食物アレルギーってどうしたら治るの?
愛知医科大学病院
小児科
愛知県長久手市岩作雁又
食物アレルギーの正しい診断法とは?
子どもの食物アレルギーの診断は、血液中にある食物に対するIgE抗体というものを調べることから始まります。しかし、IgE抗体が高い値でも、必ずしもその食物にアレルギーがあるとは限りません。ここが食物アレルギーの難しいところです。そのため当院では、高値を示した食物に対して「食物抗原負荷試験」を行っています。例えば、卵白IgE抗体がクラス3(アレルギーが起こる可能性あり)であった場合、ゆで卵を1gから15分間隔で食べていき、食べる(負荷する)ことで本当にアレルギー症状が出るのかをみる試験(検査)を病院内で行うのです。食物抗原(アレルゲン)を食べて出る症状は、子どもによりさまざまで、皮膚が赤くなる・じん麻疹(ましん)などの皮膚症状、咳(せき)・ゼーゼーするなどの呼吸器症状、嘔吐(おうと)・腹痛・下痢などの消化器症状が多くみられます。時には、顔色が悪くなって意識がボーっとするというショックを起こす危険がありますので、負荷試験は病院で行います。
食物抗原負荷試験は、安全に行われるのですか?
食物抗原負荷試験は日帰り入院で行います。実際に食べる食物抗原を持参していただき(写真1)、小児病棟に入院して医師が見守りながら食物抗原を少量から食べます(写真2)。卵負荷試験の場合は固ゆで卵、牛乳負荷試験では牛乳かヨーグルト、小麦負荷試験ではうどんを食物抗原として食べます。もちろん、そのほかの食物も負荷することが可能です。最初に食べる量は子どもによって異なりますが、卵白0.1gや牛乳0.1mlなど、自宅ではなかなか測れないような少ない量から始めることができます。その後は、様子をみながら15分間隔で倍増していき、症状が出た時点で試験は中止します。症状に合わせて薬を投与し、アレルギー症状が消えるまで病院で治療します。そして、症状が出た量を限界量(閾値(いきち)といいます)として、安全な量から毎日食物抗原を食べることによって食物アレルギーを克服する「経口(けいこう)免疫療法」につなげていきます。
小中学生には、食物を食べただけでは症状が出なくても食後に運動すると症状が出る、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という特殊な食物アレルギーがあります。この場合は、食事(写真3)をとった30分後に、トレッドミルという機械の上で運動します(写真4)。最初は、足元のベルトコンベヤーがゆっくり動くのに合わせて歩きますが、だんだんベルトコンベヤーのスピードが速くなるとともに、台に角度がつくようになります。最終段階では(写真5)、ジョギングよりも早いスピードで走るように負荷がかかります。この食物抗原+運動負荷という検査も行っています。
経口免疫療法とは?
以前の治療法は、食物抗原を除去して成長するのを待つという方法でした。しかし、最近の研究で、症状が出ない程度の少量を食べ続けたほうが食物アレルギーはよく治るということが分かりました。ここに、先ほどの食物抗原負荷試験を行う利点があるのです。つまり、負荷試験で食べられる量を知り、安全な量を定期的に食べ、数週間ごとに摂取量を増量することで、体を食物抗原に慣らしていくことができるのです。アレルギー外来への通院治療のなかで、食べる量は担当医が指導します。子どもによって増量のペースは異なりますが、半年~1年でアレルギー症状が出なくなることを治療目標としています。
なお、自宅で食べていく途中でアレルギー症状が出ることもあります。そのときには、あらかじめお渡しする抗ヒスタミン作用のある内服薬を飲んで様子をみていただきます。しかし、呼吸器症状やショックが起こったときは、当院の救急外来で対応しますので、すぐに来院してください。
花粉症の人も食物アレルギーに気をつけよう
花粉症が急増していますが、花粉症の人がある日突然、食物アレルギーになることがあります。古くは、スギ花粉症でトマトを食べると「口の中がピリピリする」ようになる「口腔(こうくう)アレルギー」でしたが、最近は「花粉食物アレルギー症候群」と呼んでいます。
これは、花粉と共通の抗原性を持つある種の果物や野菜、ナッツ類に花粉症の人が反応してしまうからです。特にハンノキ・シラカバ花粉症で大豆アレルギーになる人が増えています。
更新:2024.10.29