関節リウマチの診断と治療

山梨大学医学部附属病院

リウマチ膠原病内科

山梨県中央市下河東

関節リウマチとは?

関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こり、関節の腫(は)れや痛みが持続する病気です。進行すると骨や軟骨が破壊され、関節が変形し、関節の機能が損なわれてしまうことがあります。

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関節リウマチの有病率は0.5〜1%くらい、つまり100〜200人に1人とされています。男性よりも女性に多い病気で、だいたい8割が女性、2割が男性といった割合です。発症年齢は、若い人では10歳代から発症する方もいます。50歳代から60歳代が特に多いといわれていましたが、最近では、高齢になってから発症する方も増え、すべての年代の人がリウマチになる可能性があります(図1)。

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図1 関節リウマチ患者さんの年齢別分布
(出典:一般社団法人日本リウマチ学会編『関節リウマチ診療ガイドライン2020』、診断と治療社、2021年)

関節リウマチの症状

早期の関節リウマチの代表的な症状の1つに、「朝のこわばり」があります。朝起きたときに、手や足がこわばって動かしにくいというものです。通常は時間とともに動かしやすくなりますが、その後経過とともに、手の指の第二関節や指の付け根のところが痛くなったり、腫れたりすることがあります。

ただ、必ずしも手に痛みや腫れが起こるというわけではなく、人によっては肩や膝、足の指といったところから症状が発症する場合もあります。高齢者の関節リウマチでは、急激に発症することが多く、手足のむくみや、体が動かないということもあります。

関節リウマチはその炎症の程度にもよりますが、軟骨および骨が炎症により破壊され、関節変形をきたすことがあります。関節の「こわばり」→「腫れ・痛み」→「変形」が、症状の流れといえます。

また、関節以外の症状が一緒に起こることもあります。例えば、自分の免疫細胞が肺を攻撃する間質性肺炎(かんしつせいはいえん)や、自分の免疫細胞が血管を攻撃する血管炎もめずらしくありません。

関節のみだけではなく、その他の合併症も含めて、トータルで診てくれる医師の診療が望まれます。

関節リウマチの検査・診断

関節リウマチの診断は、症状、血液検査、画像検査を合わせて診断します。

まず血液検査ですが、自分の関節を攻撃している抗体を測ることができます。代表的なものにリウマチ因子(RF)があります。リウマチ因子は健康診断等でも気軽に図ることができます。ただし、健康な若者でも25人に1人、高齢者では4人に1人が陽性となってしまいます。つまり、関節リウマチではないのに、検査が陽性となってしまうということです。

ほかに、CCP抗体と呼ばれるものがあります。CCP抗体はリウマチ因子と比べて、より正確に関節リウマチを診断することができます。ただ、抗体検査がすべてではなく、関節リウマチ患者さんの2〜3割の方は、リウマチ因子もCCP抗体も陰性です。

別の血液検査には、炎症をみる検査があります。代表的なものにCRP、血沈(けっちん)、MMP-3の3つがあります。いずれも炎症を見つける検査になりますが、関節リウマチの程度が軽かったり、小さい関節だけの場合は、これらの炎症の検査が「正常」となる場合もあります。

関節リウマチの診断は、関節に炎症があるかないかが最も重要な要素となります。これを見つける検査が画像検査で、代表的なものがX線です。X線で骨の破壊が見られれば、すぐ関節リウマチと診断できる場合もあります。ただ、関節が壊れる前に関節リウマチを診断し、治療したいのが本音です(図2)。

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図2 手のX線画像。左:発症時、右:発症後20年

関節リウマチの炎症を、関節が壊れる前に見つける検査に、エコー(超音波)とMRIがあります。エコーは医療費も安く、手軽に検査できますので、ここではエコーについて説明します。

エコーと聞くと心臓や肝臓のエコーが思い浮かぶと思いますが、機器の発達に伴い、関節の炎症も検出できるようになりました。エコーの長所としては、診察でもわからないレベルの関節の炎症を検出し、早期診断ができるということです(図3)。また逆に、診察で腫れていると思われた関節が、実は関節リウマチではなくて、エコーで見ると加齢性変化による変形性関節症のみであり、誤診をまぬがれたという患者さんも大勢います。

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図3 関節エコーで見える、関節リウマチの炎症

私たちが行った研究では、診察のみのときよりも関節エコーを用いたときのほうが、診断の正確性が2割程度増すことを証明し、世界から注目されました。

関節リウマチの治療

最近は薬物治療が進歩しており、関節の炎症を抑え、痛みをとり、関節破壊の進行を食い止めることで、寛解(かんかい)と呼ばれる「リウマチの症状が消失し、病気をコントロールできている状態」をめざすことができるようになってきました。一部の患者さんでは、薬も必要なくなり、その後の再発のない方も大勢います。

関節リウマチの治療は世界でほぼ共通となっており、肺や腎臓や肝臓が悪くなければ、メトトレキサートが第一選択薬になります。それでも症状の改善が思わしくない場合は、生物学的製剤や他の抗リウマチ薬を使用します。どの薬剤も気軽に使用できるものではなく、リウマチ専門医のもとで、副作用や合併症などを管理しながらの使用が望ましいです。

関節リウマチの治療は、火事でいう消火活動に似ています。大火事の状態では消防車、ローソクの火はコップの水のように、その患者さんの関節リウマチの程度に合わせて治療選択を行っていくことが重要です。そして、何よりも大切なことは、関節リウマチを早期に発見し、関節が壊れる前に治療を開始するということです。

更新:2024.04.26