し、その中で40~45件が膵頭十二指腸切除という複雑な手術が必要となっています(図5)。また、門脈や動脈などの血管再建の必要な場合においても、根治性を求めて積極的に行っており、約60%の患者さんで血管再建を実施しています。

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図5 膵臓手術数の推移

県内で唯一施設認可を受けている腹腔鏡下複雑肝切除・膵頭十二指腸切除

胃や大腸の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術は広く行われるようになりましたが、肝臓・膵臓の手術は厳しい条件をクリアした施設のみが認可を受けます。年間の手術実績、腹腔鏡手術の実績、消化器外科学会の専門医認定配置などです。肝臓の複雑なあるいは大きな切除(亜区域、区域、葉切除)と膵臓の膵頭十二指腸切除は施設指定の対象であり、2019年8月現在県下では当院が認可を受けている唯一の施設です。また腹腔鏡下膵頭十二指腸切除を2019年末までに50例実施し、日本膵臓内視鏡外科研究会の登録では全国で3位でした。

肝臓切除、膵臓切除は消化器外科の中では大きな手術ですが、病状によっては低侵襲(ていしんしゅう)の腹腔鏡手術が従来の開腹手術にまさる場合もあります。2013年頃には腹腔鏡手術の占める割合は20~25%程度でしたが、2018年には36%まで増加してきました(図5、6)。

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図6 肝臓手術数の推移

【参考文献】
・週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院』2016、2017、2018
・日本膵臓内視鏡外科研究会報告

更新:2024.10.10