拠点病院として高水準なてんかん医療を提供

山梨大学医学部附属病院

てんかんセンター

山梨県中央市下河東

てんかんとは?

てんかんは、神経細胞の過剰な活動によって引き起こされる、てんかん発作を繰り返す疾患です。最も患者さんが多い神経疾患の1つで、国内でもおよそ100万人が罹患(りかん)していると推計されています。てんかん患者さんのおよそ7割は、内服治療で発作がなくなります。飲み薬が効きにくい3割の患者さんの中には、外科治療によって発作が消失したり減少したりする方もいます。慢性の疾患ですので、生活への影響(治療費の負担など)もあることから、治療負担軽減のためのさまざまな福祉制度があります。

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てんかんを知ろう

てんかんは、てんかん発作を「繰り返す」疾患です。てんかん発作には、全身をがくがく震わせる発作(強直間代発作(きょうちょくかんだいほっさ)以外にも、動きが止まる発作(欠神発作(けっしんほっさ))、一瞬ピクッとなる発作(ミオクロニー発作)、音が聞こえる・まぶしい・恐怖感が起こるなど、多彩な発作があります。

また、てんかんという疾患の中にも、治りやすいてんかんから、内服薬が効きにくいてんかんまで、さまざまな病気(てんかん症候群)が含まれています。てんかん(てんかん症候群)の診断は、発作の様子・脳波検査・頭部MRI検査などの結果を総合的に判断して行います。

てんかんは、国内でもおよそ100万人が罹患していると推計されている、ごく一般的な疾患です。たくさんの内服薬があり、発作の種類やてんかん症候群に合った薬で治療することで、およそ7割の方は発作が消失し、発作が長年なければ、薬を(主治医の先生と相談して)中止できる方も多くいます(全体の5割程度)。

一方で、薬が効きにくい薬剤抵抗性てんかんの方には、後述するような外科治療などを行うことで、症状が緩和されることもあります。また、内服治療は数年以上と長くなりますので、生活をサポートするさまざまな福祉制度を利用することができます。

治りにくいてんかんの治療

前述の通り、てんかんは、まず薬(抗てんかん薬)による治療が基本になります。約半数の方が1種類の薬で発作を抑えられますが、2〜3種類の薬を組み合わせても、3〜4割の方は発作を抑えることができません。これを「難治性てんかん」もしくは「薬剤抵抗性てんかん」といいます。

これらの中には手術によって発作がなくなる、もしくは抑えられるものがあります。てんかん発作の始まる部位(焦点)を切り取る「焦点切除術」や脳全体に発作が広がることを抑えるため、左右の脳の連絡を絶つ「脳梁離断術(のうりょうりだんじゅつ)」、頸(くび)を走る神経の1つである迷走神経を機械的に電気刺激する「迷走神経刺激療法」などがあります。

手術をするにあたり、術前にビデオを撮影しながら行う脳波検査(長時間ビデオ脳波検査)やMRI、PET検査などを行い、焦点をしっかり調べる必要があります。当院では、これらの検査に加え、手術中に(全身麻酔がかかった状態で)MRI撮影を行うことが可能で(術中MRI)、確実に焦点部分を切除し、かつ脳の損傷などを最小限に抑えるよう、安全性と確実性の向上に配慮しています(写真)。

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写真 術中MRI
手術中、全身麻酔状態でMRIを撮影し、病変が確実に切除されているか確認できます

てんかんと福祉制度

てんかんは慢性疾患であり、数年〜十数年にわたり病院に通院して医師の診療を受け、処方された内服薬による発作予防を行う必要があります。このため患者さんにとっては、金銭的・職業的な負担が大きいことが問題となります。患者さんの障害の程度が重い場合は、生活を支援する家族の負担も大きくなりがちです。

必要な通院や仕事・学業との両立を行えるようにさまざまな社会福祉制度がありますが、これらは種類も多くて複雑であり、患者さんや家族に分かりにくいことがあります(図)。例えば、通院による医療費や内服薬の費用を一部公費で負担する自立支援医療制度や、生活を支援するためのさまざまなサービス、公共施設の利用の負担を軽減する障害者手帳認定などが、これにあたります。詳しく知りたい方には、病院内の医療福祉支援センターにて、患者さんごとに相談員が丁寧に説明いたします。

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図 てんかん患者さんが活用できる主な制度

てんかんと診療連携

このように、てんかんは治療の専門性が多岐にわたる慢性疾患であり、小児科・神経内科・脳神経外科・精神科などの診療科が連携した、長期の診療が必要となります。当院てんかんセンターでは、小児期発症のてんかんの方が成人となった場合の移行期医療の提供や、精神症状を合併したてんかんの方の診療連携などにも、積極的に取り組んでいます。

更新:2024.04.26