病気を抱えながら生活していくことが不安です

愛知医科大学病院

医療福祉相談部

愛知県長久手市岩作雁又

退院を前に、相談室ではどんな相談にのってくれますか?

医師から退院ができると言われたとしても、患者さんによっては介護が必要だったり、継続的な医療処置(点滴管理や床ずれの予防と手あて、酸素吸入、たんの吸引など)が必要だったりします。このようなケアを家族だけで行っていくのは大変です。その場合は、病院にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談してください。MSWは、社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を持ち、患者さん・家族と一緒に考え、整理し、さまざまな社会資源を活用しながらその人にあった療養生活のサポートを行います(図1)。

図
図1 MSWの支援のイメージ:解決したい課題に対して患者さん・家族とともに取り組みます

在宅療養の相談ももちろんですが、在宅療養を行う前に、入院でのリハビリテーションが必要であれば、リハビリテーションが可能な病院へ転院する選択肢もあります。また、在宅で療養を行うための環境を整えるためにもう少し時間が必要な場合、環境調整のために転院することや、家族だけでは医療処置が行えず、在宅での療養が難しい場合は、療養病院へ転院することも検討します。

現時点でどのような対応が考えられるかだけではなく、治療の継続により今後どのような療養生活が想定されるのか、先々の見通しも含めた選択肢を患者さん・家族へ提示し、選択した自己決定を支えていきます。

地域包括ケアシステムって、何ですか?

国の政策では、高齢者の場合、たとえ重度の介護が必要な状態になっても、住み慣れた自分の地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるようなシステムの構築を目指しています。それが地域包括ケアシステムです。全国一律のシステムではなく、地域ごとの特性に応じて独自のシステムを作るよう求められています。

高齢者のすまいを中心に、訪問診療や訪問看護、ホームヘルプサービスやデイサービスを利用して自分らしい暮らしが続けられるように、関係者がネットワークを形成してサポートしていきます。

「図2」のようなシステムを作るために、行政、医師会、地域包括支援センター、ケアマネジャー、病院などが定期的な会議を行い、患者さんの「基本在宅、ときどき入院」という暮らしが続けられることを目指し、関係者が協働して活動しています。

イラスト
図2 地域包括ケアシステムを構成する要素の関係性を表しています
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)、平成27年度 厚生労働省老人保健健康増進等事業、2016年

医療費の支払いが難しいのですが、どうしたらいいですか

医療費が高額となる場合は、加入している医療保険の保険者へ高額療養費制度の手続きを行うことで、医療費の支払いを抑えることができます(所得に応じて、一定の医療費を超えた金額が払い戻される制度、現物給付を受けられる方法もあります)。また、病気や治療の状態(難病、肝疾患など)によっては、公費負担医療制度を利用することで、自己負担分の一部助成が受けられる場合もあります。それらの制度を利用しても医療費や生活費などに困ってしまう状況であれば、生活保護制度の申請について検討します。

経済的な困りごとについては、第三者には相談しづらいかもしれません。しかし、医療費助成の制度などについては、申請を行った日以降しか助成が受けられないものも多くあり、早めの対応が必要となります。

患者さん・家族が安心して治療が受けられるよう、MSWは社会保障制度を活用して支援していきます。

MSWは療養生活をトータルサポートします

MSWは、コーディネーション(調整)、コラボレーション(協同)、ネゴシエーション(交渉)の力を発揮し、医師や看護師などの多職種や、医療機関、介護施設、行政機関など、さまざまな関係機関と連携・折衝しながら、患者さんが望む療養環境を整えるトータルサポートを行います。病気になっても、治療と日々の生活をうまく両立できるように患者さんの伴走者として支えていきます。

更新:2022.03.14