気管支喘息の診断・治療

済生会吹田病院

呼吸器内科

大阪府吹田市川園町

気管支喘息の症状

気管支喘息(きかんしぜんそく)は、日頃は症状がなくても比較的急に咳(せき)や痰(たん)、喘鳴(ぜんめい)(ゼーゼー、ヒューヒューという音)を伴う息苦しさが出現します。これを喘息発作と呼びますが、気管支喘息では発作のない状態でも気管支粘膜に好酸球や肥満細胞、リンパ球と呼ばれる炎症細胞が集まり、これらの細胞が放出する化学物質のため、空気の通り道である気道が慢性的な炎症状態になっています。気温の変化やストレス、風邪をひく、ホコリやタバコ煙を吸入するなどのわずかな刺激で気管支周囲の筋肉が収縮し、気管支が狭くなり発作を起こします(図)。

図
図 喘息の気管支の状態

気管支喘息の診断

咳や痰、喘鳴などの症状は、気管支喘息以外の肺や心臓の病気でもみられることがありますが、気管支喘息ではこれらの症状が発作性に反復して出現します。特に夜間や早朝に多いことが特徴的で、そのほかにも季節の変わり目や天気が良くないとき、疲れているときなどにもしばしばみられます。

気管支喘息の呼吸機能検査では、一定の時間に吐くことのできる空気の量が健康な人より少なく、気管支拡張薬の吸入でこれが改善する(気道可逆性)のも特徴です。吐き出す息の中に含まれる一酸化窒素(呼気NO)濃度の測定は気道炎症の状態をみるのに役立ちます。血液検査では、アレルギー反応に関与する好酸球という細胞やIgEという免疫タンパクの増加の有無、特定の物質に対するアレルギー反応の有無を調べます。気管支喘息以外の病気との鑑別や併存症の診断には、胸部レントゲン検査や胸部CT撮影を行います。

気管支喘息の治療

気管支喘息の治療には、発作が起こらないように毎日継続する長期管理薬と、起こってしまった発作をしずめる発作治療薬の2種類の薬剤を使用します。長期管理薬には気管支の慢性炎症を抑える抗炎症薬と、気管支を広げる長時間作用性気管支拡張薬があります。

吸入ステロイド薬には強い抗炎症作用があり、喘息治療薬の基本となります。ステロイドというと副作用を心配する方も多いですが、気管支に直接届く吸入薬のため用いる量は非常に少なく、全身への影響はほとんどありません。症状が強かったり、吸入ステロイドだけでは症状が持続したりするときには、長時間作用性気管支拡張薬や抗炎症薬の抗ロイコトリエン薬を併用します。長時間作用性吸入気管支拡張薬には吸入ステロイドとの合剤もあり、1回の吸入で2種類の薬剤による治療を行うことが可能です。気管支拡張薬には内服薬や貼り薬もあり、吸入が困難な場合など患者さんの状態や年齢などに応じて選択します。

吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬、数種類の長時間作用性気管支拡張薬でも症状が持続する場合には内服ステロイド薬を併用することもあります。このような重症の気管支喘息については、IgEやアレルギー反応に関与する炎症化学物質(インターロイキン)の作用を抑制する生物学的製剤の使用も可能になっています。

発作治療薬としては、速効性のある短時間作用性吸入交感神経刺激薬を使用するのが一般的ですが、短時間に続けて吸入すると手の震えや動悸(どうき)がみられることがあるので注意が必要です。発作の重篤なときや、指示された発作治療薬の使用でも症状が改善しない場合には医療機関を受診してください。

発作が起こらない状態を長期間続けるためには、喘息の原因である炎症を抑える治療を毎日続けることが重要です。治療によって症状が改善しても、自己判断ですぐに薬をやめたり減量したりすると気道の炎症が再び悪化し、また発作が起きてしまいます。自分の判断で薬をやめずに、医師の指示に従ってきちんと治療を継続することが大切です。

特殊な喘息―咳喘息

咳喘息は、喘鳴や呼吸困難を伴わない咳が8週間以上持続し、気管支拡張薬で症状の改善がみられるのが特徴です。咳は夜間~早朝に悪化することが多く、季節性のみられることもしばしばあります。痰はないか、あっても少量で喘鳴はみられず、呼吸機能検査もほぼ正常です。呼気NO濃度は上昇がみられます。診断がつけば吸入ステロイドによる治療を行いますが、症状が改善しても吸入ステロイドの中止で再増悪したり、将来的に気管支喘息を発症したりすることがあるので注意が必要です。

更新:2024.10.08

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