当院の皮膚科診療をご紹介します

山梨大学医学部附属病院

皮膚科

山梨県中央市下河東

皮膚疾患治療への取り組み

皮膚疾患は全身に出現し、かつ多彩です。疾患によっては全身状態に影響するものも多く、診療においては幅広い知識と技術が求められます。当科では今回ご紹介するような専門外来を多数設置し、きめ細やかなケアを心がけています。また当科は開局以来、臨床と研究の両方に精力的に取り組んできました。2013年、2022年には当科医局員が、国内の日本皮膚科学会で最も権威がある賞を受賞(2013年 川村龍吉、2022年 木下真直)し、日本ひいては世界の臨床研究をリードしています。臨床では、研究で得られた最先端の知見をもとに、東京の病院と同等以上はもちろんのこと、世界レベルの診療を患者さんに提供することをめざして、医局員一同、日々研鑽を積んでいます。

皮膚がんのトータルケア(腫瘍外来での取り組み)

当科では、皮膚悪性腫瘍(ひふあくせいしゅよう)(皮膚がん)の診断から治療にわたる、一貫した診療を行っています。皮膚悪性腫瘍に対しては、診断から始まり、全身/局所麻酔下の手術や抗がん剤治療、放射線治療、術後再発のフォローアップなどが必要ですが、皮膚科でこれらすべてを実施できる施設は、2022年8月現在、山梨県内では当科のみです。

診断:
皮膚悪性腫瘍では、診断が難しかったり、腫瘍の性質(組織型)によって予後が変わったりするものが多くあり、その後の治療を大きく左右します。そのため当科では、皮膚生検(局所麻酔下に皮膚を部分切除し、顕微鏡で診断する検査)の結果について病理部と合同でカンファレンス(検討会)を行い、確実に診断できるよう最大限努めています。
手術:
当科では、悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)と有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)におけるセンチネルリンパ節生検や、乳房外パジェット病におけるランダム皮膚生検など、これまで先進的な手術方法を複数提唱し、国内の皮膚悪性腫瘍の手術治療をリードしてきました。また、当院は大学病院であり多くの診療科が存在することから、症例によっては他診療科と協力して、大きな手術にも取り組んでいます。
抗がん剤:
皮膚悪性腫瘍には多くの種類がありますが、その中で悪性黒色腫(写真)は、最も予後が不良なものの1つです。近年、悪性黒色腫に対しては多くの新規薬剤が開発され、治療成績が格段に上がりました。新規薬剤は大きく2種類あり、1つ目は京都大学の本庶佑(ほんじょたすく)先生が開発した、ニボルマブをはじめとする免疫チェックポイント阻害薬であり、そのほかにも複数の薬剤があります。2つ目は腫瘍の遺伝子に合わせた分子標的薬であり、それぞれ最新の治療です。
写真
写真 悪性黒色腫の臨床像

当科は2022年8月現在、山梨県内で唯一、皮膚科として上記2種類の薬剤を使用可能であり、悪性黒色種以外のがん腫に対しても、複数の抗がん剤を使用してきた実績があります。また、このような新規薬剤では全身のさまざまな臓器に副作用が出現しうるのですが、当院の腫瘍センターを通じて他診療科と密に連携し、副作用の早期発見、迅速な治療に努めています。

アレルギー患者さん第一の診療(アレルギーセンターでの取り組み)

皮膚科アレルギー外来では、アトピー性皮膚炎やじんましん、金属アレルギー、食物アレルギー(主に成人)などの診療を行っています。

国民の2人に1人は何らかのアレルギー疾患を有するといわれる現在、アレルギーの診断、治療は年々大きく変化しています。例えば、中等症以上の難治性アトピー性皮膚炎では、2018年以降、抗IL-4受容体抗体、JAK阻害剤といわれる注射・内服による全身療法が次々と開発され、多くの患者さんの皮膚症状を劇的に改善し、生活の質を向上しています。また、「治験」と呼ばれる新規治療の開発にも積極的に参加し、皮膚科アレルギー疾患治療の向上に貢献しています。

一方、アレルギーの原因検索にも力を入れています。パッチテストでは、金属などによる「かぶれ」の原因検索を行います。また、じんましんやアナフィラキシーに対する原因検索には、プリックテストや皮内反応などの検査を行います。入院による負荷(チャレンジ)試験も積極的に行っています。

さらに私たちは、2022年8月現在、県内唯一の専門機関である山梨大学アレルギーセンターの主要診療科としての役割も担っており、さまざまなアレルギーをもつ患者さんを異なる診療科で横断的に診療できる体制を整えています。

重症の乾癬患者さんを助けたい(角化症外来での取り組み)

角化症外来(かくかしょうがいらい)では、乾癬(かんせん)を中心に、その類縁疾患である掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)や化膿性汗腺炎の患者さんの治療を行っています。乾癬の原因はまだ解明されていませんが、治療の進歩が目覚ましい病気です。十数年前では治療しても効果がなかった患者さんでも、生物学的製剤という新しい治療により、乾癬の症状をコントロールすることが可能となりました。

私たちの外来では、重症度と生活スタイルに合った治療を進めるうえで、従来の治療法(外用治療、紫外線治療、内服治療)に加え、この新しい治療である生物学的製剤を積極的に導入してきました。

掌蹠膿疱症もまだ解明されていないことが多いですが、最近の研究により、病巣感染、特に歯性感染(しせいかんせん)が発症の原因、悪化する要因として最も重要であると考えられています。当科では、歯科口腔外科の医師と共同られています。当科では、歯科口腔外科の医師と共同療連携に取り組んでいます。また、掌蹠膿疱症においても、重症の患者さんには生物学的製剤の治療を行っています。

皮膚を通じて膠原病を診療(リウマチ膠原病センター)

皮膚科でリウマチ膠原病(こうげんびょう)?と思われるかもしれませんが、膠原病ではしばしば皮膚症状が出現するため、膠原病の診断・治療を多く行っています。全身性エリテマトーデスや全身性強皮症、皮膚筋炎といった膠原病のほかに、血管炎やベーチェット病など、自己炎症性疾患も対象となります。診断や治療の難しい症例については、リウマチ膠原病センターで検討を行います。

リウマチ膠原病センターは、当院の膠原病内科、整形外科、皮膚科で構成されるセンターです。3科でセンターが構成されているのは、全国で当院だけで(2022年8月現在)、これにより幅広く精度の高い医療を提供することが可能となっています。皮膚症状があり、なかなか診断がつかない場合は、気楽にご相談ください。その皮膚症状は、膠原病などの症状かもしれません。

更新:2024.04.26