母体の血液検査から、胎児染色体異常を知る(NIPT)-胎児染色体異常

富山大学附属病院

産科婦人科

富山県富山市杉谷

母体血胎児染色体検査とは、どんな検査ですか?

母体血胎児染色体検査(NIPT:Noninvasive prenatal genetic testing)と呼ばれ、2013年から国内でも始まりました。妊娠の初期から、赤ちゃんの細かいDNAのかけらがお母さんの血液中に混じり始めます。それを用いて、赤ちゃんの染色体の変化を予想しようとするものです。

検査は、妊娠10週から通常の採血検査で受けられます。当院の検査にかかる費用は、18万3520円(遺伝カウンセリング料込み)で、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの3つの疾患に限定して検査を行います。これらの疾患は、染色体疾患の約3分の2を占めます。したがって、残りの3分の1に関しては、この検査では分かりません。確定診断とはならない「非確定的検査」に含まれ、陽性時には羊水検査などの確認検査へと進みます。

誰でも受けられますか?

2019年12月時点で、当院では以下の女性を対象に検査を行っています。検査前後にご夫婦で遺伝カウンセリングを受けていただくことを必須としています。日本医学会より、本検査に関して適切な遺伝カウンセリングが受けられると施設認定を受けている医療機関は、富山県内では当院のみです。

胎児の染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)についての検査希望があり、以下のいずれかの条件を満たす妊娠女性が対象です。

  • 過去に染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのいずれか)に罹患(りかん)した児を妊娠、分娩したことがある場合
  • 高齢妊娠の場合(分娩時35歳以上)
  • 超音波検査、母体血清マーカー検査などで、胎児が染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーのいずれか)に罹患している可能性を指摘された場合

検査結果は、どのように出るのでしょうか?

検査結果は「陽性」、「陰性」、「判定保留」の3つです。

陰性の場合には、赤ちゃんが21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーでない確率(陰性的中率)は99.9%といわれています。しかし、ごくまれに(0.1%以下)、実際は赤ちゃんにこれらの染色体疾患があっても、この検査で陰性(偽陰性)となることがあります。

陽性の場合には、赤ちゃんが本当にその病気である確率(陽性的中率)は、21トリソミーでは50~98%程度で、検査を受けた妊婦さんの年齢や背景によって変わります。18トリソミー、13トリソミーは、的中率はさらに低くなります。陽性となった場合には、確定診断である羊水染色体検査などを行います。

1%以下ですが、判定保留と出ることがあります。その原因として最も多いのは、母体血中を流れる赤ちゃんのDNAの濃度が低いことです。妊娠経過とともに胎児DNAは増えてきますので、再度採血を行うか、羊水検査を受けるか、などを選ぶこともできます。

出生前診断について相談したいのですが……

お腹(なか)の赤ちゃんに病気がないかは、どのご両親も心配されることと思います。赤ちゃんが生まれる前に病気の診断をすることを、出生前診断といいます。

全体の3~5%の赤ちゃんは、何らかの病気を持って生まれてきます。この採血や羊水検査で調べるのは赤ちゃんの染色体ですが、染色体が原因で起こる先天疾患は全体の4分の1を占めるにすぎません。技術が進んだとはいえ、出生前に分かることはまだ一部です。

「表1」に示すように出生前診断の検査法は多岐にわたり、目的とする疾患により使い分けが必要です。検査結果が同じ「陽性」でも、その意味するところは検査法により異なります。どこまでは検査で知ることができ、どこからは生まれるまで分からないのか、など「遺伝カウンセリング」では、出生前診断に関する専門的知識を持った医療者が、個々の心配事に合わせて、検査が本当に必要かどうかから一緒に考え、検査の選択をお手伝いします。

  超音波マーカー検査(NT など クアトロテストⓇ 母体血中胎児染色体検査(NIPT) 絨毛検査 羊水検査
非確定検査 /確定検査 非確定検査(確定診断にはならない) 確定検査
実施時期 11-13 週 15-18 週 10-22 週 11-15 週 15 週以降
対象疾患 ダウン症候群
18/13 トリソミー
ダウン症候群
18 トリソミー
開放性二分脊
ダウン症候群
18/13 トリソミー
染色体疾患全般
(感度 99.1%
染色体疾患全般
(感度 99.7%)
検査の安全性 非侵襲的 非侵襲的採血のみ 非侵襲的採血のみ 流産率約 1%
腹部に穿刺
流産率約 0.3%
腹部に穿刺
検査費用(施設で異なる) 10,000 円 ~ 20,000 円 20,000 円~ 30,000 円 180,000 円程度 180,000 円程度 ~ 200,000 円
当院での施行 不可
表1 現在、国内で一般的に行われている出生前診断

富山大学には、複数の臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラーが在籍しており、各診療科の専門医と連携して皆さんからの相談に対応しています。1人で悩まず、気軽に受診してください(表2)。

表
表2 NIPT検査、または相談を希望する方へ

NIPT検査は、限定された3つの胎児染色体異常を疑う非確定的検査であり、陽性時には羊水検査などでの確認を要します。
現時点では、条件を満たす女性に限定して行われています。
検査に際しては、専門外来での遺伝カウンセリングを受けることが必須です。

更新:2024.01.26