切迫早産治療のストレスを軽減する取り組み 切迫早産
大垣市民病院
産婦人科
岐阜県大垣市南頬町
切迫早産とは
妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産を、早産と呼びます。週数が早く生まれた赤ちゃんほど、重篤な障害が出現する可能性が高まるため、予防することが重要です。早産の危険性が高まった状態を切迫早産といい、規則的な子宮収縮(お腹の張りや痛み)、子宮頸管が開いたり短くなった状態(子宮口が開き始めた状態)を認めることで診断されます。
破水(赤ちゃんや羊水を包んでいる卵膜が破れ、羊水が流出している状態)が先に起きたり、同時に起きることもあります。妊婦検診や外来受診時に診断し、切迫早産を認めた場合は治療が必要となります(図1、2、写真)。
従来の切迫早産治療
切迫早産の治療は、子宮収縮を抑え、子宮口が開かないようにすることを目的とします。軽度であれば、外来通院にて自宅安静、子宮収縮抑制剤(張り止め)の内服で治療します。症状が強い、または外来治療で改善しなければ、入院が必要となります。入院では、安静、子宮収縮抑制の持続点滴を行います。切迫早産の原因の1つである細菌感染が疑われれば、抗菌薬を使用します。破水している場合も、週数が早ければ抗菌薬を使用し、感染予防をしながら切迫早産の治療を行います。また、子宮収縮の症状がなく子宮口が開きやすい状態は、子宮頸管無力症といいます。子宮頸管無力症の場合は、どんどん子宮口が開いて早産の危険性が高まるため、子宮頸管を糸でしばり、開かないようにする手術を行います。
入院治療として行う安静は、切迫早産の程度にもよりますが、ベッド上で安静とすることが基本で、シャワー・洗面・トイレも制限されることがあります。点滴治療は、塩酸リトドリンという子宮収縮抑制剤を、輸液ポンプを用いて毎日24時間点滴をします。状態により硫酸マグネシウムの持続点滴も行います。
当院での切迫早産治療
切迫早産の入院治療は症状が改善しない限り、赤ちゃんが生まれるか、生まれても赤ちゃんの状態がよいことが予測される週数(妊娠36週前後)まで続きます。そのため、入院は長期間となることが多く、安静や持続点滴は身体的・精神的負担の大きい治療です。
特に塩酸リトドリンの持続点滴は、①適宜点滴のとり直しが必要である、②輸液ポンプのアラームがいつでも鳴る可能性がある、③患者さんによっては点滴刺入部に違和感を伴ったり、薬剤による血管痛を起こすことがある、などのデメリットがあります。
日本では標準的に行われている塩酸リトドリンの長期持続点滴は、欧米では48時間以内とするのが一般的です。国内でも近年、塩酸リトドリンの点滴を48時間行い、その後行わなかった場合でも、早産で生まれる割合が上昇しなかったとの報告がなされるようになりました。そこで当院では、2018年4月より順次従来の治療方法を新しい治療方法へと変更しています。
当院での切迫早産の入院治療方法は、以下のようになります。
- 安静の制限はベッド上であったのを病棟内までとゆるめ、シャワー・洗面・トイレの制限は行いません。
- 塩酸リトドリンの点滴は入院後48時間以内までとし、その後は持続点滴を行いません。
当院での検討でも、治療方法の変更により早産率が上昇することはありませんでした。
このように当院では、身体的・精神的ストレスの少ない治療方法で、切迫早産の治療を行っています。
更新:2024.01.26