縦隔腫瘍って何ですか?
済生会吹田病院
呼吸器外科
大阪府吹田市川園町
縦隔腫瘍について分かりやすく説明します
縦隔って何ですか?
横隔膜(おうかくまく)という言葉は聞いたことがあると思いますが、横隔膜は胸とお腹(なか)を横に隔(へだ)てる膜のことです。縦隔とは、胸を右と左に縦に隔てる部分のことで、つまり胸の真ん中の部分で、そこには心臓や気管、食道、大血管、胸腺、リンパ節、神経などがあります。
縦隔腫瘍とは”心臓の近くにできた肺以外の腫瘍”ということです。あまり耳にしたことのない言葉かもしれませんが、珍しいわけではありません。若い人から高齢者まで幅広い年齢の方に発症しますが、症状のないことが多くレントゲンやCTで偶然見つかることが多いです。縦隔腫瘍の中には胸腺腫瘍や奇形腫・神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)などがあり、悪性腫瘍は比較的少ないです。良性でも悪性でも治療は手術が中心となります。
胸腺腫瘍
縦隔腫瘍で最も多いのが胸腺腫瘍です。胸腺にはリンパ球を育てる機能があり、思春期以降は退化しその役割を終えます。残った胸腺の細胞が変化し、異常に増殖したものが胸腺腫瘍です。胸腺腫瘍には胸腺腫や胸腺嚢胞(のうほう)があります。胸腺腫は良性のものから悪性のものまでさまざまですが、その約3割に重症筋無力症を合併するといわれています。嚢胞とは中に液体成分の入った袋のようなものです。
重症筋無力症について
体を動かすのは筋肉の力ですが、「動け」という刺激は神経から筋肉に伝わります。その刺激が伝わるのを邪魔する抗体が、体の中で異常につくられてしまうことで発症する自己免疫疾患の1つです。比較的珍しい病気で、その病態や原因についてまだよく分かっておらず、完治する人は少なく難病に指定されています。手術による胸腺切除や薬による治療を行います。重症筋無力症の約3割に胸腺腫が合併しています。
縦隔腫瘍に対する手術
全身麻酔による手術を行います。縦隔腫瘍は、良性か悪性かを含めて手術前に正確な組織診断のつかないことが多く、診断と治療を兼ねて手術することがあります。良性の腫瘍でも大きくなったり、悪性になったり、また破裂したりなどの危険があるため、手術するのが一般的です。
当科では胸腔鏡(きょうくうきょう)を使用し、体の負担を軽くする工夫をしています。心臓の手術のように、胸骨(胸の前の骨)を縦に切る場合もあります。入院期間は数日から10日程度です。抗がん剤の注射や放射線療法などと組み合わせる場合もあります。
更新:2024.10.18