血液がんの治療―白血病・リンパ腫・多発性骨髄腫
札幌医科大学附属病院
血液内科
北海道札幌市中央区

血液がんとは
血液がんには大きく分けて、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫があります。いずれも白血球の一部に異常が起こり、がん化した細胞が無限に増殖してしまう病気です。骨髄という血液をつくっている場所で白血球ががん化したものが白血病、リンパ組織内でリンパ球ががん化したものがリンパ腫、骨髄の中で形質細胞という抗体産生細胞ががん化したものが多発性骨髄腫と呼ばれます。
症状
●白血病
骨髄の中で白血病細胞が増殖することで、きちんとした血液細胞(白血球、赤血球、血小板)がつくれなくなります。そのため感染症に対する抵抗性が低下して熱が下がらないといった症状が出たり、貧血症状(めまい、立ちくらみ、息切れ)や出血症状(あざ、鼻血、歯肉出血)がみられるようになります。

●リンパ腫
主に頸部(けいぶ)や腋わき、足のつけ根に腫(は)れたリンパ節を触れるようになります。通常痛みはなく、ゴムのような硬さがあります。発熱、体重減少、ひどい寝汗といった症状がみられることがありますが、自覚症状がない場合も多くみられます。
●多発性骨髄腫
骨髄中でがん化した形質細胞が増殖することで、前記の白血病のような症状のうち、特に貧血が多くみられます。また、骨髄腫細胞は骨を溶かす細胞を活性化するため、骨の痛み(腰痛や関節痛)、病的骨折(*)を起こすほか、脊髄への圧迫から麻痺(まひ)症状を引き起こす場合があります。そのため整形外科からの紹介も多い疾患です。
*病的骨折:何らかの病気により骨が脆くなっていると、通常では折れないようなわずかな力で骨折してしまうこと

検査
採血検査やCT検査といった一般的な検査のほか、次のような精密検査が必要になります。
- 骨髄穿刺(せんし)・生検:ボールペンの芯くらいの針を腸骨(腰の骨)に刺して、骨髄液を吸い取って検査します。また、同様の手技で骨髄組織を削り取る検査が生検です。検査時間は30分程度です。
- リンパ節生検:リンパ腫は大変多くの種類があるため、可能な限り病変を一部外科的に摘出して、免疫染色等の専門的な手法を用いた病理診断が求められます。種類によって治療法が大きく異なるためです。
- FDG-PET(ペット)検査:特にリンパ腫において有用です。FDGという放射性物質を付けたブドウ糖を注射し、がん細胞に取り込まれたFDGの分布を画像にします(図1)。がんの広がりを見ることができます。

当院の治療
1.化学療法
抗がん剤を用いて細胞の分裂を抑え、がん細胞を減らす治療法です。白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫のいずれにおいても化学療法が治療の中心になりますが、使用する薬剤は異なってきます。現在は抗体製剤や、分子標的治療薬と呼ばれる新たな治療薬も導入されており、治療成績の向上がみられています。
2.造血幹細胞移植
造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)はすべての血液細胞の元となる細胞ですが、造血幹細胞移植は骨髄中のこの細胞をすべて取り替える治療です。大量化学療法や放射線治療が可能になるほか、ドナー由来の免疫細胞により強い抗腫瘍効果が得られます。
3.新しい治療
新たな分子を標的とした分子標的治療薬や、二重特異性T細胞誘導抗体と呼ばれる新しい抗体製剤が開発され、実際の臨床に応用されています。さらに最近では、細胞療法の1つであるCAR-T療法も始まっています(TOPIX参照)。また遺伝子パネル検査の進歩により、個々の患者さんに合わせた治療法を選択することが実現化しつつあります。
白血病やリンパ腫に対して、患者さん自身の免疫担当細胞であるリンパ球を取り出して、がん細胞へ攻撃するような遺伝子操作を加えて戻すCAR-T治療がはじまっています(図2)。新しい免疫細胞療法に期待が高まっています。

本疾患の関連病院(紹介を受けてフォローアップ可能な病院)
【札幌市】札幌清田病院、東札幌病院、札幌共立五輪橋病院、JCHO札幌北辰病院【旭川市】旭川赤十字病院
【苫小牧市】王子総合病院
【室蘭市】製鉄記念室蘭病院
【函館市】函館赤十字病院
更新:2024.09.23